【BL】ほれぐすり

梅花

文字の大きさ
3 / 6

3話

しおりを挟む
 今、なんて言った? ヴィンセントさんは何と言ったのだろうか。
「え?」
 フェイは聞き返してしまう。
「花街に行かないんだろ? フェイが嫌でなければ俺がするけど。ほらこの薬の事を内緒にしてくれるお礼にさ」
 コトリと、ヴィンセントは瓶を机に置いた。
 立ち上がりゆっくり近付いてくるヴィンセントをフェイは目で追う。
 近い近い近い!
 どんどん近付いてくるヴィンセントに視界が埋め尽くされてもフェイは視線を逸らせず動く事ができなかった。
「フェイの恋愛対象は男……だろ?」
 低く腰に響く声。
 骨張った指に顎を掴まれ顔を動かせなくて、視線だけ下を向く。
 声が出ず、こくりと喉が鳴った。
 今まで誰にも言ったことが無かったのに。
 フェイは否定しなければと思えば思う程声にならなくてヴィンセントから視線を逸らすしかできなかった。
 答えが無いのが間違っていないという答えになってしまっている。
「フェイ、間違ってはいないだろう?」
「……ぁ」
 唇を指でなぞられると、背中にぞくりと言いようのない感覚が駆け上がってくる。
「ヴィン……セン……トさ……」
「見てればわかるさ、まあ、俺もそうなんだがな」
 え。
 僕は耳を疑った。
「フェイは俺の中で見た目がかなり好みなんだ……恋人になって欲しいと思っているが、先に身体の相性を確認してもいいかと思ってな? だから薬を頼んだんだ。フェイを満足させられるように……な」
 にこりと‪笑うヴィンセントの目は笑っていない。
 フェイの小さな顎に添えた手はそのままに、ヴィンセントは逆の手で机の上を手探りして先ほどの小瓶を手にして蓋を開く。
 キュッポンと音がして蓋が外れると、ヴィンセントは一気にその中の液体を口にし嚥下た。
 一気に全部飲み干したヴィンセントは無操作に飲み干した瓶を机に置いて、もう一本を取り出す。
 まさか、もう一本飲むのかとフェイは慌ててその手を掴んだ。
「いけません!」
「ふ……フェイ、お前が飲むんだよ」
 クスクス笑うとヴィンセントはもう一本を開けて中身を全部口に含むと、フェイはヴィンセントに口付けられてぬるりとしたもので唇を割開かれるとその隙間から液体が流れ込んできたのを感じた。
 フェイは飲んではいけないとわかっているのにヴィンセントに腰をがっちりと抱かれて動けなくなって、その液体を飲み込むしか出来なかった。
「は……っあ」
 甘ったるい味。とろりとした液体が喉を滑り落ちていく。
「これで、処理をしないといけなくなったな」
 フェイの唇を親指で拭ったヴィンセントは、細くゆっくりと息を吐く。
「すげぇな、これが性欲剤……か」
 飲んでから半刻ほどすると効果が現れると書いてあったのに、ヴィンセントは飲んでからすぐに熱い吐息を漏らした。
「悪いな、お前を満足させられたら恋人になってくれ、薬を頼るなんてしちゃ卑怯だとわかってるけどそれだけお前が欲しいんだ」
 一歩間違えれば犯罪になる行為だが、フェイは心の隅でヴィンセントに抱かれたいと思っていた。
 あの優しい声や、力強い腕に抱かれる女性は幸せだろうと思った。
 十人並の容姿の自分は見向きもされないだろうと思っていたのに。
「は……あっ……薬なんて頼らなくても……僕、ヴィンセントさんを好き……でした。性欲剤なんて飲んでまで……抱きたい人がいるなんて、羨ましいってちょっと思ってたんです……そんなに何度も一晩で……んんッ」
 胃の腑から下の辺りにぼんやりと火が灯ったようにあたたかくなったかと思った瞬間、ピクリと身体が跳ねた。
「や、熱い……」
 足の間に熱が集まるような感覚。
 試しに飲んでみた時とは全く違う強い快楽。
「身体が火照るな……フェイ、寝台を貸してくれ」
 ヴィンセントの蕩けるような甘い声に、僕はそろそろと奥の部屋を指さす。
 扉の向こうに本当に寝るだけの寝台がある。
 だが、ふたりの体重をささえられるだろうか。
「行くぞ?」
 ヴィンセントが軽々とフェイを横抱きに抱き上げ大股で寝室へと向かう。
 フェイを抱いたまま、スパンと扉が横に開いたからきっとヴィンセントが器用に足で開けたのかもしれない。
 綺麗にしてはいるつもりだが、誰かを入れたことのない寝室。
 ヴィンセントはフェイを寝台に下ろすと、フェイは熱くなった上体をよじって枕元のランプを点けた。
 ぼんやりと明るくなった室内。
「ふは、フェイらしい部屋だな」
 ヴィンセントがシャツを脱ぎながら笑う。
「高く詰んだ本は薬草の本か? 一冊くらい中に春画本が混ざってるなんて事は……フェイにはねぇか?」
 春画とは、夜の営みを描いた本だ。
「え、あの……」
「あるのか? フェイがどんなプレイが好きなのか気にはなるが」
 ヴィンセントが笑うが、自分の性癖などわからないが男同士がどう交わるのか気になって買った本が一冊だけ寝台横の棚の引き出しに他人の目に付かないように入れてあった。
 無意識に視線を送ってしまったのだろう、ヴィンセントはここか? とその引き出しを引いて中の本を取り出すとパラパラと捲る。
「あ」
 フェイはそれを止めようとしたが、ヴィンセントの方が早い。
「へぇ、フェイはこんなのが好きなんだな?」
 そうヴィンセントの声が降ってきて、フェイは顔を両手で被った。
 恥ずかしいのだ。
「フェイは、大男に組み敷かれるのが好きなのか? どんな事を想像して、自分を慰める?」
 ヴィンセントの口から零れる卑猥な言葉。
「ほら、こっちを見ろよ。春画よりいい思いをさせてやる」
 パサリと本が閉じる音がして顔を覆っていた手にヴィンセントの手が触れたのだろう、他人の体温を感じた瞬間強い力でその手が頭の上に引っ張りあげられると纏めて拘束された。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

