上 下
55 / 57
2章

19話

しおりを挟む
「神子様が着る為のお召し物です。良くお似合いですよ?」
ニコニコと笑うセラフィナ。
だが、俺の顔は引き攣っている。
それはどう見たっておとぎ話に出てくるような踊り子に似た服だった。
薄い布が胸の前で交差しているだけの心許ない上半身に、下は前に布を垂らし、足首までのニッカボッカみたいなズボンはこれまた肌が透けて見える程の薄い布だ。
しかも、布の色は全て白。
色々と大切な部分が見えてしまいそうで焦る。
「嫌だ、こんな服なら神殿なんか行かない」
上半身ならまだ大丈夫だが、流石に……。
「ミオリ様……」
困ったセラフィナの表情を見ると、ズキンと胸が痛むが流石にアラサーの中身の俺が羞恥心が無くてどうするんだ。
「……だって……セラフィナだったらこの服着たいか?」
こんな透け透けの服、ビジュアル的に美人な女性ならいいけれど、確実にアウトだろ。
それに、俺の裸体に近い姿を見て、誰得なんだって……。
「ミオリ?何をぐずぐずしてるんだ?」
部屋に入ってきたのはカミーユで、俺の姿を見ると目を細め視線を逸らした。
ほら、だから見るに堪えないんだってば!
「この格好で神殿に行かなきゃならないのかよ」
「……あぁ、神子はそうなっている」
「でも、俺はこんな格好じゃ行きたくない……歩けないよ」
鏡など無いからどうなっているのかわからない。
あっても見たくないけれど。
「歩かなきゃいいのか?ならほら」
ふわりと抱き上げられたお姫様抱っこ。
何回目だよこれ!
「まっ、カミーユ!」
足をバタバタさせると、セラフィナが慌てて靴を履かせてくれふわりと少し厚手の膝掛けを掛けてくれた。
これ、腰に巻けばいいじやん。
「セラフィナ」
「これからにございます」
「なら、私が手づからしよう」
「御意」
二人はなにやらアイコンタクトをしたようだった。
何をするつもりなんだ?
「はら、暴れると見えるぞ?」
くくっと意地悪く笑ったカミーユ。やっぱりこの服見えるんだろ!!
口を開こうとした瞬間、俺はふわりと軟らかな椅子に座らされた。
「なっ!」
「まだその格好で終わりじゃないからな、大人しく座っていろ」
カミーユがそう言うと、セラフィナが手になにやら大切そうに持ってきた箱を開くと、中には金の装身具。
「神子の為の物だ。ミオリのサイズに誂えてある」
そう言いながらカミーユがひとつずつ手に取り、俺が纏う布を留めるように嵌めていく。
首元から始まり手首や腰、太腿、足首。
シャランと綺麗な音をたてるその金属達。
「ほら、これで風が吹いてもめくれる事が無い。安心しろ」
身体にフィットするその金属は驚いたことにカミーユの言うようにひらひらとしていた布をしっかりと俺の身体に纏わせていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

疑う勇者 おめーらなんぞ信用できるか!

uni
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:511pt お気に入り:246

Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない

BL / 連載中 24h.ポイント:717pt お気に入り:2,877

迷い子の月下美人

BL / 連載中 24h.ポイント:2,541pt お気に入り:7,408

離縁するので構いません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:39,807pt お気に入り:465

陰キャな魔導士は、平和な世界で聖騎士に溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:408

【完結】イヴは悪役に向いてない

BL / 完結 24h.ポイント:994pt お気に入り:3,521

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:46,029pt お気に入り:35,276

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。