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59話
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「あっ!」
ヒールの踵が石畳の出っ張りに引っ掛かり、あわや噴水に落ちそうになった所をベルゴッドの逞しい腕が支えてくれた。
「すまない、歩きにくかったか?」
美南の体重を受けてもビクともしない身体に、驚き見上げてしまう。
「あ、大丈夫です……すみません」
ベルゴッドの腕にそっと触れて離れると、何故かベルゴッドはふいっと視線を逸らした。
その意味を美南はわからずに首を傾げたが、何でもないと言われてそうなのかと納得した。
「後日、石畳の点検をしてもらわないとな」
「私が履き慣れない靴を履いているからだと」
美南の足元は、今日の装いに合わせた少しだけ踵の細く高い靴だった。
「買ったのか?まさか誰かに買ってもらったなんて事は……」
「ありませんよ!」
靴や服を異性に買って貰う意味を知った美南は、同性からも断ってはいるのだ。
どうやら、恋愛には奔放なこの世界は美南からするととても驚くことばかりで、下手なことは言えないのだ。
ベルゴッドには言えないが、騎士から告白をされたこともある。
それが告白とは知らず、知らないうちに美南が応えてしまいそうになったのを、慌ててシルヴィアに止められた事もあった。
「ベルゴッド様に教えていただいたじゃないですか」
「ミナミ、今日は上司でも部下でもないんだが?」
「え、でも……」
「様はいらない。できれば呼び捨てがいい」
何だこの駄々っ子は。
転び掛けて腰を抱かれたままでいた美南は、眉を顰める。
「ですから、呼び捨てにするのは私の国では特別な関係でないとと」
以前に伝えたでしょうと、美南はベルゴッドを見上げた。
確かにベルゴッドの容姿は美南のドストライクだが、騎士団長であり貴族の嫡男であるベルゴッドと自分はどう考えても釣り合わない。
いや、もし家柄が釣り合ったとしても喪女の自分がベルゴッドと恋愛をするなどと考えられないのだと美南は思っていた。
「俺の事をどう思っている?一番最初に美南を間違えたのがいけなかったのはわかっているが、挽回できていないか?」
向かい合うようにして腰を抱き寄せられると、顔が近い。
少し仰け反るように離れようとするが、触れているだけのような手からは逃れることが出来なかった。
「あの日のことはもう忘れましたし、きっと何もありませんでしたから!」
あの後、妊娠をした訳では無い事はわかっているから、何かあったとしても無かったことにすれば問題ない。
「……美南を手放したくはないけれど、自分だけの物にしてしまいたい……いつもそう思っている」
「ベルゴッド様、それは気の迷いですから。いつも隣に私がいるだけでそう思い込んでしまっているのだと……っ」
「そんなことは無い、何度も何度も考えたのだから。俺は美南の事が好きなのだ。直ぐに答えをくれとは言わないが、少しだけでいい考えてくれ」
ベルゴッドの普段はキリッとした眉が、今日は自信なげに下がっていた。
ヒールの踵が石畳の出っ張りに引っ掛かり、あわや噴水に落ちそうになった所をベルゴッドの逞しい腕が支えてくれた。
「すまない、歩きにくかったか?」
美南の体重を受けてもビクともしない身体に、驚き見上げてしまう。
「あ、大丈夫です……すみません」
ベルゴッドの腕にそっと触れて離れると、何故かベルゴッドはふいっと視線を逸らした。
その意味を美南はわからずに首を傾げたが、何でもないと言われてそうなのかと納得した。
「後日、石畳の点検をしてもらわないとな」
「私が履き慣れない靴を履いているからだと」
美南の足元は、今日の装いに合わせた少しだけ踵の細く高い靴だった。
「買ったのか?まさか誰かに買ってもらったなんて事は……」
「ありませんよ!」
靴や服を異性に買って貰う意味を知った美南は、同性からも断ってはいるのだ。
どうやら、恋愛には奔放なこの世界は美南からするととても驚くことばかりで、下手なことは言えないのだ。
ベルゴッドには言えないが、騎士から告白をされたこともある。
それが告白とは知らず、知らないうちに美南が応えてしまいそうになったのを、慌ててシルヴィアに止められた事もあった。
「ベルゴッド様に教えていただいたじゃないですか」
「ミナミ、今日は上司でも部下でもないんだが?」
「え、でも……」
「様はいらない。できれば呼び捨てがいい」
何だこの駄々っ子は。
転び掛けて腰を抱かれたままでいた美南は、眉を顰める。
「ですから、呼び捨てにするのは私の国では特別な関係でないとと」
以前に伝えたでしょうと、美南はベルゴッドを見上げた。
確かにベルゴッドの容姿は美南のドストライクだが、騎士団長であり貴族の嫡男であるベルゴッドと自分はどう考えても釣り合わない。
いや、もし家柄が釣り合ったとしても喪女の自分がベルゴッドと恋愛をするなどと考えられないのだと美南は思っていた。
「俺の事をどう思っている?一番最初に美南を間違えたのがいけなかったのはわかっているが、挽回できていないか?」
向かい合うようにして腰を抱き寄せられると、顔が近い。
少し仰け反るように離れようとするが、触れているだけのような手からは逃れることが出来なかった。
「あの日のことはもう忘れましたし、きっと何もありませんでしたから!」
あの後、妊娠をした訳では無い事はわかっているから、何かあったとしても無かったことにすれば問題ない。
「……美南を手放したくはないけれど、自分だけの物にしてしまいたい……いつもそう思っている」
「ベルゴッド様、それは気の迷いですから。いつも隣に私がいるだけでそう思い込んでしまっているのだと……っ」
「そんなことは無い、何度も何度も考えたのだから。俺は美南の事が好きなのだ。直ぐに答えをくれとは言わないが、少しだけでいい考えてくれ」
ベルゴッドの普段はキリッとした眉が、今日は自信なげに下がっていた。
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