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第一章 知らない世界
第四話「お持ち帰り」
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ケモノは、幽香の手にぶら下げられたまま、体を硬直させていた。
牙も爪もある。力もある。逃げ出そうと思えば、暴れて引き裂くことだってできたかもしれない。
だが――ケモノの本能が告げていた。
――勝てない。
花畑の主、風見幽香の瞳を見た瞬間から、全身を走る冷たい感覚。
それは狩る者が「狩られる側」を見抜いたときに覚える、逆らえない恐怖だった。
「ふふ、素直なのね。暴れもしないで」
幽香は楽しげに微笑み、猫の首根っこを摘むようにケモノを持ち上げたまま歩き出す。
ケモノの体はピンと伸びきって、抵抗することも忘れている。
向日葵畑を抜け、花の香りをまといながら進む道。
妖精たちはきゃあきゃあとはしゃぎながら「変な獣が捕まった!」と囃し立てていた。
だが幽香の足取りは軽やかで、どこか散歩にでも出ているようだった。
――そのころ。
博麗神社では、博麗霊夢が腕を組み、魔理沙が箒を抱えていた。
二人の耳にも「人型の獣が森に現れる」という噂は届いていた。
「人里に被害が出る前に、確かめておいた方がいいわね」
霊夢は溜息混じりに言う。
「面白そうじゃん! 獣の妖怪かもしれねえし、珍しいやつなら連れて帰って調べようぜ」
「勝手にペット扱いする気?」
二人は噂の森へ足を踏み入れた。
倒れた草むら、巨大な足跡、木の幹に残された爪痕。
確かに「何か」がいる証拠は残されていた。
「おー、すげぇな。普通の妖怪でも、ここまで獣じみた痕跡は残さねぇぜ」
「……でも、肝心の“何か”はいないわね」
霊夢は周囲を見渡し、眉をひそめた。
気配がするようで、しない。
まるで痕跡だけが、ぽつりと取り残されているかのようだった。
「隠れてるのか、それとも……もう、どこかに連れ去られたのか」
魔理沙が小声で呟く。
霊夢は手で口元を隠しながら、ふっと小さく笑った。
「……嫌な予感がするわね。あの花畑の主なら、興味を持たないはずがないもの」
二人は同時に顔を見合わせ、溜息をついた。
「こりゃ面倒なことになりそうだぜ」
「……とりあえず花畑を覗いてみましょうか」
だがその時すでに、ケモノは幽香の屋敷に連れ込まれ、花の香りに包まれながら、見知らぬ布団の上で丸くなっていた。
深い眠りの中でも、本能だけは告げていた。
――自分はいま、“強者の檻”に囚われている。
そして、助けてくれと、眠るふりをしながらも骨のお面の下で冷や汗が止まらずにいた
そして翌朝、霊夢と魔理沙が森で探し回っても、もうそこに獣の姿はなかった。
牙も爪もある。力もある。逃げ出そうと思えば、暴れて引き裂くことだってできたかもしれない。
だが――ケモノの本能が告げていた。
――勝てない。
花畑の主、風見幽香の瞳を見た瞬間から、全身を走る冷たい感覚。
それは狩る者が「狩られる側」を見抜いたときに覚える、逆らえない恐怖だった。
「ふふ、素直なのね。暴れもしないで」
幽香は楽しげに微笑み、猫の首根っこを摘むようにケモノを持ち上げたまま歩き出す。
ケモノの体はピンと伸びきって、抵抗することも忘れている。
向日葵畑を抜け、花の香りをまといながら進む道。
妖精たちはきゃあきゃあとはしゃぎながら「変な獣が捕まった!」と囃し立てていた。
だが幽香の足取りは軽やかで、どこか散歩にでも出ているようだった。
――そのころ。
博麗神社では、博麗霊夢が腕を組み、魔理沙が箒を抱えていた。
二人の耳にも「人型の獣が森に現れる」という噂は届いていた。
「人里に被害が出る前に、確かめておいた方がいいわね」
霊夢は溜息混じりに言う。
「面白そうじゃん! 獣の妖怪かもしれねえし、珍しいやつなら連れて帰って調べようぜ」
「勝手にペット扱いする気?」
二人は噂の森へ足を踏み入れた。
倒れた草むら、巨大な足跡、木の幹に残された爪痕。
確かに「何か」がいる証拠は残されていた。
「おー、すげぇな。普通の妖怪でも、ここまで獣じみた痕跡は残さねぇぜ」
「……でも、肝心の“何か”はいないわね」
霊夢は周囲を見渡し、眉をひそめた。
気配がするようで、しない。
まるで痕跡だけが、ぽつりと取り残されているかのようだった。
「隠れてるのか、それとも……もう、どこかに連れ去られたのか」
魔理沙が小声で呟く。
霊夢は手で口元を隠しながら、ふっと小さく笑った。
「……嫌な予感がするわね。あの花畑の主なら、興味を持たないはずがないもの」
二人は同時に顔を見合わせ、溜息をついた。
「こりゃ面倒なことになりそうだぜ」
「……とりあえず花畑を覗いてみましょうか」
だがその時すでに、ケモノは幽香の屋敷に連れ込まれ、花の香りに包まれながら、見知らぬ布団の上で丸くなっていた。
深い眠りの中でも、本能だけは告げていた。
――自分はいま、“強者の檻”に囚われている。
そして、助けてくれと、眠るふりをしながらも骨のお面の下で冷や汗が止まらずにいた
そして翌朝、霊夢と魔理沙が森で探し回っても、もうそこに獣の姿はなかった。
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