私のマジカルノベル

@kitunetuki12

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第二十魔法;いつかの記憶 チャミス編

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 ケーキ屋で働いて二日目。午後は忙しいくせに、午前はとてつもなく暇だ。​

「ふわぁ~…。」​

朝早く起きたせいで、眠たい。厨房から金瀬店長がこちらを監視してくる。…居眠りなんかしませんよ~。そんな思いを込めてウインクする。金瀬さんは、私のウインクに「しっかり見てるからね…」という思いを返してくれた。そんなことをやっていたら、店のドアが開く音がした。常連さんだろうか?​

「いらっしゃいませ!」​

そう言いながら、入ってきた客を見る。まず、一つ分かったことは常連さんじゃないこと。二つ目は、同年代の子っぽいこと。三つめは、二人組の外国人だってこと。金髪に赤髪…記憶が無いせいで珍しいのか分からないが、今まで見てきた中では黒髪の人しかいなかったし、多分外国の人だろう。​

「どのケーキに…。」​

「チャミス!」​

金髪の人が言葉を遮る。ハ?チャミスって何よ?何かのケーキの名前?​

「あ、すみません…えぇーっと、友人にニテイテ。」​

赤髪の人はそう言うが、漫画でしか見たことない程の棒読みだった。まぁ、なんでもいいけどねぇ。​

「そうですか…で、ケーキはどれに?」​

同年代に見えるため、ため口っぽくなってしまう。​

「私のこと、覚えてないの?」​

金髪の人が質問する。いや、初めて会ったんだが。​

「すみません。覚えておりません。」​

やっと敬語で話せられるようになってきた。​

「ホントに?」​

「ええ。ホントに。」​

また、ため口っぽくなってしまった。そのため口交じりの返事を聞くと、金髪の少女の目が潤む。​

「チャ、チャミス…ホントに記憶がぁ~…。」​

そう言って、わんわん泣き出した。…は?何故泣く?戸惑っていると、金瀬店長が来た。それはもう、ロケット並みの速さで。​

「どうしたの?!」​

驚いていた表情が、より一層驚く。​

「その…制服…。」​

制服?金瀬店長に向けていた視線を二人組に向ける。​

「あっ。」​

首元に巻いたスカーフ。ワンピースにベルトを巻いたような仕様。​

「同じ…。」​

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​

今、緊急で店を閉じてます。脳内でナレーターがそう言う。​

「リスの…事情を教えてくれる?」​

金瀬さんが、二人組に話しかける。金髪の少女は、まだ吃逆を上げている。赤髪の少年は戸惑いながら、口を開く。​

「まず、リスではなくチャミスという名前です。あと……。」​

黙り込んでしまった。どうしたんだろう?​

「あとは、チャミスと二人で話したいんです。」​

はぁ?なんで初めて会ったばかりのヤツと…。​

「分かったわ。リス…いや、チャミス、部屋に案内しなさい。」​

えぇ~!なんで初めて会ったばかりの…。そこまで考えたとき、金瀬さんの笑顔が私をにらむ。良いから案内しなさい、そんな心の声が聞こえてくる。​

「はいっ…。」​

そう言い、席を立つ。赤髪の少年も、席を立った。​

「リズミール、落ち着いたらこっちに来て。」​

そう言って、後からついてきた。どうやら、金髪の少女の名はリズミールというらしい。いや、リミーズル?リルミーズ?…なんでもいいや。金髪の少女の名に苦戦しながら自分の部屋…小屋へ向かう。​

