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2章
13話
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食事を終えた俺は、セラフィナに案内して貰いながら広い廊下を進んでいるが、同じ土壁ばかりでどう進んでいるのかわからない。
「セラフィナ、俺一人じゃ帰ってこれないよ……迷子になりそう」
いや、絶対に迷子になる。
「私が側に控えておりますのでミオリ様はお心の許すまでどうぞ」
そう言ってくれたが、セラフィナにはセラフィナの仕事があるだろう。
邪魔はしたくないのだ。
「でも、いいの?」
「えぇ、カミーユ様にも許可をいただいておりますが、休憩と食事は必ずと言われておりますのでそれだけは必ずお願いいたします」
セラフィナは振り向きながらにこりと笑う。
セラフィナは、美形だがその笑顔は怖いと感じることもある。
「ミオリ様、ここから先が農園となっておりますので、サンダルにお履き替え下さいませ」
セラフィナに差し出されたサンダルに履き替える。
普段室内履きに借りていたサンダルよりもしっかりとした作りの物だった。
「ありがとう」
セラフィナにお礼を言うと、とんでもない事ですと頭を横に振られ、セラフィナも同じようなサンダルに履き替えた。
石畳の廊下から砂、やがて土へと変わった先には俺の見知った畑とは全く違う見たこともない畑が目に入った。
「これが、畑?」
土は耕してはあるが、平らな場所に雑多に苗が植えてある。
俺は唖然としてしまった。
「セラフィナ、どこも同じように作っていたりするの?それとも此処が特別?」
「ミオリ様?恐らく此処は特別かと……他で作るよりは良いものが採れますよ」
そう言って胸を張ったセラフィナ。
「うん、そうか……じゃあ、この畑の責任者みたいな人はいるのかな。それと、土を触らせて貰っていいかな」
「お待ち下さい」
セラフィナが辺りを見回すと、1人強面の日に焼けた男性がこちらへと来る。
どうやら、彼が責任者のようだった。
赤茶色の髪を短く刈り込んで、首から白い布を下げている。
腰には鋏だろうか袋に入った何かを下げていた。
「こんにちは、俺はミオリと言います。許可を貰ってこの畑を見にきたのですが貴方が責任者の方ですか?」
そう喋り掛けると、男はこくりと頷いた。
どうやら寡黙なたちらしい。
「責任者のリャムルです」
そう紹介してくれたのはセラフィナだった。
「リャムルさん、ちょっと畑の土を触らせていただけますか?それと、他にも色々と聞きたいことが」
俺を訝しげな表情で見たリャムルは、それでもこくりと頷いてくれた。
俺は遠慮無く柵を越えて畑の中に入る。
慌ててそれをセラフィナが追ってきた。
「……うーん……」
腰を屈めて片手で掬った土は、さらさらとした砂のような手触りだった。
「セラフィナ、俺一人じゃ帰ってこれないよ……迷子になりそう」
いや、絶対に迷子になる。
「私が側に控えておりますのでミオリ様はお心の許すまでどうぞ」
そう言ってくれたが、セラフィナにはセラフィナの仕事があるだろう。
邪魔はしたくないのだ。
「でも、いいの?」
「えぇ、カミーユ様にも許可をいただいておりますが、休憩と食事は必ずと言われておりますのでそれだけは必ずお願いいたします」
セラフィナは振り向きながらにこりと笑う。
セラフィナは、美形だがその笑顔は怖いと感じることもある。
「ミオリ様、ここから先が農園となっておりますので、サンダルにお履き替え下さいませ」
セラフィナに差し出されたサンダルに履き替える。
普段室内履きに借りていたサンダルよりもしっかりとした作りの物だった。
「ありがとう」
セラフィナにお礼を言うと、とんでもない事ですと頭を横に振られ、セラフィナも同じようなサンダルに履き替えた。
石畳の廊下から砂、やがて土へと変わった先には俺の見知った畑とは全く違う見たこともない畑が目に入った。
「これが、畑?」
土は耕してはあるが、平らな場所に雑多に苗が植えてある。
俺は唖然としてしまった。
「セラフィナ、どこも同じように作っていたりするの?それとも此処が特別?」
「ミオリ様?恐らく此処は特別かと……他で作るよりは良いものが採れますよ」
そう言って胸を張ったセラフィナ。
「うん、そうか……じゃあ、この畑の責任者みたいな人はいるのかな。それと、土を触らせて貰っていいかな」
「お待ち下さい」
セラフィナが辺りを見回すと、1人強面の日に焼けた男性がこちらへと来る。
どうやら、彼が責任者のようだった。
赤茶色の髪を短く刈り込んで、首から白い布を下げている。
腰には鋏だろうか袋に入った何かを下げていた。
「こんにちは、俺はミオリと言います。許可を貰ってこの畑を見にきたのですが貴方が責任者の方ですか?」
そう喋り掛けると、男はこくりと頷いた。
どうやら寡黙なたちらしい。
「責任者のリャムルです」
そう紹介してくれたのはセラフィナだった。
「リャムルさん、ちょっと畑の土を触らせていただけますか?それと、他にも色々と聞きたいことが」
俺を訝しげな表情で見たリャムルは、それでもこくりと頷いてくれた。
俺は遠慮無く柵を越えて畑の中に入る。
慌ててそれをセラフィナが追ってきた。
「……うーん……」
腰を屈めて片手で掬った土は、さらさらとした砂のような手触りだった。
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