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127話

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「リクトちゃん、ありがとうねぇ…」

涙でぐしゃぐしゃなミトさんに抱き締められて、ちらりとルーファスさんを見るとルーファスさんも嬉しそうに笑っていた。

「俺、何もしていないけど……」
「してなくはないわよぉぉ……リクトちゃあん……」
「おふくろ、リクトが潰れるから」

ミトさんを剥がしにかかるリル。

「リルにもレヴィにも言ってないけど、この辺りに宿屋あるよね…次の新月の日まで、お泊まりしていっていいかな……ルーファスさんとミトさんの子供、見たい……」
「リクト……」
「あ、ごめんなさい…お父さんも…駄目ですか?」

俺がルーファスさんをお父さんと呼んだ瞬間、全員が一斉にルーファスさんを振り返る。

「なによ、ダーリンだけお父さん?なら、アタシはお母さんか、ママがいいわぁ」

狡いと唇を尖らせるミトさんは、抱き締める力を強くする。
え。これ、呼ばなきゃ駄目な感じ?

「お母さん……?」

そう呼んだ瞬間、抱き締めが更に強くなった。

「嬉しいわぁ…」

パタンパタンとミトさんの太くて長い尻尾が揺れて何かに当たっているのだろう。

「部屋はあるから、ウチに泊まりなさい。宿代はたまに食事を作ってくれたら嬉しいが」
「私もリクトちゃんのレシピ知りたいわ?」
「俺は構いませんけど…」
「じゃあ、今日はお客様用の設備だけど、リクトちゃんのものを買い揃えなきゃ。リルとレヴィのは前から置いてあるのでいいなら、それを使って」

ミトさんがそう指示を出す。

「リクトが残るなら俺たちも此処にいてぇんだけど、親父……」
「来客予定も無いから構わないが……あちらでの仕事は無いのか?」
「うっ……」
「どちらかが戻れば……」
「じゃあ、レヴィ戻れよ」
「嫌だ」

リルとレヴィの口喧嘩が勃発する。
どっちも威嚇の喉鳴りがしている。
どっちにしても、日帰りとか無理なんだよね…それなら、ふたりで戻るか、仕事を先のばししてもらうかだねぇ。
休んじゃ駄目なのかもしれないのに、休んで欲しくなってしまう。
俺もふたりと離れるのは不安だけど、それ以上にミトさんたちの子供が気になるんだ。
だから、申し訳ないけど……。

で、結局ギルドの仕事はキャンセルするらしい。
明日、この街から通信具……そんなのあるんだ……を使って連絡をするらしい。
それを聞いて少しだけ安心した。
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