カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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51.聖女からの宣戦布告-5-

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 「「うわっ!」」

 侍女の案内で国王の私室までやって来たエドワードとギルバードは、茉莉花の顔を目にするなり悲鳴を上げる。

 「見て分かるように、聖女は梅毒に罹っておる」

 「邪神・サマエルを倒したお主達であれば、万能薬の材料を集めるなど容易い事」

 「それってつまり・・・」

 国王と王妃は、自分達で人が足を踏み入れるのが難しい場所でしか生えない薬草の採取、竜やフェニックスを退治しろと言っているのだ。

 あぁ・・・

 「聖女様自身が魔法に秀でておるのだから、聖女様の治癒魔法で梅毒を治せばいいだけの話じゃ!」

 「そんな!!」

 確かに異世界に召喚された茉莉花は全属性の魔法が使えるようになった。だが、威力と精度は初心者以下なのだ。はっきり言うと彼女の魔法は使い物にならない。それが茉莉花の真実だった。

 邪神・サマエルを倒したのが、魔法が一切使えない紗雪一人だったという事を知られたら──・・・。

 (イケメンを集めたあたしだけのハーレムが作れないし、何より贅沢が出来ないわ!!!・・・って、そうよ!)

 国王の言葉に抗議の声を上げた茉莉花であったが、ある事を思い出す。

 「国王様!王妃様!あたしの従者だった篁さん!あの女だったら万能薬やエリクサーを作る為の材料を簡単に集める事が出来ます!!」

 プライベートならともかく、非公式であるとはいえ一国の国王と王妃を前に自分の事を【あたし】という一人称を使っている茉莉花に国王夫妻だけではなく、彼女に心底惚れているエドワードとギルバードも流石に顔を顰めたのだが、気になる一言が耳に入る。





 タカムラさんって誰?





 茉莉花の言葉に疑問を抱いた四人であったが、異世界人でありながら魔法が一切使えない長身で血に塗れていた女がそういう名前だったような、そういう名前じゃなかったような───とにかく、ウィスティリア王国から見れば穀潰しでしかない存在が聖女召喚に巻き込まれた事を思い出す。

 「そうです!邪神討伐の折では荷物持ちでしかなかったあの女が私達の為に命を落とす事が出来るのですから『こんな自分でも他人ひと様のお役に立てる』と涙を流して喜ぶでしょう!!!」

 邪神・サマエルの姿に怯えて粗相をしてしまった事を都合よく忘れているエドワードとギルバードが、梅毒から助かりたい思いで必死の形相で国王夫妻に進言する。

 「だが、その・・・タカムラさんという異世界人は聖女を虐めたとかでお主達が国外追放したのではなかったか?」

 「異世界人は戦いに縁のない世界で生きている。ましてや、タカムラさんとやらは魔法が一切使えないのだからきっと今頃どこかで野垂れ死にしているはず・・・」

 王妃の一言に紗雪を当てにしていた茉莉花達が落ち込む。

 「し、死にたくない・・・」

 社長令嬢として何でも思い通りにしてきた茉莉花であったが、梅毒の恐ろしさだけは知っていたのか、迫りくる死の恐怖に涙と鼻水を流して泣きじゃくる。

 「マリカ、大丈夫ですよ」

 「全てをあの女に任せたら私達は助かります」

 国王夫妻が心底呆れた眼差しを向けている中、そんな茉莉花をエドワードとギルバードが慰めるのだった。








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