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2章

20話

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「ほら、騒ぐなセラフィリーア姿見を」
カミーユの指示に、セラフィリーアはこちらにと一抱えもある鏡を起こす。
銅板だろうか、凄く重そうな装飾で飾られた鏡は、セラフィリーアがいくら力があるとわかっていても、持ち歩ける手鏡を使っていた俺からすると、とても重そうにかんじた。
流石にキャスター付きの姿見って訳にもいかないだろうけれど、こんなものを運ばせるのが申し訳なくなってくる。
「立てるか?」
「あぁ、うん」
俺はそっと立ち上がり、全身を鏡に映す。
少しぐにゃりと歪む姿だったが、まぁまぁわからなくはない程度。
思っていたよりも装身具のおかげで、肌の露出は抑えられている気がした。
「これなら、まぁ何とか?」
俺の言葉に少しホッとした表情を浮かべたセラフィリーア。
それに気付くと、わがままを言ってしまった事に申し訳なさを感じた。
三十路のオヤジが若者を困らせてしまっている。
「セラフィリーア、鏡をありがとう。重そうだな……どうやってこの鏡は作っているのかなぁ……フロート法?」
ふと、昔の知識が蘇る。
学生の時に反射の授業でやった、光をレンズに通す実験で屈折率などを求めたりする事から話が逸れて何故が鏡の作り方などを当時聞いたなと言うのを思い出した。
黒いカーテンを敷いたガラスや夜にどうして自分の姿が映るのか。
そんな授業を思い出して俺は小さく笑いながら鏡に目を移す。
研磨の問題か何かは俺にはわからないけれど、鏡面が歪むのであれば、作っているのはフロート法ではないのかもしれないけれど……懐かしいなぁ……。
「フロート法?なんだそれは」
カミーユが興味があると聞いてきた事に俺は答える。
そもそもこの世界に錫などがあるかもわからないのだけれど。
「ほぅ、セラフィリーア書き留めておけ」
「御意」
「ミオリ、フロート法とやらはまた帰ってきてから詳しく聞くが、先ずは神殿に向かうぞ?それから食べてみたかったと言う果物を持って帰ってきてからだ」
それは構わないけれど、俺だって詳しい訳じゃないから簡単な触りしか教えられない。それを進化させていくのは職人の腕に掛かっている。
「ほら、歩けるか?無理そうなら抱いていってやる」
「歩ける」
「じゃあ、手を」
まるでエスコートをするように自然な所作で手を出され、俺もそれにつられたのか手を添えてしまう。
「セラフィリーア、重かっただろ?ごめんなありがとう」
「とんでもない、いってらっしゃいませ」
そう言われてセラフィリーアが一緒に来ない事を知る。
俺は無意識にカミーユを見上げた。
「セラフィリーアは今日は来れない、神殿には理由があって入れないのだ」
「そっか、買い物とかがあれば一緒には行ける?」
「商人を呼べばいい」
「待てよ、俺、買い物とかは物を見て買いたいんだって」
不穏な空気を感じて俺はカミーユから目を逸らした。
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