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乙女ゲームのヒロインに転生した(仮)
しおりを挟む「流石は乙女ゲームのヒロイン。見た目だけではなく、全属性の魔法が使えるなんてハイスペック以外の何者でもないわ・・・」
緩やかに波打つプラチナブロンド色の髪
茜色や赤色など、光の色によって色が変わる青みを帯びた灰色の瞳
どこかの大国の後宮に入れば100%の確率で皇帝の目に留まるであろう整った顔立ち
出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる均整の取れたプロポーション
雪のように白くきめ細かい肌
自画自賛する訳ではないが、鏡に映る自分を見ている少女は感心した声を上げる。
少女の名前はベルゼフォーネ。
現世はライトリーフ男爵家の長女であるが前世は水無月 蘇芳という、日本円に換算すると数十億を稼いでいた世界でも有名な超一流のマジシャン、そして童貞非処女で死んでしまった青年であった。
幼馴染みにして初恋の少女である安川 結衣の事
結衣で童貞を捨てる前に、幼い頃から自分達の面倒を見てくれていた近所に住む十も年上のイケメンである橋本 宏樹にバックバージンを奪われた事
その宏樹に告白され、プロポーズされた事
高校を卒業すると同時にマジシャンとなる為に海外で修業した事
自分がマジシャンとして大成した時には、結衣は既に会社の同僚と結婚して専業主婦になっていた事
親の跡を継いだ宏樹が独身であった原因は自分にあった事
そして───車に轢かれて死んだ事
(ヒロインではなく、モブの男に生まれ変わりたかった・・・)
三歳になったベルゼフォーネが蘇芳としての記憶を思い出した時、最初に思ったのはそれだった。
その自分がどうした事か、結衣が夢中になっていた乙女ゲーム『Forever~貴女に永遠の愛を~』のヒロインであるベルゼフォーネとして生まれ変わったと知った時は驚いたが、それと同時にある不安が過った。
(ま、まさか・・・宏樹さんもこの世界に転生しているって事はないだろうな?)
イケメンな宏樹さんの事だ。自分と同じようにこの世界に転生していたとしても攻略対象者の一人の可能性が高い。
という事は──・・・
前世とは異なり今の自分は女性。結婚するにしても何の問題もないので彼に捕まる可能性を考えてしまったベルゼフォーネの顔から血の気が引いてしまったが、同時に乗り越えられない障害がある事に気付く。
それは身分だ。
仮に宏樹が攻略対象者の一人として転生していたとしても王族か高位貴族の子息。一方、今のベルゼフォーネは男爵令嬢。
彼等と結婚するに相応しい家柄の養女にでもならない限り、宏樹の嫁になる可能性は0に近いと見ていいと思いたい。
(いや、前世では敏腕経営者でもあった宏樹さんの事だ。その宏樹さんが王太子や公爵子息として転生していたら、色んなとこに根回しした上で、俺を伯爵家や侯爵家の養女にして嫁入りさせるだろうな・・・・・・)
それよりも、今の自分にはやるべき事がある。
『Forever~貴女に永遠の愛を~』という乙女ゲームに似た世界に転生しているかどう分からない宏樹の事よりも、攻略対象者共及び隠しキャラとのフラグを折らねばならないのだ。
『Forever~貴女に永遠の愛を~』略して『永遠の愛』というゲームは、ヒロインであるベルゼフォーネが王都にあるリュミエール学園の貴族科に入学したところから始まる。
貴族科というのは、その名の通り貴族の子女しか入る事が出来ないクラスである。ベルゼフォーネは男爵令嬢なので貴族科に入るのは理論上可能なのだが、実際は伯爵家以下の子女は籍を置かないクラスでもある。
では、伯爵家より下位である子爵・男爵・騎士爵の子女はどのクラスに通っているのか?
