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1章

139話

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「カイル……怖い」
俺が提案したのはテトの視覚を封じること。
痛い思いをさせたい訳ではないのだ。
テトの細い手が何かを探すように動いている。
「大丈夫だ、傍にいる」
テトの手を掴んで優しく引き寄せる。
ぽすっと腕の中に収まったテトは安堵の息を吐いた。
銀色の軟らかな髪は星を映すように光を弾く。
「これは、おしおきだからな?」
耳へと言葉を吹き込んでやると、テトはぴくりと身体を揺らした。
「ん……やだ、カイルを見たいのに……」
きゅっと服の胸の辺りを不安そうに握るテトの愛らしい蒼の瞳が見れないのは、自分にとっても少し残念なのだけれど。
「少し我慢だな?」
「はい……」
髪を撫でてやると、こくりと頷いた。
さて、そろそろ始めようか。
近くに置いてあった水差しから一口水を飲み込むと、テトへ口吻ける。
一瞬驚いたようではあったが、テトはそのまま水を大人しく飲み込んだ。
「テト、いつもの甘露の水だ」
甘露の水、少量の媚薬を入れたもので気分を変えたいときなどに用いる。
勿論テトも使用することは了解をしている。
だが、今回飲ませた水にはそんな成分は入っていない。
「えっ……カイル……」
甘露の水と聞いて、テトの様相が変わっていく。
「ほら、いつもと同じだから怖くないだろう?」
「は、はい……」
恥じらうような初々しい姿は何度こうして肌を重ねても変わらない。
するりとシャツの中へ手を差し込むとテトの身体が少しだけ強張った。
「……っは……」
腰骨の辺りを撫でると、くすぐったそうに身体を捩るテト。
口許へ声を殺すために指を持っていく仕草は何度言っても治らないのが可愛くもある。
「テト、ダメだろう?指が傷付く」
服の中から手を出すと、そっとテトの手を掴む。
「悪い子だな」
腹部へ跨がるような格好だったテトを支えながらくるりと上下を入れ換えてテトの身体を寝台に埋めた。
仰向けになってもテトの顔を覆う布は外れない。
不安そうなその頬を指先で撫でてからその肩口に軽く吸い付いた。
「ひぁっ!」
テトの悲鳴にもっと啼かせたい衝動が込み上げてくる。
「テト、沢山触れて気持ち良くしてやるからな?」
決して自分には嗜虐癖はない。
これはテトへ対してだけなのだろう。
出逢ってからかなり経つが、未だにテトへの新しい気持ちを発見する。
背筋を駆け上がってくるこの感覚をもっと味わいたいとつい思ってしまうのだった。
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