私のマジカルノベル

@kitunetuki12

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最終魔法;私のマジカルノベル ​下

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 光の中を抜けていくと、急に地面がなくなった。勢いよく尻もちをつく。​

「痛ぅ…。」​

なんで出口が浮いてんのよ!っと、恒例の一ツッコみを入れる。​

「痛ぅ…さて、金瀬さんのとこに行くか!」​

気を取り直して立ち上がる。一歩を踏み出すと、葉っぱのクシャッ、っといういい音がした。​

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​

ミール工房へはすんなり行けた。どうやら、私の優秀な脳が道を覚えていたようだ。(自画自賛し過ぎだって?些細な事さ)​

「ハァ…、ハァ…。」​

速足、超速足、走る、という方法でここまで来たせいか、息が切れている。でも、金瀬さんに会いに行くと決めた足が止まることは無かった。​

「金瀬さん…いますか?」​

ドアを少しづつ開けて言う。…応答なし。いないのかな?店の奥へゆっくりと進む。​

「失礼しまぁーっす…。」​

とても小さい声で言ったので、聞こえているかは分からないが、一応声はかけた!入ってもいいよね…?​

「わぁ…。」​

数時間前にもここに居たはずなのに、数年ぶりのように感じる。月と星がデザインに組み込まれたモビールに、キャラメル色の木材…あ、あと白いペンダントライトもあったなぁ…。​

「リス…?帰って来たの?」​

奥の方から声がする。数時間前にも聞いた声。でも、どこか懐かしい。​

「金瀬店長…。」​

「リス!帰って来たのね!」​

帰ってきた訳ではないが、今は再会を喜び合う方が先だ!​

「会いに来ました!」​

「良かった…。」​

そう言って、ヘナヘナと床に座り込んだ。​

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​

「はい、余りもののケーキだけど。」​

「ありがとうございます!」​

少し気持ちも落ち着いたところで、一気に質問タイムが始まった。​

「ねぇ、結局あの二人組は何だったの?」​

「魔法とかって信じないわよねぇ?」​

「大丈夫だった?」​

「あの二人は今どこに?」​

…質問フィーバー、という曲を頭の中で再生する。質問攻めた~物事は~お好きじゃないでしょ~♪確か、昔こんな曲があった気がする。​

「金瀬店長、落ち着いて!」​

「え?…あぁ、ごめんね。」​

質問フィーバーという曲のレコードをようやく抜くことが出来た。​

「あの、金瀬店長…私はもう人間界にはあまり来れなくなります。」​

「…ニンゲンカイ?」​

急に真面目な顔になった私に、金瀬店長はのけぞる。​

「私は、あの変な二人組の言うとおり、魔法使いだったんです。」​

「あんた、洗脳されたの?」​

ごもっともな意見です…。確かに、突然いなくなって、帰ってきた途端にこんなことを言い出したら、流石に誰でも怪しむよね…。​

「金瀬店長、洗脳なんてされてません!」​

「ホントにぃ…?」​

裁判での尋問って、こんな感じなんだろうか?圧を感じる…。​

「とにかく、私は魔法界で暮らします。今まで、ありがとうございました。」​

「そう、なの…。」​

青菜に塩、だったかな?そんなことわざ通りに、元気がなくなっていく。​

「でも、たまには人間界に遊びに来てもいいですか?」​

「…。」​

元気どころか、返事もしなくなった。仕方ない、出直すか…。重い足取りで扉の方へ向かう。日差しが黄色いガラスを通して、乱れた髪を照らす。​

「また来ます。」​

そう言い残して店を出ようとした。でも、思うように足が動かない。足に重りを付けられたようだ。​

「金瀬店長…。」​

呼び掛けたつもりだけど、呟き程度の声の大きさとなってしまった。​

「…。」​

気まずい。今すぐ、この静寂から逃れたい。でも、足が動かなかった。​

「リス…いえ、チャミス。」​

足を動かすための解決策を考えていたら、突然名を呼ばれた。​

「今度の日曜日に…。」​

今度の日曜日に?​

「ヒツジやキツネとかとお茶会するから…ぜひ来て。」​

「はい!喜んでいきます!」​

金瀬さんが微笑む。静かな微笑みだったが、いつか見た綺麗な微笑みに似ていた。​

「では…また来ます。」​

今度はすんなりと足を店の外へ運ぶことが出来た。​

「さて、魔法界に帰りますか。」​

後々金瀬さんのケーキを食べ忘れたことに後悔するとは、思ってもいなかった。​

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​

「あっ!チャミス、ちゃんと帰ってきた。」​

「ちゃんと帰ってきたよ。」​

何気ない会話。​

「何話してたんだ?」​

「ん-っと…色々!」​

「…答えになってないや。」​

仕方ないでしょ、ホントに色々話してたんだから。​

「チャミス、ちょっといいか?」​

アン先輩に手招きされる。…悪い予感がする。重い足をちょっとずつアン先輩の方へ近づける。​

「お前のことを一通り校長に説明したら、まだ謎の部分が多くてな…。」​

悪ーい予感が的中する可能性大!直ちに逃げよ!でも足が重い!​

「この学校に入学してからのことを書け。」​

とても無邪気な笑顔で笑う先輩。…的中した。まさか、こんな面倒くさいことをお願いされるなんて…。​

「もちろん、論文っぽくな。」​

へいへい…。​

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​

皆と再会してから、数週間経った。変わったことと言えば、学部。まさか、あんなに早く学校側から許可が出るなんてね…。後、髪も切った。学校内には私が黒髪だってこと、もう知ってる人が多いから、好きな髪形にしようと思ったのもある。でも、一番の理由は、この髪色が好きになれたから、かな?​

