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75.はちみつチーズトースト-5-
しおりを挟む「これは・・・」
美味い!
これだったら我でも食べる事が出来る!!
チーズトーストだけでも美味しいのに、そこに蜂蜜をかけるだけで蜂蜜の甘さとチーズの塩気が癖になるトーストになった事にシグルドはある種の感動を覚えていた。
砂糖や蜂蜜といった甘味、生クリームと果物を大量に使った手の込んだデザートではなく、素朴な味付けのデザートがシグルドの好みなのだ。
レイモンドが作ったチーズトーストは店に出しているだけあって素朴な味付けではなく手が込んでいるという事がシグルドでも分かる。
「この蜂蜜は・・・?」
すっきりとした甘さでありながらコクを感じる黄金色の蜂蜜は自分が知っている蜂蜜とは何かが違うと感じたシグルドは、どの蜂から採取したのかとレイモンドに尋ねる。
「お裾分けで頂いたゴールデンハニービーの蜂蜜です」
ぶっ!
高級食材の一つであるゴールデンハニービーの蜂蜜を使っているという事実にシグルドは思わず噴き出してしまう。
「ゴールデンハニービーを惜しげもなく使うとは・・・。レイモンド殿はこのトーストをメニューに加えるつもりなのか?」
「いえ」
このトーストはシグルドの為に作ったのであってメニューに加える気などない。
ゴールデンハニービー以外の蜂蜜を使わないと採算が取れないので、はちみつチーズトーストをメニューに加えるつもりはない事をレイモンドが伝えると、ショックを受けたと言わんばかりにシグルドが落ち込んでしまう。
「だが、レイモンド殿のおかげでスイーツの克服が出来たような気がする!!」
これで王都のスイーツも怖くない!と、はちみつチーズトーストを食べ切った後、意気込むシグルドであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
が!
(あ、甘い・・・。甘過ぎる!)
レイモンドが作ったスイーツは食べ切る事が出来たのに、王都のカフェで出しているスイーツは喉が焼け付くように甘かったものだからシグルドは吐き出してしまいたい衝動に駆られてしまったが、騎士だった頃の名残なのか、出された食事は残さずに食べているので心の中で涙を流しながら拳を握り締めて何とか嚥下する。
最後まで食べ切ったシグルドは決意した。
そうだ!ロードクロイツに引っ越ししよう
と。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「レイモンド殿が作る料理が美味という訳で我等はロードクロイツに越してきたのだ!」
「そんな理由で!?」
「料理が理由で引っ越す事にロザリア様とマリアベル嬢は賛同したのですか!?」
料理だけで王都からロードクロイツに引っ越しを決めたシグルドの行動力に驚いているレイモンドと紗雪に、自分達も夫の意見に同意を示したのだとロザリアが弾んだ声で言い切った。
「料理も理由の一つですけど・・・どうやらマリアベルがレオルナード君に好意を持っているみたいですの」
子供の恋を叶えたいと思うのは親として当然ではありませんこと?
((そ、そういうものなのだろうか・・・?))
「レイモンド様、サユキ様、私達セルリアンセージ家もロードクロイツの民となりました。よろしくお願いいたしますわね」
((・・・・・・・・・・・・))
単純な理由でセルリアンセージ一家が王都・カーディナルグロリオサからロードクロイツへと引っ越ししてきた理由に思わず呆気に取られるレイモンドと紗雪であった。
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