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第一話 依頼人は二枚舌
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【07:41/探偵事務所】
夜空「……朝、俺のシャツ着てねぇか?」
朱音「アンタのじゃない。私の。サイズが合うのがムカつくけどね」
夜空「それ俺のな。襟の内側に“E.Y.”って刺繍入ってる」
朱音「チッ……」
コーヒーの湯気の立つ事務所の片隅で、また今日も、静かに火種が投下された。
夜空「そもそも、お前俺の私物どれだけ持ってってんだよ。昨日のボールペンも――」
朱音「うるさい。私が借りてるだけ。文句あるなら鍵付きロッカーでも買えば?」
夜空「事務所でロッカー管理する探偵、聞いたことねぇわ」
そんな中、ドアがコンコンと律儀にノックされた。
朱音「はいはーい、ノックありがとうね~、命拾いしたね~」と、赤のジョーカーこと紅城 朱音がドアを開けると、そこにはスーツ姿の30代男が立っていた。
⸻
【08:15/相談スペース】
夜空「――つまり、奥さんが浮気してるんじゃないかと?」
依頼人「はい……ですが、妻は“絶対にそんなことしない”と一点張りでして。ですが、この間、スマホを見たら見知らぬ男の名前が……」
朱音「で、その画面のスクショを“うっかり”撮って保存しといたってワケね。意外と抜け目ないじゃない」
依頼人「えぇ、その……僕、人のこと疑うのが苦手でして……」
朱音があからさまに口元を歪めるのを、夜空は黙って見ていた。
その時、夜空がゆっくり口を開いた。
夜空「……じゃあ、ひとつ質問。奥さんのその浮気相手って、“実在する人物”だと思ってます?」
依頼人「……? ど、どういうことですか?」
朱音「あなたの奥さん、“虚構の名前”をスマホに入れて、あなたの反応を試しただけかもしれませんよ。たとえば、“疑った時点で浮気認定”するタイプだったら?」
依頼人「……っ!」
夜空「もちろん、これは“嘘かもしれない”。ただし……それを暴くのが俺たちの仕事ってだけです」
沈黙の中、男はごくりと唾を飲み込む。
依頼人「……調査、お願いします」
朱音が頷くと、夜空はサングラスを押し上げ、ソファに沈み込んだ。
夜空「赤、今日はお前が動け。俺は寝る」
朱音「は? ふざけんじゃないわよ黒、昨日も私が調査出たでしょ? 今回はアンタの番よ」
夜空「今日バイクの調子悪いんだよ」
朱音「足で行け」
夜空「……命令?」
朱音「お願い♡」
夜空「……最悪」
また、喧嘩未満の言い合いが始まる。
そして、事務所の新人が静かに気配を消して紅茶を淹れに回る。
何より怖いのは、今にも“蹴り”が飛んできそうな空気だからだ。
だが2人はそれでも一度受けたら必ず解決すると言う方針で依頼を受け持った
夜空「……朝、俺のシャツ着てねぇか?」
朱音「アンタのじゃない。私の。サイズが合うのがムカつくけどね」
夜空「それ俺のな。襟の内側に“E.Y.”って刺繍入ってる」
朱音「チッ……」
コーヒーの湯気の立つ事務所の片隅で、また今日も、静かに火種が投下された。
夜空「そもそも、お前俺の私物どれだけ持ってってんだよ。昨日のボールペンも――」
朱音「うるさい。私が借りてるだけ。文句あるなら鍵付きロッカーでも買えば?」
夜空「事務所でロッカー管理する探偵、聞いたことねぇわ」
そんな中、ドアがコンコンと律儀にノックされた。
朱音「はいはーい、ノックありがとうね~、命拾いしたね~」と、赤のジョーカーこと紅城 朱音がドアを開けると、そこにはスーツ姿の30代男が立っていた。
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夜空「――つまり、奥さんが浮気してるんじゃないかと?」
依頼人「はい……ですが、妻は“絶対にそんなことしない”と一点張りでして。ですが、この間、スマホを見たら見知らぬ男の名前が……」
朱音「で、その画面のスクショを“うっかり”撮って保存しといたってワケね。意外と抜け目ないじゃない」
依頼人「えぇ、その……僕、人のこと疑うのが苦手でして……」
朱音があからさまに口元を歪めるのを、夜空は黙って見ていた。
その時、夜空がゆっくり口を開いた。
夜空「……じゃあ、ひとつ質問。奥さんのその浮気相手って、“実在する人物”だと思ってます?」
依頼人「……? ど、どういうことですか?」
朱音「あなたの奥さん、“虚構の名前”をスマホに入れて、あなたの反応を試しただけかもしれませんよ。たとえば、“疑った時点で浮気認定”するタイプだったら?」
依頼人「……っ!」
夜空「もちろん、これは“嘘かもしれない”。ただし……それを暴くのが俺たちの仕事ってだけです」
沈黙の中、男はごくりと唾を飲み込む。
依頼人「……調査、お願いします」
朱音が頷くと、夜空はサングラスを押し上げ、ソファに沈み込んだ。
夜空「赤、今日はお前が動け。俺は寝る」
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朱音「足で行け」
夜空「……命令?」
朱音「お願い♡」
夜空「……最悪」
また、喧嘩未満の言い合いが始まる。
そして、事務所の新人が静かに気配を消して紅茶を淹れに回る。
何より怖いのは、今にも“蹴り”が飛んできそうな空気だからだ。
だが2人はそれでも一度受けたら必ず解決すると言う方針で依頼を受け持った
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