「違う!これじゃ随筆だ!」​

転部先の古魔研では、アン先輩に怒鳴られている。​

「だってぇ~、論文なんて難しいですよ!」​

カルト情報によると、古魔研の教室を通るとき、いつもこの会話が聞こえるらしい。​

「ふむ…じゃぁ、物語文風に書いてみろ。」​

「え?」​

「下手な論文よりも、物語の方がましかもしれん。それに、時間はまだ沢山あるしな。」​

おぉ…アン先輩が珍しく、ハードルを落としてくれた。​

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​

「そう…まぁ、頑張れ!」​

「あんな生き生きした姉さん、初めて見たかもしれん。」​

今は三人でカフェに来ている。各自の授業や楽しかったことを話し合っている。あとは、世間話とか?​

「金瀬さんのケーキ食ってから市販のケーキまずく感じるんだけど。」​

そう言いながらカフェのケーキを口いっぱいに頬張るカルト。​

「あぁ、確かに!日曜日のお茶会楽しかったね!」​

それから美味しかったお菓子について力説しだすリズミール。そういや、三人で行ったんだっけ。​

「帰り道、食べ過ぎでお腹痛くなったけどね…。」​

「まぁ、私の修復魔法の応用で直せたけどね…あっ。」​

リズミールがそう言ってから、少し申し訳ない顔をした。多分、魔法が完全に使えなくなった私に気を使っているのだろう。魔法の話はあまりしなくなった。​

「チャミス、結局魔法は使えないままなのか?」​

気を使うという行為を一切しないカルトが発言する。まぁ、沈黙よりはいいけどね。​

「まぁね~。簡単な魔法も使えなくなっちゃった。」​

「オプード・アザン、とか?」​

そんなに人の黒歴史をいじくるのが好きなのかい?憎しみを込めて微笑む。​

「…それより、題名一緒に考えてくれない?」​

「何の?」​

「アン先輩に書かされたこの物語の。」​

数分間、皆の思考タイムが始まる。​

「チャミスの物語、ってのは?」​

「却下。」​

カルトが鋭い目で睨んでくる。でも、そんなのは気にしないのさ!​

「チャミスって、個人名出しちゃってるじゃん!」​

「別にいいだろ!」​

「良くないわよ!」​

ケンカになりそうなとき、鶴の一声がカフェ内に響く。​

「私のストーリーってのはどう?」​

「おぉ…いや…でも…。」​

もうちょっと変化球がいいなぁ…。​

「リズミール、もうちょっと変化球がいいらしい。」​

なっ!表情が読まれた!​

「ん~っと、じゃぁ、私のマジカルストーリーは?」​

おぉ!それだ!それにしよう!​

「いいじゃな。」​

「いや、私のマジカルアドベンチャーはどうだ?」​

コイツは人の話を遮らない、ということを小学校で習わなかったのだろうか?​

「却下!」​

「なんでだよ!」​

タイトル決めの主権を握ってるのは、私なんだからね!​

「…文字数はどれぐらいだ?」​

「大体8万ぐらい?」​

二人が驚く。フッ、意外とすごいだろ?​

「それ小説じゃないか…。」​

カルトがそう言い放つ。このとき、私はとてもいいアイデアを思い付いた!(人間界の言葉を借りるなら、チョベリグ!というらしい)​

「私のマジカルノベル!これよ!」​

一瞬、時間が止まる。​

「わぁ…。いいじゃない!それにしよ!」​

「確かに…悪くないな。」​

よし、決定だ!​

「ねぇ、せっかく題名決めを手伝ったんだからさぁ…。」​

「?」​

「少し読ませてよ。」​

え?​

「確かに!チャミス、読ませろよ!」​

「は?」​

「絶対に笑わないからさ!」​

お前、笑うつもりだったのか!カルト…覚えてろよ!​

「確か、私たちにインタビューしてたけど…読みたいなぁ~。」​

リズミールの目が、肉食獣の目に変わっている。この場合、私は草食獣だ。​

「おっ!見っけ。」​

いつの間にか、カルトが私のカバンを漁っていた。無礼者ぉぉおお!​

「何々…私は今、あのこうこぉぉぉモガッ!」​

カルトの顔面にパンチを打ち込もうと思ったが、狙いが少し(大幅に)ずれて、腹に喰らわせてしまった。…まぁ、こうなる運命だったんだ。​

「またつまらぬ物を殴ってしまった…。」​

人間界では、こういうときにはこんなセリフを言うらしい。​

「まぁまぁ…。」​

リズミールは苦笑いをしながら、アイスコーヒーをすすっている。カルトは…生体反応があまりない。放っておこう!ちゃんとカルトから原稿を奪い返し、カバンにしまう。でも、少しカバンから原稿がはみ出してしまった。​

私は今、あの高校の前に立っている。​

そんな文が見えた。​
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