幸福の庭

はつしお衣善

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アイの手紙Ⅲ

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 今日、私の村では雨が降って、少し過ごしやすい気温になりました。私は雨って好きだけど、マリアちゃんはどうかな?
 雨の音って、ずーっと同じように聞こえてるようだけど、実はちょっとだけ変わったりするんだよ。雨粒の勢いや大きさが変わるだけで、音楽のように聞こえてくるの。雨だれの音に、屋根や地面で水がはじける音、木々にしたたる水、それらの音が重なり合って、私たちの耳に届いてる。
 雨は天がもたらす合奏のよう。特に、夏の雨は緩急があって私好みなんだ。
 マリアちゃん、いつもお手紙ありがとう。ありがとうと言えば、私の体調を気に病んでくれてありがとうね。もう元気になったよ。栄養満点の野菜を食べたからかな?
 さてさて、とうとうクジラの中に入ったんだね。私ったら手紙を読んでてひとりなのに思わず、すごいってつぶやいちゃった。
 世界地図に地球の模型かぁ。私の村とマリアちゃんの村は遠く離れてるけど、その地図だとどれくらいの距離なんだろうね。きっと、びっくりするくらい近いんだろうなぁ。人差し指くらいかなぁ。なんたって、世界規模の地図だもん。
 ところで、どうやってその地図と模型を作ったんだろうね。近くの一番高い山で見てみても全然わかんないし、球って感じもしないのにね。あ、魔術師さんたちは空飛ぶクジラがあるから、それに乗って地球を見ながら作ったのかな?
 それに一番びっくりしたのが巨大な光の玉。それがあれば夜中にお手紙書くのに便利そうだなぁ。マリアちゃんの文章の書き方がうまいから、集まる時や飛び散る時がきれいに想像できたよ。一回見てみたいな。それにしても、科学は見られなかったけど、魔術が見られてよかったね。地球の模型も手に入れたみたいだし、大収穫だね。
 一方、私のほうは乗馬に大苦戦中なのです。教わった通りにやってるつもりなんだけど、どうしてもうまくいかないんだよね。私がおっかなびっくりやってるのが、馬さんにも伝わってるのかな。動物とは言え、いやいや、同じ生きている生命同士だからこそ、お互い信頼し合わないといけないんだろうね。早くマリアちゃんたちに会うためにもがんばるよ。
 そうだ。つい最近、連絡係のおじさんから変な話を聞いたんだ。おじさんが隣村に行ったら、村には人っ子ひとりいなかったんだって。どこへ行ったのかな、不思議だよね。でも、いいことなんだから、素直に喜ばないと。ユユちゃんのことも含めてね。
 それじゃあ、またね。お手紙待ってます。


アイより
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