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17話

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「待たせた……」
何とか手に持ってきたのは冷たくした葡萄酒。
紅茶など洒落たものは無いし、あっても瓶の酒だ。
その中であまり強くなくラーサティアでも飲めそうなものを選んで栓を抜き、グラスには氷を入れた。
カランとグラスの中で音を立てる氷が、ゆらりと部屋の明かりに煌めく。
「悪いな、洒落たものは無い……摘まむのもチーズかナッツくらいだ」
外に飲みに行くことは多くても、部屋で飲むのは年に数えるくらいしかない。
「ありがとうございます」
差し出してやったグラスを受け取りラーサティアは艶やかに微笑む。
「ニクス様、あの……そちらへ行っても?」
自分の部屋だからと寛ぐ為にソファーは1脚だけで、誰かを招くつもりもなかったからだ。
「あ、あぁ?」
何処に来ると言うのだろうか。
口も付けずにグラスを置いたラーサティアは立ち上がると、寝台に座った俺の隣へと腰掛けた。
「ニクス様、あの……私を好きになってくださったと言うのは本当でしょうか」
自分より頭半分ほど低い身長。
「あぁ、そう……だな、うん」
どういう反応をしていいかわからずに頷くだけだったが、ほんのりと頬を染めたラーサティアは可愛らしかった。
成人をした男性に可愛らしいという言葉を使うのはどうかと思うのだが、語彙力の無い俺にはそれ以上の言葉が見つからない。
「なら、私とこいび……んっ」
ラーサティアが紡ごうとする言葉を指先で止める。
そこまで言わせたら男としての矜持に欠ける。
「ラーサティア、俺はこんな朴念仁だが……お前と釣り合うような身分も持たないが、それでもいいか?恋人になってくれるだろうか」
握り締めた指先。
「はい、喜んで」
答えは思い描いていたそのもの。
「ニクス様、花吐病は結ばれると完治すると……」
「そう、なのか?」
確かに思いを交わらせた後はそこまで強い吐き気は来ていない。
「ならば、もう完治した……の、だろうか……」
このまま吐かなくなれば、騎士団長をもう少し続けてもいい。
「それは、本気で仰っているのでしょうか」
ふと、考え事をしてしまっていたらしく、ラーサティアの声に慌ててそちらを向くとラーサティアがジト目でこちらを見ていた。
「ニクス様、いくら朴念仁だと仰っても、ものには限度というものがありますよ」
さらりと揺れたラーサティアの銀の髪。
そして、その揺れる髪を耳に掛けながら伸びをするようにして一気に距離を詰めてきたラーサティアに唇を奪われたのだった。
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