カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
286 / 465

58.チーズトースト-2-

しおりを挟む










 「異世界と言えば、チート能力で山賊や盗賊やゴブリン等を倒して俺tueee!!!をしたり、襲われているところを助けた猫耳美少女とか女騎士とかお忍びで旅行をしているエルフのお姫様から『信也様~♡お慕いしております~♡♡♡』って言い寄って来る女の子達でハーレムを築くのがお約束だろうが!!!」

 それなのにコバルトグリーン家でやる事と言えば文字の読み書きに一般常識、基礎体力作り、剣術や魔法の理論と使い方といった基本的な事だけなのだ。

 異世界と言えばチート・冒険・ハーレムの三拍子が出来ないという事実もあるが、何と言っても目の前に居るシェリルは女にモテた。しかもそこら辺の男より足元にも及ばないレベルで強いだけではなく教養もあるのだから、年頃の令嬢にモテて当然と言えた。

 「それにしてもシンヤは何時まで経っても弱いな」

 (!!)

 シェリルにしてみれば事実を口にしただけである。だが、それが信也のプライドを傷つけたのだろう。我知らず、信也は禁句の一言を口にしてしまっていた。

 「メスゴリラ」

 「シ~ン~ヤ~?」

 (ひぃぃぃぃぃ!!!)

 信也にしてみれば誰にも聞き取れないような小声で言ったつもりである。

 だが、地獄耳なシェリルにはしっかりと聞こえてしまったのだろう。

 「誰が何ですって?」

 「な、何でもございません!全ては秘書がやった事でございます!!」

 へぇ~っ

 「秘書?シンヤって秘書を雇えるくらいの金持ちになったの?ならば今すぐ訓練場ここに連れて来てくれないかしら?」

 ぎゃあああああ!!!

 シェリルが身に纏っているのは、氷のような殺気と怒りのオーラ。

 端正な顔に浮かべているのは穏やかな笑み。

 そんなシェリルの覇気と、何とかという漫画の主人公が使うプロレス技と主人公の最強の敵である何とか将軍が使うあの技を信也はまともに食らってしまう。

 (うちのかみさん、本当に強いな~。あ~らら、ボロボロになったシンヤくんは血文字でダイイングメッセージを残しちゃっているし・・・)

 「シェリル、お疲れ」

 そんなシェリルを労わるように一人の青年が声を掛ける。

 「エドガー」

 男はシェリルの夫でエドガーといい、元は子爵家の四男で幼馴染みだったのだが真面目で謙虚、しかも親の目から見てもメスゴリラなシェリルに惚れているところを見込まれた現当主に『シェリルむすめの夫になって支えて欲しい』と望まれてコバルトグリーン家に入り婿したのだ。

 「エドガー、どうもシンヤは夢と現実の区別が付いていないようなのだ。お前の知恵で何とか現実を分からせる事が出来ないか?」

 俺tueeeだの、ハーレムだの、チートだのと言っている信也に頭を痛めているシェリルはエドガーに相談した。

 「・・・そうだな。ならば明日の朝一にコバルトグリーン家を発ってカフェ・ユグドラシルに行こうか?」

 「カフェ・ユグドラシルってサユキ殿がレイモンド殿と共に開いている店ではないか!それとシンヤがどう関係するんだ?」

 「だから──・・・」

 ひそひそ

 何かを企んでいる悪代官のような笑みを浮かべたエドガーがシェリルに耳打ちする。

 エドガーの企みを聞いたシェリルは、それはいい考えだと言わんばかりの実に清々しい笑みを浮かべた。

 「おい、シンヤ。明日は異世界人・・・私の友人でお前と同じ日本人が夫婦で経営しているカフェに行く。ゆっくりと休むがいい」

 (俺と同じ日本人が経営しているカフェ?という事は・・・)

 「美味い飯が食える!」

 うぉぉぉぉぉ!!!

 シェリルの一言で意識を取り戻した信也は自分が重傷を負っている事をすっかり忘れてしまい、雄叫びを上げながら自分の部屋へと戻るのだった。













しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

処理中です...