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169話

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俺達は3人で街中を歩く。
すれ違う獣人さんたちが、ちらりちらりとこちらに視線を向けてくるのは、リルとレヴィの姿を見ているのだ。
俺はちょっとだけ誇らしい。
自分の伴侶がこんなにも素敵なのだから。
へへっと笑うと、ふたりは不思議そうに首を傾げた。

「帰ったら、スマホで写真に残したい」

ひそひそとふたりに耳打ちすると、それはいいなと賛成してくれた。

「いい天気でよかったね」

空を見上げると快晴に近い青空。
暑くもない気温。
3人で歩きながら聖樹へと向かう。
たどり着いた先にはたわわに実を付ける聖樹があった。

「リル、レヴィどの枝にしようか」

ポケットから取り出した黒いリボンをふたりに見せる。
鮮やかなリボン達がそよそよと風に揺れている。

「そうだな…手が届く高さの枝でリクトがいいと思った枝でいいぜ?」
「あぁ、リクトに任せたい」

ふたりの手がリボンを握る俺の手を包む。
何となく実がつく気がした。

「じゃあ、任せて?」

頬にふたりからのキスを貰い、そっと背中を押された。
丸く囲われた柵の外から中を見てゆっくりと枝を選ぶ。
枝を広げるその中の一部分がゆっくりと光った気がした。
そこにしよう。
柵を越えて手を伸ばし1本の枝にリボンを結ぶ。
次の瞬間、パチンと音がして実が成った。

「は?」

どうして?こんなに早く実が成るものなのだろうか。
俺の常識だと、芽から花が咲き受粉を経て実になるのだが、ファンタジーな世界だからそれもありなのだろうか。
リルとレヴィを探すように辺りを見回すと、ふたりも驚いたようにこちらを見ていた。
あれ、こんなシーン前にもあったよね。
柵を越えてふたりに近付く。
リルとレヴィにそっと頭を撫でられた。

「あの果実が大きくなったら産まれるからな?」
「ミラみたく?」
「あぁ、名前を決めなきゃな?」
「レヴィ、気が早いよ?」
「早くねぇよ、考えておきゃ何かあっても焦らなくていい」

リルもレヴィもうんうんと頷いている。
両親から初めて贈られる物が名前だと聞くから、3人で色々考えたい。
それに、子供用の服とか……ミトさんは何を揃えていたっけ。

「また、ミトさんに色々聞きたい……ミラにもルーファスさんにも逢いたいし……」
「近いうちにな?そう言や、近々こっちに、越してくるみたいな話もしていたからな」

そうだった!
ミラが落ち着いたら引っ越してきてくれると聞いた。

「レヴィ、俺達の果実に挨拶して行くか」

リルがレヴィを促すと、ふたりでリボンを結んだ枝に近寄りその枝の先にキスをした。
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