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3話
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「どういう事ですの?」
何人もの生徒がそれを目撃したであろう。
薄く発光するその場所。
「聖痕ですね」
繋がれたままの手。
「フェンリエッタ嬢、貴女は聖女なのですよ」
その浮き上がった痣に驚くことなくベルナルドは笑う。
まるで知っていたかのように。
「何かの間違いだわ、私もう16歳を過ぎていますもの……リコリス様、何かなさったのではなくて?」
私はキッとベルナルドを睨み付ける。
何をしたのかはわからないが、何かしなければこんなことにはならないのだ。
さぁ。とばかりに肩を竦めて見せたベルナルドに見えるようにわざとらしく溜め息を吐いて見せる。
「良いわ、此処でする話ではないから此処を出ましょうか……皆様、ごきげんよう」
ベルナルドに手を取られながら、出口で優雅に腰を降り踵を返すと歩き出す。
この建物にも王子にも用はない。
少し寒いと感じる外の風にふるりと身体を震わせると、肩に上着が掛けられた。
「どうぞ」
「ありがとう」
包まれる暖かさに少しだけホッとしてしまう。
「……で、これは本物?」
手の甲に薄く残る聖痕。
不思議な幾何学模様をしたそれは薄く薄く発光しているのだ。
ベルナルドのリードで噴水の近くに向かい、ベンチに腰を下ろす。
大きな満月の光にキラキラと揺らめく水面が、綺麗だなと笑った。
「本物でしょう……聖痕の偽物など、自らが筆で偽物を書き込む以外は見たことがありませんから」
聖痕は聖女の証。
これが浮き上がることにより、聖女として国に登録されて神殿で聖女としての立ち振舞い等を学び、その力を国のために使う。
ただし、その聖痕が現れるのか10歳まで。
生まれながらに聖痕を持つ聖女もいるが、フェンリエッタのように後から何らかが引き金となって浮き出る場合もある。
ただし、フェンリエッタはもう16歳を過ぎている。
聖痕が出るには遅い年齢なのだ。
むしろこの年齢で出たという話を聞いたことがないのだ。
「困ったわ、聖女になんかなるつもりは……いや、婚約者がいなくなって他人の目に晒されるなら聖女もいいかしら……」
お父様達にご迷惑をかけるよりは、それがいいかしら?
顎に手を添えて私は考え込んでしまう。
隣に座ったベルナルドは静かに私の聖痕を見ていた。
「それともお父様の領地経営をしながら引きこもろうかしら」
何が正解なのかはわからない。
ただひとつ言えること。
王族に関わりたくない。
あのような辱しめ……とは、思っていないが……を受ける謂れは無かったのだから。
私は星空を見上げた。
結論は出ない。
何人もの生徒がそれを目撃したであろう。
薄く発光するその場所。
「聖痕ですね」
繋がれたままの手。
「フェンリエッタ嬢、貴女は聖女なのですよ」
その浮き上がった痣に驚くことなくベルナルドは笑う。
まるで知っていたかのように。
「何かの間違いだわ、私もう16歳を過ぎていますもの……リコリス様、何かなさったのではなくて?」
私はキッとベルナルドを睨み付ける。
何をしたのかはわからないが、何かしなければこんなことにはならないのだ。
さぁ。とばかりに肩を竦めて見せたベルナルドに見えるようにわざとらしく溜め息を吐いて見せる。
「良いわ、此処でする話ではないから此処を出ましょうか……皆様、ごきげんよう」
ベルナルドに手を取られながら、出口で優雅に腰を降り踵を返すと歩き出す。
この建物にも王子にも用はない。
少し寒いと感じる外の風にふるりと身体を震わせると、肩に上着が掛けられた。
「どうぞ」
「ありがとう」
包まれる暖かさに少しだけホッとしてしまう。
「……で、これは本物?」
手の甲に薄く残る聖痕。
不思議な幾何学模様をしたそれは薄く薄く発光しているのだ。
ベルナルドのリードで噴水の近くに向かい、ベンチに腰を下ろす。
大きな満月の光にキラキラと揺らめく水面が、綺麗だなと笑った。
「本物でしょう……聖痕の偽物など、自らが筆で偽物を書き込む以外は見たことがありませんから」
聖痕は聖女の証。
これが浮き上がることにより、聖女として国に登録されて神殿で聖女としての立ち振舞い等を学び、その力を国のために使う。
ただし、その聖痕が現れるのか10歳まで。
生まれながらに聖痕を持つ聖女もいるが、フェンリエッタのように後から何らかが引き金となって浮き出る場合もある。
ただし、フェンリエッタはもう16歳を過ぎている。
聖痕が出るには遅い年齢なのだ。
むしろこの年齢で出たという話を聞いたことがないのだ。
「困ったわ、聖女になんかなるつもりは……いや、婚約者がいなくなって他人の目に晒されるなら聖女もいいかしら……」
お父様達にご迷惑をかけるよりは、それがいいかしら?
顎に手を添えて私は考え込んでしまう。
隣に座ったベルナルドは静かに私の聖痕を見ていた。
「それともお父様の領地経営をしながら引きこもろうかしら」
何が正解なのかはわからない。
ただひとつ言えること。
王族に関わりたくない。
あのような辱しめ……とは、思っていないが……を受ける謂れは無かったのだから。
私は星空を見上げた。
結論は出ない。
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