竜神様の番

田舎
BL
いつかX内で呟いた、 『えーん、えーん…💦 竜人の攻めが長いこと探してた番の人間くんを探して(半強制的)に結婚したのに、ツンデレどころかクーデレが過ぎてたせいで、ある日人間くんが「離縁します」と置き手紙残して失踪…! 後悔とブチギレしてる話がなきゃ掃除と洗濯できない😭😭』 という自分の愚痴から始まったツイノベもどきを、再構成と校正しました。 「番」とは何かも知らされず、 選択肢すら与えられなかった人間リオと、 大切にしている“つもり”だった竜人のナガレ。 ちゃんとハッピーエンドです。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

運命が切れたそのあとは。

めっちゃ抹茶
BL
【本編完結】 オメガのフィアは、憧れていた運命の番と出会えて喜んだのも束の間、運命の番が何者かに刺殺されてしまう。目の前で繰り広げられた惨劇にフィアは意識を失い、倒れてしまう。 呼ばれた救急車で二人は緊急搬送されたものの、フィアは一向に目を覚ます気配がない。 身体の深い奥底で繋がっているという運命。それがぷつりと切れたら果たして二人はどうなってしまうのか。そして目を覚ました先に目にしたものとは————。 投稿予約分(4話)は毎日更新。あと数話で完結予定。 遅筆&亀更新なのでゆっくりお待ちいただければ幸いです。見切り発車の突貫工事で書いたお話故、構想はあれど最後まで書き切っておらず、内容に纏まりがないかもしれませんが温かい目で見てください🙏

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

処理中です...