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2章
21話
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建物から出ると、そこにあったのは鞍が付いた馬。
「馬?」
「あぁ」
二頭、轡を嵌められ鞍を乗せられた大きな馬が並ぶようにしている。
太陽に輝く 黒毛と、柔らかな栃栗毛で、どちらも賢そうな顔をしていた。
「俺、乗ったことは無いんだけど」
「……そうか」
ん?なんだよ。仕方無いだろ……馬に乗るなんて流石にそんな裕福な家庭でも農耕馬で畑を耕さなきゃならないほど田舎民でもなかったんだから。
カミーユの言葉の中に乗れないことに対する嘲りを感じてムッとすると、とうした?と、首を傾げられる。
「俺の世界じゃ馬に乗ることは無かったんだよ」
「そうか。で、ミオリはなんで怒ってるんだ」
「え。だってカミーユは俺が馬に乗れないのおかしいと思ったんだろ?なんでそんな事が出来ないんだって……そう思ったろうが」
俺の言葉にカミーユは口を噤む。
それから空を見上げてから息を吐いた。
「そう見えたら悪い、そんなつもりは無い」
「そんなつもりは無くても、そうとられたらそうなんだよ」
俺はぷいっと顔を逸らした。
「ミオリは馬に乗るのは嫌か?一緒になら乗れるか?」
俺を気遣うような声音。
「……乗ってはみたいけど、怖い」
「絶対に落とさないと誓う」
「ならしょうがないから一緒に乗ってもいい」
「そうか」
ちらりとカミーユを見たら、苦笑を浮かべつつ手を差し出している。
その手を取ってやると、ギュッと手を掴まれた。
「ほら、来い」
カミーユが選んだのは黒毛の馬。
「こいつなら、とびきりの軍馬だ。ふたりを乗せて走るのくらい大丈夫だから安心しろ」
「あぁ」
先にひらりと馬に跨ったカミーユが、馬上に俺を引き上げてくれる。
わぁ、高くなった視線に声が出た。
「凄い」
高いところは嫌いでは無い。
自宅で果実をもぐのに木登りなどをしてきたから、それなりに大丈夫だけれど、これがこの後動くのだろう。
俺の身体を包み込むようにしてカミーユの腕が回される。
「怖くないか?」
「大丈夫だ、ただ動けばもしかしたら怖いかもしれない。カミーユ、この馬の名前は?」
「シエラだ。牡馬」
この国ではどうやら男も雄もカミーユにしろシエラにしろ可愛らしい名前を付ける風習があるようで、俺はくすりと笑ってしまった。
「そうか。シエラ重いかもしれないけれど頼むな?」
俺は軽くシエラの首筋を撫でると、ぶるるっと鼻を震わせた。
「では行くぞ?」
ハイッという短い掛け声にシエラは俺たちを乗せてゆっくりと歩き始めた。
「馬?」
「あぁ」
二頭、轡を嵌められ鞍を乗せられた大きな馬が並ぶようにしている。
太陽に輝く 黒毛と、柔らかな栃栗毛で、どちらも賢そうな顔をしていた。
「俺、乗ったことは無いんだけど」
「……そうか」
ん?なんだよ。仕方無いだろ……馬に乗るなんて流石にそんな裕福な家庭でも農耕馬で畑を耕さなきゃならないほど田舎民でもなかったんだから。
カミーユの言葉の中に乗れないことに対する嘲りを感じてムッとすると、とうした?と、首を傾げられる。
「俺の世界じゃ馬に乗ることは無かったんだよ」
「そうか。で、ミオリはなんで怒ってるんだ」
「え。だってカミーユは俺が馬に乗れないのおかしいと思ったんだろ?なんでそんな事が出来ないんだって……そう思ったろうが」
俺の言葉にカミーユは口を噤む。
それから空を見上げてから息を吐いた。
「そう見えたら悪い、そんなつもりは無い」
「そんなつもりは無くても、そうとられたらそうなんだよ」
俺はぷいっと顔を逸らした。
「ミオリは馬に乗るのは嫌か?一緒になら乗れるか?」
俺を気遣うような声音。
「……乗ってはみたいけど、怖い」
「絶対に落とさないと誓う」
「ならしょうがないから一緒に乗ってもいい」
「そうか」
ちらりとカミーユを見たら、苦笑を浮かべつつ手を差し出している。
その手を取ってやると、ギュッと手を掴まれた。
「ほら、来い」
カミーユが選んだのは黒毛の馬。
「こいつなら、とびきりの軍馬だ。ふたりを乗せて走るのくらい大丈夫だから安心しろ」
「あぁ」
先にひらりと馬に跨ったカミーユが、馬上に俺を引き上げてくれる。
わぁ、高くなった視線に声が出た。
「凄い」
高いところは嫌いでは無い。
自宅で果実をもぐのに木登りなどをしてきたから、それなりに大丈夫だけれど、これがこの後動くのだろう。
俺の身体を包み込むようにしてカミーユの腕が回される。
「怖くないか?」
「大丈夫だ、ただ動けばもしかしたら怖いかもしれない。カミーユ、この馬の名前は?」
「シエラだ。牡馬」
この国ではどうやら男も雄もカミーユにしろシエラにしろ可愛らしい名前を付ける風習があるようで、俺はくすりと笑ってしまった。
「そうか。シエラ重いかもしれないけれど頼むな?」
俺は軽くシエラの首筋を撫でると、ぶるるっと鼻を震わせた。
「では行くぞ?」
ハイッという短い掛け声にシエラは俺たちを乗せてゆっくりと歩き始めた。
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ウチ押し スイカ割り ありがとうございます✨🍉
幸せ家族の一日ですね〜😆
ふふ。ご褒美も大変気になります😁
miki様
ありがとうございます!
もっと双子にわちゃわちゃさせたかったのですが、長くなりすぎたので割愛。
BL要素をご褒美の辺りで察してください。
ちなみに、カイルが1発で割れたのは歩幅とか体幹とかその辺りがしっかりしているので、何歩で届くとか計算できているからでした!(ぐるぐる回ってないし)
というマイ設定🤣
こんばんは
○○○プレイ😆
ヤキモチカイルさんも可愛いですけど、テトさんの無自覚な魅了にメロメロですね〜💕
続きもお待ちしてます💕💕💕
新章も楽しみにしています😌
可憐な容姿に中身は社畜なオジサン…😂
カミーユさんがどのように変化していくのか…🤭
ふふ❤️
miki様
ありがとうございます。
最初、言葉攻めプレイと言っていたのですが、カイルはそんなタイプではなく(たぶんイケボではあるのでしょうが)違うプレイになりそうです( *´艸`)
新章も、頑張ります💪
私には珍しい俺様攻めにしたいのですが、絶対ヘタレになる……。
まぁ、それも良いと笑ってください( *´艸`)
新章開幕おめでとうございます&ありがとうございます㊗️٩( ᐛ )( ᐖ )۶yeah‼️
おや?おやおやおや??四十路間近の主人公の声ではないと…ふふふ、これは若返りかな?(〃艸〃)︎💕︎
心はおっちゃんなのにグイグイ来られてもだもだあわあわするんでしょうか?くふふふふ♡
いや〜ん💗 大好物です(⌯︎¤̴̶̷̀ㅿ¤̴̶̷́)❤︎.*スキ
もちろん違った展開でも大歓迎🎆
新しいお話楽しみです⋆⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝♬.*゚
しんちゃんまま様
ありがとうございます😆
新しい章は主人公を変えてでも時間軸は同じというのをやろうかなと。
1章は、書籍化したため取り下げになりますが、2章だけでも楽しめるように頑張りたいと思います。