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67.牛タンと弟子-1-
しおりを挟む「先輩・・・。先輩程の冒険者であれば騎士の隊長か団長。或いはギルドの幹部になれたかも知れないのに・・・何で料理人になっちゃったのです?!」
彼の名はキース。
レイモンドを尊敬していた冒険者で、現在二十五歳。
故郷である南部地方では単なる村の少年Aでしかなかったキースも、今では立派なベテラン冒険者である。
そんな彼がロードクロイツの大通りを歩いて向かっているのは、カフェ・ユグドラシル。
美味い料理を食べたいと言うより、盛りの頃に冒険者を引退した理由をレイモンドに聞く為だ。
「いらっしゃいませ。窓際のテーブルに案内いたしますね」
ランチタイムのピークを過ぎていたので並ばずに済んだキースはメアリアによってすぐにテーブルに案内された。
「お客様、当店で出せる料理です。ご注文が決まりましたらお呼び下さい」
「は、はい・・・」
キースの目的はレイモンドに料理人になった理由を聞く為であって、食事をしに来たわけではない。
それなのに冊子を受け取ってしまったキースは気まずくなってしまったのが、かと言って何も注文せずに出て行くのもレイモンドに対して礼を失する事になる。
安くて軽いものでも注文すればいいかと思ったキースは冊子に目を通す。
「・・・・・・先輩の店の料理って見た事も聞いた事もない料理が多いけど」
(この店の料理って先輩が考えて作っているんだよな?あっ!あの二人は確かシェリル様とエドガー様!?)
「食べる事を避けていた牛タン・・・。適度に歯応えがありながらも柔らかくてジューシーだったとは・・・」
「牛タンとショウユベースのオニオンソース、ライス。これぞ黄金の組み合わせ!」
「ミソシルというスープ・・・これを飲むと不思議と心が落ち着いて安らぎを覚える」
別のテーブルで食事をしているシェリルとエドガーが、それも焼いた牛タンを食べている姿を目にしてしまったキースは驚いていた。
伯爵家の人間がロードクロイツまでカフェ・ユグドラシルの料理を食べに来るという事は、レイモンドの腕は確かなのだろう。
キースにとって牛タンは捨てるか安く手に入る部位であり、野菜と一緒に煮込んで食べる平民の料理。そして故郷の味だ。
(焼いた牛タンだけではなくホワイトシチューとピザもあるのか・・・。けど、ホワイトシチューとピザって何だ?)
その牛タンを貴族であるシェリルとエドガーが頬を緩ませながら口にしているという事は、焼いた牛タンは美味しいのだろうか。
興味を持ったキースはメアリアに、シェリルとエドガーと同じ料理が欲しいと伝えた。
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