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隻眼の俺と世界を救った錬金術師の目覚め
しおりを挟む俺が強く右腕を振ると、三メートルほどある超長距離型ライフルの様な銃が地面に固定される。まるで大砲だが電磁投射砲というらしい。所謂レールガンだ。
「二人とも目と耳を塞いどけ、ビビると思うぜ」
真上ではなくやや斜めに構える。
「人はいないよな?」
『夜明けほど静かなものはありません』
砲身がジリリと唸る。
狙いをつけて引き金を引く。
対異世界兵器として搭載された特殊レールガンは、雷を周囲にばらまきながら地上目がけて弾丸を打ち出した。
天井に当たった弾丸はごごごごと鈍い音を立てて、自分の質量よりも大きく天井を削って進んでいく。
「明らかに普通の弾丸じゃねえよな……」
『対異世界兵器としての反物質をテストで打ち出してみました』
「——名前が物騒だから次からは、教えてくれる?」
『承知しました、マスター。つい出来心で』
まあ何はともあれ、地上への道は開けた。半径三メートルくらいの穴だが、駆け抜けるには丁度いい大きさだ。
「さ、遠野さん」
俺はアトラスを着たまま背中を向けてしゃがむ。
「べ、別に怖くないんだけどね、安全の面から見て——わちょっと、まって」
面倒だから無理やり背負う。
そしてシュラクを開いてる手で担ぐ。
「ま、まって心の準備がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「いやっほー!」
お互いに好きなセリフを叫ぶ。ああ、好きに叫べ好きに。
俺は全力で地面を蹴って地上へと向かう。右足左足右足左足。離れる前に次を踏み込めば理論上落下することもない。
「こわい、すごいこわいこわいこわい!」
「最高だー!」
朝焼けがぼんやりと見える。
折角だ全力で飛び出してやろう。
俺は出口で思いっきり踏み込み、空高く舞い上がった。
片方がやけに静かな事に気が付いたのは地上に着地してからの事だった。
宿屋に着くと俺は小一時間ほどシエロに叱られた。
正座してだぞ、正座して。
アトラスのままな!
「それで、その女の子は何処の子なの!」
部屋に到着してもシエロの機嫌は治っていなかった。
シエロの洋服からレウィンリィさんの、襟首がだらしないTシャツとホットパンツを履かされた遠野も、シエロの姿を見て少しばかり困っている。
「さっきも話した通り、遺跡に眠っていた子みたいでな、それで——」
「人を助けるのは良いことだよ? そうじろうの良いところはそういうとこだと思うの。でもね——心配する人もいるんだよ」
我慢していた涙を零して、シエロは声を震わせて俺に抱き着いてきた。
「散歩から帰ってこなくて、なにか、あったのかとおもって——」
「シエロ……」
「シエロは寝てない」
声のしたほうを見ると、目の下にクマを作っているクロエが俺をまっすぐに見ていた。
「悪い……次からは気を付けるから、な」
滑らかな白髪を優しくなでて、シエロを落ち着かせる。するとシエロはぐずっていたが、段々と静かに呼吸をして、寝てしまった。
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