庶民の子女が通う官吏科・騎士科・商業科・一般科のどれかである。それが世間の常識でもあった。
その常識を覆したのがベルゼフォーネ。
王族ですら使える魔法は多くて三~四属性であるというのに、貴族でも下位である男爵家の令嬢であるベルゼフォーネは息をするかのように全属性をいとも簡単に使いこなせるのだ。
優秀な人材は確保したいという思惑があったのだろう。その噂を聞きつけた宰相が授業料は免除。更に学園に通っている間の生活費用は国が面倒を見るという形でベルゼフォーネを貴族科に入れさせた事で、彼女は王太子であるハーディス、公爵子息であるクライスト、近衛騎士団長子息であるシュヴァリエ、侯爵子息であるケイオスと出会い、攻略対象者達の婚約者である悪役令嬢達による虐めに耐えつつ大恋愛を経て結婚するというのがゲームの流れだ。
全員と大恋愛を経た上で好感度MAX───俗に言う逆ハーエンドを達成すると、攻略対象者である四人よりもイケメンでハイスペックな隠しキャラである隣国の皇太子であるカイザーが登場する。
但し、選択を間違えてしまうと攻略対象者による監禁エンド、凌辱エンド、飼育エンド、だるまエンド、薬漬けエンド、精神崩壊エンド、人形エンド、殺害エンド、食人エンドへと進んでしまうので逆ハーエンドは非常に難易度が高いと言われているゲームでもあった。
(メンタルが絹ごし豆腐よりも柔い攻略対象者共とのハッピーエンドも嫌だが、バッドエンドはもっと嫌だ!!!)
つーかさ、婚約者がいる攻略対象者に言い寄るヒロインってビッチ以外の何者でもないよな?!
しかも、婚約者がいながらヒロインに言い寄る攻略対象者共も最低のクズ野郎じゃねぇか!!!
親!あんた等のせいで俺はリュミエール学園に入学する羽目になってしまったじゃねぇか!!!
先にも述べたが、前世の記憶を取り戻してからというもの、攻略対象者共に係わりたくないベルゼフォーネは、両親及びライトリーフ家に仕える執事やメイド達の前では決して魔法を使わなかったし、自分が全属性の魔法が使える事を内緒にする事でフラグを折る事に全力投球した。
それなのに───。
これがゲームの強制力って奴なのか?!と、考えてしまったベルゼフォーネであったが、真相はゲームとは大いに異なる。
両親曰く
ベルゼフォーネの器量と容姿だけではなく気品と仕種は一国の王女といっても通用するレベルだし、頭脳と運動神経は女騎士に匹敵するとの事だ。そんなベルゼフォーネの美貌と才能を田舎で埋もれさせるのが口惜しい両親は、娘を玉の輿に乗せるか高級官僚にするべく王都のリュミエール学園に入れる事にしたのだ。
男爵家の令嬢が一国の王女に匹敵するなんて親馬鹿だよな~と思ったのだが、考えてみればベルゼフォーネはヒロインなのだから顔面偏差値100の美少女であって当然。しかも前世は男性であったとはいえマジシャンという職業柄なのか、外国の王族や上流階級の人間達と接する機会が多かった蘇芳は彼等と接するに相応しい人間になるべく中身を磨いてきたし、数ヶ国語を流暢に操っていた。
全属性の魔法を操るというだけでもチートだというのに、中身が蘇芳という事もあるからなのか、現実のベルゼフォーネは頭脳だけではなく身体能力も高い。正にチートそのものと言ってもいいだろう。
だが、幾らベルゼフォーネがチートといっても悲しいかな。今の彼女は養われている身。親には逆らえないベルゼフォーネは仕方なく、本当に仕方なくリュミエール学園に通う事になるのだった。
だが、ベルゼフォーネは知らなかった。
ハーディスルートでは婚約者として立ちはだかり、ヒロインを陰湿に虐めるだけではなく、瀕死の重傷を負わせる悪役令嬢のヘカーテが、蘇芳の幼馴染みにして初恋の少女である結衣の生まれ変わりである事を。
前世の自分を、女を抱けないようにした宏樹が学園卒業後に配属される部署の上司であるベルゴフェールとして転生していた事を───。
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