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​

「ここ、座って。」​

そう言って、地面に敷いているカーペットへうながす。私は勉強机の方から椅子を寄せる。地べたと椅子…些細なことだ。​

「チャミス…ホントに何も覚えてないのか?」​

赤髪の少年が疑わしそうに聞いてくる。​

「チャミス…私、チャミスだったんだ。」​

質問の答えになっているとは思わなかったが、こう答えた。すると、全てを察したかのように赤毛の少年はうつむいた。​

「分かった…信じてくれるかは分かんないけど全て説明する。」​

そのまま赤毛の少年(カルトというらしい)は、私がどういう経緯で記憶を無くしたのかを話した。…正直言って、信じることは出来ない。​

「信じて…くれないよね。」​

ええ。そうですとも。​

「そっか…。」​

…私、考えてること分かりやすいのかなぁ…?そんなことを考えながら、天井を見つめていると、赤毛の…いや、カルトさんの目が潤んだ。​

「カルトさん?」​

「チャミスは…もう、呼び捨てもしてくれないんだね。」​

…そんなこと言われても、覚えてないんだもん。そんなこと言われてもさ……。​

「そんなこと覚えてないし…。それに、魔法なんていう非科学的なことを突然言われても、信じられないよ!」​

少し声が大きくなってしまった。これじゃ、怒鳴っているみたいだ。​

「魔法…チャミスも使ってたんだよ?」​

「知らない知らない!魔法なんてもの、あるわけない!」​

そう言うと、カルトさんも負けずに言い返してくる。​

「ある!魔法が無い、っていうのはこっちの世界での常識だろ!」​

ムカ!なんで高校生にもなって魔法なんて信じてるのよ!​

「あんた、大丈夫なの?…魔法は存在なんてしない。こっちあっちの世界なんてない。世界は一つしかないんだよ?」​

正論をかます。これで、この議論にも決着がついただろう。​

「魔法が存在しない証拠はあるのか?」​

ええ。あるとも。自信たっぷりに答える。​

「あなたも私も…ここにいる皆が魔法を使えないことよ。」​

決まった!カルトさんに初めて会ったばかりだが、この人との議論に勝つのは少し良い気分だ。​

「いつ、俺が魔法を使えないって言った?」​

は?もう勝負はついているのに…まったく、諦めの悪い奴だ。​

「もう、潔く負けを認めたら?」​

「俺がいつ魔法を使えないと言った?」​

はぁ…。会話が成り立たない。この人、クリナミロン高校っていう私が通っていた高校でも浮いてるんだろうな。​

「俺は、魔法を使える。」​

「あ、そう。…諦めるなら今のうちだよ。」​

もう興味も失せてきた私は、店に戻ろうとドアノブに手をかける。パチッ!背中で何かがはじける音がした。慌てて振り向く。その動作と同時に、髪が乱れた。​

「今、チャミスのゴムを引きちぎったよ。…もちろん、魔法でね。」​

……はぁ、呆れた。どうせ、何か仕掛けでもしてたんだろう。は!てか、私が一〇分かけている三つ編みがぁ!ゆ、許さぬぞ貴様!​

「ちょっと!そんな子供だましに私の三つ編みを使わないでよ!」​

「はぁ?」​

心底驚いた表情のカルトさん。…仕掛けがバレないように、演技まで極めていたか!こ、コノヤロー!​

「驚いた演技はしなくていいわ!もう、ほっといてよ!」​

「ちょ、待て!」​

待つわけねぇだろっ!てめぇ、むしろ待ってもらえると思ってたのか!?​

「チャミス!」​

「何よ!」​

あっ、チャミスっていう名前に反応しちゃった。しかも、無意識に。​

「魔法もう一回使うから、ちゃんと見といてね。」​

へいへい……分かりましたよ。今度は種を見破ってやる。​

「オプード・アザン。」​

カルトさんがそう唱えた瞬間、ドアノブを握っていたドアが開く。少し年季の入ったドアのため、音が軋む。​

「チャミス…。話すきっかけになったこの魔法、覚えてないの?」​

おぷーど・あざん……どこかで聞いたことが…あぁ!この時私は、水に触れて言葉を思い出す偉人の気持ちが分かった気がする。​

「メモ帳…。」​

そう呟いて机の中からメモ帳を取り出す。一ページ目を開くと、予想通りの言葉が殴り書きしてあった。​

_________________________________​
おぷーど・あざん​
_________________________________​

「おぷーど・あざん…。」​

「覚えてる?」​

おぷーど・あざん…オプード・アザン…。​

「覚えてるの!?」​

「嘘だ…。」​

「え?」​

嘘だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ!そんなはずない!魔法なんてこの世に存在するわけがない!私まで頭がおかしくなったの?​

「おいチャミス、どうした?!」​

こいつのせいで!こいつのせいで頭がおかしくなったのか!?​

「もう来ないで!」​

「なんでだよ!」​

「魔法使いとは関わりたくない!」​

…魔法を自分でも信じたのか分からない。でも、確かに扉は開いた。しかも、メモ帳には”おぷーど・あざん”と殴り書きしてあった。​

「魔法使いと関わりたくない……?」​

カルトさんの雰囲気が変わる…ヤバい気がする。​

「チャミスはもう俺たちと関わりたくない…?」​

一人でブツブツ何か言っている。どこか懐かしい気がするのは気のせいだろうか?
…よくわかんない。​

「これからも図書館にみんなで行けると思ってた…。ヤバい魔法で先生に説教される思い出もできるかもしれなかった…。巻き添え、もっと喰らうかもしれなかった…。転部でもっと忙しくなるはずだった…。」​

どれもこれも身に覚えがない事ばかり。もう意味が分かんない!​

「チャミス、人間界か魔法界、どっちに居たい?」​

ブツブツモードから突然質問される。​

「知らないよ…。でも、私は人間界に住んでるから……。」​

「人間界が良いのか…。」​

そう言って、悲しそうに笑った。諦めがついたのかな?​

「ローメリー・モジング。」​

ローメリー・モジング?ろーめりー・もじんぐ?どんな魔法なんだろう…。いや、魔法なんて信じてないし。何にも起こらないはず…。​

「あれ…。」​

意識が遠のいていく。赤髪の少年…カルトさんは青ざめた顔をしている。なんでだろうか…でも、そんなことを考える暇はもう無さそう。意識が…。​

「あ…ぁあ!あぁ…。」​

誰かの恐怖が混じった声だけが最後に聞こえた。​
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