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2章
18話
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「面白いなぁ、いろいろな野菜や果物かぁ……」
図鑑を見ているだけで楽しくなる。
俺は根っからの農業好きなのだろう。
「どんな味がするのかな……気になる」
「何だ、食べてみたいのか?」
ひょこっと顔を出したカミーユ。
「あ、カミーユどうした?」
「どうしたじゃないだろうが、でも食いたいなら運ばせるぞ?」
図鑑を後ろから覗き込んでくるカミーユの近さがくすぐったい。
「食べてみたいのはあるけど、そんなに簡単に食べられるものなのか?」
季節ごとに摂れるものは変わるだろうし、地域によって特産もあるだろうけれど......輸送技術などをどうしても気にしてしまうのだ。
「この中の数種類は神殿に奉納される中にある筈だ」
「え、なら一つくらい欲しい......」
食べてみたいし、どんなものがわかれば栽培方法もわかるだろう。
「折角なら、その神殿に行ってみないか?」
カミーユに誘われ、俺は頷きかけるがふと思い至る。
「神殿って、祈りを捧げる場所だろ?俺はこの世界で何も信仰なんかしていないし」
「問題ない。では明日迎えに来るから支度だけはしておいてくれ」
そう行って離れていったカミーユの口が弧を描いていたのを俺は見逃してしまった。
★★★
翌日、朝から上へ下への大騒ぎだった。
セラフィナに起こされたのはまだ朝日も上がらない時間。
「セラフィナ?」
「おはようございますミオリ様、神殿に行かれると伺っておりますので、お支度をさせて頂きます」
「え?」
眠くて目を擦りながら寝台から起き上がると、セラフィナが俺を抱き上げる。
えっ!えっ!?となっている間に湯殿からたっぷりとお湯が張られた湯船に入れられた。
お湯と言っても温泉のように湯気が上がるようなお湯ではなく、少しあたたかいくらいのもので、まだ頭が働かない俺は、そのままセラフィナに頭から爪先まで綺麗に洗われた。
普段だったら恥ずかしくてそんなことさせないのだけれど。
この身体になってから、朝が弱い。
農業をしていた時は夏は暑くなる前に仕事を終わらせたいからとまだ暗いうちから動き出していたのだ。
「ふぁー......眠い......」
俺が呟くと、セラフィナは申し訳ありませんといいながらお湯から俺を上げると脱衣所の椅子に座らせ身体を丁寧に拭いた。
「......何これ」
漸く頭が働き始めた頃には、俺はセラフィナの手で何やら怪しげな服を着せられてしまっていたのだった。
図鑑を見ているだけで楽しくなる。
俺は根っからの農業好きなのだろう。
「どんな味がするのかな……気になる」
「何だ、食べてみたいのか?」
ひょこっと顔を出したカミーユ。
「あ、カミーユどうした?」
「どうしたじゃないだろうが、でも食いたいなら運ばせるぞ?」
図鑑を後ろから覗き込んでくるカミーユの近さがくすぐったい。
「食べてみたいのはあるけど、そんなに簡単に食べられるものなのか?」
季節ごとに摂れるものは変わるだろうし、地域によって特産もあるだろうけれど......輸送技術などをどうしても気にしてしまうのだ。
「この中の数種類は神殿に奉納される中にある筈だ」
「え、なら一つくらい欲しい......」
食べてみたいし、どんなものがわかれば栽培方法もわかるだろう。
「折角なら、その神殿に行ってみないか?」
カミーユに誘われ、俺は頷きかけるがふと思い至る。
「神殿って、祈りを捧げる場所だろ?俺はこの世界で何も信仰なんかしていないし」
「問題ない。では明日迎えに来るから支度だけはしておいてくれ」
そう行って離れていったカミーユの口が弧を描いていたのを俺は見逃してしまった。
★★★
翌日、朝から上へ下への大騒ぎだった。
セラフィナに起こされたのはまだ朝日も上がらない時間。
「セラフィナ?」
「おはようございますミオリ様、神殿に行かれると伺っておりますので、お支度をさせて頂きます」
「え?」
眠くて目を擦りながら寝台から起き上がると、セラフィナが俺を抱き上げる。
えっ!えっ!?となっている間に湯殿からたっぷりとお湯が張られた湯船に入れられた。
お湯と言っても温泉のように湯気が上がるようなお湯ではなく、少しあたたかいくらいのもので、まだ頭が働かない俺は、そのままセラフィナに頭から爪先まで綺麗に洗われた。
普段だったら恥ずかしくてそんなことさせないのだけれど。
この身体になってから、朝が弱い。
農業をしていた時は夏は暑くなる前に仕事を終わらせたいからとまだ暗いうちから動き出していたのだ。
「ふぁー......眠い......」
俺が呟くと、セラフィナは申し訳ありませんといいながらお湯から俺を上げると脱衣所の椅子に座らせ身体を丁寧に拭いた。
「......何これ」
漸く頭が働き始めた頃には、俺はセラフィナの手で何やら怪しげな服を着せられてしまっていたのだった。
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