カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㊻屋台ユグドラシル、オープン-3-

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 「す、凄い行列・・・」

 異世界人であるローゼンタール公爵夫人が異世界の料理として広めようとしている事もあったからなのか、フライドポテトの屋台は客で列を成していたのだ。

 呆気に取られてしまった紗雪は引き攣った笑みを浮かべてしまう。

 「お姉さん、フライドポテトを頂戴」

 「ありがとうございます。代金は五ブロンズになります」

 接客と会計を担当している紗雪はすぐに営業スマイルを浮かべて客に対応する。

 「見た目はキツネ色で美味そうなんだけど・・・」

 王都の屋台で売っていたフライドポテトを食べた事がある客の一人が器に入っているフライドポテトを見て呟く。

 王都では有名でそれなりに売れているらしいが、固い部分があったりして美味しいとは思えなかったのだ。

 ロードクロイツで売っているフライドポテトは王都のものと違うのだろうか?

 客の一人が食事の前の祈りを捧げた後、買ったばかりのレイモンドが作ったフライドポテトを口に運ぶ。

 「・・・う、美味い!」

 外側はカリッと、中はホクホク。しかも絶妙な塩加減で癖になる味である。

 王都の屋台で売っていたフライドポテトとは比べ物にならないレベルで美味しかったものだから、人目も憚らず客は思わず声を上げてしまった。

 紗雪、両親に兄夫婦、シュルツベルク伯爵親子、次兄、ディートヘルム、クリストフ親子から自分の作った料理は好評だったとはいえ見ず知らずの他人に振る舞うのは初めてだったのだ。

 内心緊張していたレイモンドは客の言葉に喜んでいた。

 「お姉さん、俺にもフライドポテトだ!」

 「あたしも!」

 「はい。少々お待ち下さいね」

 今日は様子見という意味で百食だけ売る事にしていたフライドポテトは飛ぶように売れていく。

 「このフライドポテトって奴、ワインと合いそうだな」

 家に帰るまで待てないのか、買った客達がその場でフライドポテトを食べる。

 「ユグドラシルが屋台ではなくバルか食堂だったらいいのにな」

 「冷めてもフライドポテトを美味しく食べる事が出来る調理法を思い出してくれた紗雪のおかげだ」

 「私は意見を出しただけ。最終的に料理人の腕が物を言うのだから、これはレイモンドの手柄よ」

 前日になってフライドポテトに使うジャガイモを別の品種に変えるだけではなく、小麦粉と片栗粉を塗すという方法を受け入れてくれたからこそ初日は好調だったと言ってもいい。

 「不味い!」

 王都や他の領地で売っているものよりも美味しいフライドポテトを堪能していた客だけではなくレイモンドと紗雪の耳にある一言が入って来た。












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