完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

梅花

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85話

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「どうぞ、口に合うかわからないですが」
シルフェ様が置いてくれたカップからは豊潤な香りが立つ。
二人がけのソファーに並んで座ると、俺はカップに口をつけ優しい味にほっと息を吐いた。
「美味しいです、シルフェ様。良かったらクッキーをどうぞ甘さは控えめにしてありますから」
食感を楽しむためにスライスしたアーモンドやクルミを入れて焼いてある。
「ありがとう。いただこうか」
一枚のクッキーを取り出したシルフェ様はそれをぱくりと口にした。
ザクザクとクッキーを噛み砕く音すら心地好く聞こえる。
「甘さもちょうど良いです。美味しいですよルーカス……で、私に言う事はありませんか?」
にこにこと笑みを浮かべるシルフェ様の声のトーンが下がった。
ぐいっと腰を掴まれ、顎を上げさせられるとシルフェ様の瞳と視線が交ざる。
耳から吹き込まれるヒヤリとした冷たさを纏うその声に、俺はビクッと反射的に反応してしまった。
「シルフェ……様……」
「私と逢う前に誰かと一緒にいたのですか?」
俺の手からカップが奪われ、テーブルに置かれる。
「誰かって……」
「わかりませんか?貴方に付いた知らない匂いですよ」
シルフェ様の目がすっと細められた。
猛禽類のような鋭い瞳は今まで見たことが無いくらい怖い。
「知らない……です、店には寄りました、が……」
「匂いが付くくらい傍にいたと言うことでしょう?」
シルフェ様の声が、表情が、怖い。
恐怖を感じて、俺は上手く言葉を紡げない。
「……誰とも……」
「では、この香りは誰のですか?まるで香水を振り掛けたように強い匂いがしますが」
シルフェ様の問いかけに、俺はハッとした。
「あ、あの……シルフェさま、この香りですか?」
俺はバスケットに手をのばし、手探りで取り出した小さな包み。
「こ、これの、匂い……です?」
シルフェ様の鼻先に包みを差し出すと、一瞬シルフェ様は怪訝そうな表情を浮かべた。
ふんふんと、シルフェ様の鼻が動き、眉間に皺が寄る。
「確かに、似た香りはします……が?これが何か?」
「シルフェ様に、香水を使わないとは聞いていました、が……俺が、シルフェ様を思いながら作ったのです……ごめんなさい……」
余計なことをしてしまったのだと後悔しながら、シルフェ様に差し出した箱を引き戻す。
似合うと思っていたし、喜んで貰えると思っていたからシルフェ様の反応に涙が込み上げた。
「待ってくださいルーカス、わかるように説明してください。これは?」
「香水……です。シルフェ様に似合うと思って作って貰いました」
俺は泣かないようにそっと俯いた。
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