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「うふふふ……」
学園にひとりの新入生が。
彼女こそ「薔薇の乙女と騎士の国」にて主人公になるロージーだ。
彼女は実は、転生者だ。
生前は病弱で、病院の看護士さんたちだけが知り合いという悲しい人生だったが。
親がせめての気晴らしにと買ってくれたゲームだけがお友達という、さらに悲しい人生でもあった。
そんな彼女が若くして、早くに亡くなったのは憐れもあろう。
神の慈悲か。
彼女は生まれ変わった。
今生は走ってもかんたんに息切れもしなければ、倒れもしない。
健康な身体で。
そして大好きだったゲームの世界に!
「これ、きっと「薔薇騎士」の世界よ……」
薔薇騎士。
薔薇の乙女と騎士の国の略である。
騎士の国はそのまま、この国の貴族の男子は基本的に騎士になることを前提に育てられる。
戦争があれば、領地を守るために先頭に立って指揮をするためだ。
馬に乗れない男子は、まずその時点で跡取りからも外されてしまうほど。
学園にて領地経営の他に、領地防衛などのことも学ぶのだ。
他に貴族だけでなく、平民も通えて騎士になることを重点的にした学校もある。
彼らはより厳しい訓練や実地を。
実のところ、学園出身より騎士学校出身者の方が、騎士としては位が高くなる。
例え平民であろうとも。
例え、家を継げぬ次男三男であろうとも。
騎士の国であるからだ。
戦場では強いものが――偉いから。
そちらにも実は、攻略対象がいたはずだ。けれども隠しルートや学園に通わない日、休日とかに出会いがあったはずで、難しかった。
そして、薔薇の乙女とは。
ロージーは淡い赤毛。見ようによっては桃色ともいえる髪に緑の瞳だ。
そして彼女の邪魔をする攻略対象たちの婚約者たちは。
艷やかな黒髪であったり、輝く金色であったり、鮮やかな赤毛であったり――すなわち、薔薇の花を、彼女らに当てはめているというわけだ。
そして男爵家に産まれたロージーは、珍しい桃色の髪を。
薄いピンクの可憐な薔薇をイメージされているわけで。
男爵家に産まれた彼女は、やがて学園に入学することになる。
そして王道の王太子はじめ、眼鏡枠の次期宰相という侯爵子息や、細マッチョ枠の騎士団長の息子。可愛い系の伯爵子息や、不思議系魔術師と……恋を。
今のところ、順調に。
そして学園に入学もできた。
まずは、初めてのイベントだ。
入学式に向かう途中で迷子になり、廊下の角を曲がるところで、王太子とぶつかり――出会いが。
王太子は一つ歳上で、在校生は入学式には新入生とは違うルートを通っていて。
だから、彼女は行きおいよく角を曲がって――何かにぶつかって弾き返された。
「びゃあっ!?」
何だか弾力ある柱にぶつかったような?
ロージーはひっくり返って混乱していた。
「あらっ、まぁ、大丈夫? 新入生さんかしら?」
そんな彼女を優しく助け起こしてくれたのは、艷やかな黒髪に淡い青色の瞳が美しい美少女。
「あ、ありがとうございます……」
ふと、それは「薔薇騎士」で王太子の婚約者で悪役令嬢枠の侯爵令嬢ミシェーラであるとロージーは気がついて。
黒薔薇を当てはめられていたはずの、一番の悪役令嬢――。
あれ、ここで王太子に抱きとめられて、それを彼女に「無礼者」と咎められるイベントだったはず?
ならば王太子は――
「見てくれミシェーラ! 我が体幹、突然の衝撃にも揺るぎなし!」
曲がり角でポージングしている美マッチョがいた。
王太子ラファエルは金髪碧眼の、まさに王道ヒーロー枠に。
しかしながら、作中では騎士の国の王様になるべく鍛えられてはいたが――ここまで筋肉質であったろうか?
抱きとめるのではなく、はね返す?
「もう殿下。まずは謝って差し上げてくださいまし」
「はっ、そうだな。すまないレディ。私の筋肉が壁のようであったあまりに! この大胸筋は如何であっただろうか!?」
何の感想だ!?
内心でツッコミしたロージーは悪くない。
侯爵令嬢もまったくもう、とため息を。
王太子は胸を強調するポージングに移行していた。
「もう……新入生さん、もしかしたら迷子かしら? 案内するわね?」
優しい。
「あ、はい。ありがとうございます」
侯爵令嬢ミシェーラは悪役の筆頭のはずなのにとロージーは内心で首を傾げる。
「よろしくてよ。困ったときはお互い様だし、後輩の貴方がたはわたくしたち先輩にいつでも頼ってくださいね?」
めっちゃ優しい。
「はっはっはっ。さすがミシェーラ。我が愛しの婚約者よ! ……おいてかないで?」
内心で本気で首を傾げた。
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