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56.お子様ランチ-4-
しおりを挟むえっぐ・・・
えっぐ・・・
「兄ちゃん・・・」
父親のアーロンが死んでからは自分が母と妹を護る一家の長という立場が芽生えたからなのか、どんなに辛い事があってもルークは涙を見せなかったし、『父ちゃんが生きていたら・・・』という類の恨み言も口にしなかった。
「兄ちゃん!兄ちゃん!」
うわ~ん!
その兄が泣いていたものだからトレーシーもまたルークにつられて声を上げて泣いてしまう。
「トレーシー、俺が大人だったら・・・俺が金をいっぱい稼ぐ事が出来たら・・・」
二人は抱き合いながら、ただただ泣いていた。
「に、兄ちゃん・・・」
「トレーシー・・・」
泣き疲れたのか、いつの間にか二人は眠っていた───。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あの人が生きていたら・・・。子供達に惨めな思いをさせずに済んだのに・・・」
二人はカフェ・ユグドラシルでお子様ランチを食べる事を楽しみにしていたのに。
ルークはそのお金を用意してくれたのに。
バロニス村からロードクロイツに続く街道に宿屋はない。
荷馬車を使えば半日で着くので宿屋に泊まらなくてもいいでは?と思うかも知れないが、日の出と共にバロニス村を発ったとしてロードクロイツに着くのは夕方だ。
カフェ・ユグドラシルで【お子様ランチ】を食べてからロードクロイツを発つ事など出来ない。何故なら、門が閉まってしまうからだ。
仮に門が閉じる前にロードクロイツを発つ事が出来たとしても、バロニス村に着くのは真夜中である。
女と子供だけで夜道を行くのは危険以外の何物でもない。
それを避ける為にロードクロイツに建つ宿屋に泊まるという手もあるが、宿泊代として一人につき二シルバ払わなければいけない。
護衛として冒険者を雇うという方法もあるが、どっちにしても金銭的に余裕がない自分達には無理な話である。
家に少し蓄えがあるが、これは何かあった時の為に、また子供達の為に使うお金なので使う訳にはいかなかった。
(・・・・・・内職を増やせば何とかなるかも)
己の不甲斐なさに対する悔しさに、また我が子の寝顔を眺めて涙を流した次の日、アデルは村の家々を回って内職を貰った。
ロードクロイツへの旅費を稼ぐ為、アデルは夜遅くまで働いたのだ。
その甲斐があったのか、夏が終わる頃には生活費の他にロードクロイツの宿屋に泊まれるだけの金銭を手に入れる事が出来た。
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