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閑話9.リュミエル-2-
しおりを挟む母親が愛妾であった故に第一王子でありながら王子でないリュミエルは庶子として扱われた。
だが、王妃フィリッパを含む身分の高い側室を母とする兄弟王子達よりも容貌が優れていた事と、母が居ないという不憫さも要因の一つだろう。
リュミエルは兄弟王子達とは比べ物にならないくらいにヒューバートの愛情を一身に受けて育った。
故にリュミエルは、この世の全ては自分の思い通りになるという傲慢な性格になってしまったのだが、それは置いておくとして───。
十六年後
成人を迎えたリュミエルはシルヴィアと結婚する事になった。
リュミエルとシルヴィアが婚礼衣装に身を包み大聖堂の司教の前で夫婦である事を宣言した後にあるのは披露宴だ。
ホワイトオーキッド公爵家の披露宴は、公爵家に相応しく豪華絢爛という言葉が相応しいものだった。
リュミエルは自分の隣に座る、先程の婚礼式とは異なり披露宴に相応しい華やかで色鮮やかなドレスに身を包んでいる花嫁の顔を盗み見る。
次期公爵として育てられたからなのか、シルヴィアは凛とした美しさと誇り高さを持っている。しかし、どこか近寄り難い女性でもあった。
だが、その凛とした雰囲気と誇り高さがリュミエルは気に入らない。
『そなたの母であるジュリエッタは誰かの庇護がなければ生きていけない儚げで頼りなげな美しい女性だった・・・』
『ジュリエッタは自分に仕える侍女を気遣い、思いやる事が出来る優しい女性だった・・・』
『それに比べて王妃のフィリッパときたら・・・あの女は己の才をひけらかして私に恥をかかせ、私の王としての面目と誇りを傷つける事しかせぬではないか!!!』
『フィリッパは女ではない!あれは女という皮を被った獣だ!!!』
『フィリッパがブラックオパール公爵家の令嬢でなければ余はフィリッパを王妃に据えなかった!!!』
リュミエルにとって女とは、亡き母ジュリエッタのように一人では生きていけない───それこそヒューバートの側室の一人にして初恋の人であるマリグリットのように儚い美しさと他人を思いやる優しくて謙虚な心を持つ女性の事を言うのだ。
(マリグリット様・・・貴女こそ私にとって唯一の女神・・・)
故にシルヴィアとは上手くやっていけないと見限ったリュミエルであるが、同時に公爵家に婿入りしなければ貴族として在籍できない事も確か。
シルヴィアとは仲の良い夫婦を演じるが、決して彼女との間に子供は作らない。
だってシルヴィアはリュミエルの好みのタイプじゃないから。
裏ではシルヴィアの目を盗んでマリグリットに瓜二つの女性を妾として別邸に住まわせ、己の跡を継ぐ公爵となる男児と王族に嫁がせる女児を産ませる。
そして自分と妾の間に産まれた子供達をシルヴィアに育てさせる。
自分が公爵になった暁にはシルヴィアが男と密通したという冤罪を被せた上で離縁したら、自分の子供達を産んだ妾とは別の若くて美しい妾を公爵夫人に据えるのだ。
表面上はホワイトオーキッド公爵家に婿入りする新郎を演じつつ、心の中ではマリグリットに瓜二つの女性を見つける算段を立てているうちに宴は終わりを告げる。
宴の後、リュミエルとシルヴィアは両家の親族、此度の婚礼で二人が夫婦である事を認めた司教に見守られながら初夜を迎えるのだ。
メイド達によって夜着に着替えさせられたリュミエルは執事長とメイド長に導かれながらシルヴィアが待つ寝室へと向かう。
寝台に腰を下ろして花婿を待っている花嫁の夜着姿は艶めかしいという言葉が相応しいものだった。
「シルヴィア殿・・・」
(・・・・・・)
閨房についてリュミエルは一応手解きを受けている。
が、リュミエルの心を占めるのはマリグリットだけだ。
(マリグリット、様・・・マリグリット!私は貴女を、貴女だけをお慕いしているのです・・・っ!)
自分の妻となる女性がマリグリットであれば、今日という日はリュミエルにとって一番の幸福な日であったというのに・・・不幸で辛い日でしかない。
マリグリット、マリグリットと、リュミエルはシルヴィアを抱きながら心の中では何度も自分が想いを寄せている女性の名前を叫んで妻の中で果てる───。
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