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本編
D1 愛のない結婚
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二年前、エリィはマシューの妹と政略結婚した。
気心の知れたマシューと親戚になるのは喜ばしい事だが、彼の妹はいささか問題がある人物だった。
何しろ十代前半の、学園に入学したばかりの頃から男性との噂が絶えない。
いや噂ではなく、顔の良い男性に誘われるとすぐ肉体関係を持ってしまう事で、知らぬものはないというほど有名だったのだ。
もはや社交界の遊び人たちの間では、娼婦よりもたやすく抱けるご令嬢としてその名は知れ渡り、陰では「花売り令嬢」なんて口さがないあだ名で呼ばれたりもしたものだ。
堕胎だって何度も行っていて、健康面に悪影響が出ないか再三にわたってマシューから相談を受けた。
僕は身体操作魔法を得意とするため一般の人よりは医学知識がある方だけど、医師ではないのでちょっと答え難いと返事をしておいた。
正直、堕胎以前に度を越した荒淫が慢性頸管炎などの病気をひきおこし、そこから不妊に至ったり腫瘍に転じたりしかねないし、淋病や梅毒などの花柳病の危険だってあるのだが、この期に及んでそれを指摘してももう遅かろう。
むやみに友人を悲しませたくなかった僕は、はっきりとそのリスクを告げることができなかったのだ。
そんなパトリツァ嬢は、コンタビリタ家と家格が合うような高位貴族からはまともに相手にされず、一方でコンタビリタ家とのつながりが欲しいだけの下位貴族や裕福な平民との縁談は本人が鼻で笑って相手にしないと言う状況で、マシューもご両親も途方に暮れていた。
そこで婚約者のいなかったエリィに頼んで家格に合った結婚という体裁を整えて、コンタビリタ家の面目を何とか保とうとしたのだ。
今は教会派と王室派の派閥争いが厳しくて、うかつに家名を穢すような縁談を結べば、王室派そのものが勢いを失いかねない。
東西文化の十字路と言えば聞こえは良いが、地政学的に微妙な地域に存在する弱小国の一つである我がシュチパリアは、一歩間違って内乱に陥れば、諸大国の介入を招いて独立を失いかねない。それどころか、どこかに領土ごと飲み込まれ地図の上から永遠に消えてしまいかねないのだ。
そんな事態を防ぐためだけに、エリィとパトリツァ夫人の婚姻は結ばれた。
二人とも、互いに愛情など欠片もない結婚だった。
気心の知れたマシューと親戚になるのは喜ばしい事だが、彼の妹はいささか問題がある人物だった。
何しろ十代前半の、学園に入学したばかりの頃から男性との噂が絶えない。
いや噂ではなく、顔の良い男性に誘われるとすぐ肉体関係を持ってしまう事で、知らぬものはないというほど有名だったのだ。
もはや社交界の遊び人たちの間では、娼婦よりもたやすく抱けるご令嬢としてその名は知れ渡り、陰では「花売り令嬢」なんて口さがないあだ名で呼ばれたりもしたものだ。
堕胎だって何度も行っていて、健康面に悪影響が出ないか再三にわたってマシューから相談を受けた。
僕は身体操作魔法を得意とするため一般の人よりは医学知識がある方だけど、医師ではないのでちょっと答え難いと返事をしておいた。
正直、堕胎以前に度を越した荒淫が慢性頸管炎などの病気をひきおこし、そこから不妊に至ったり腫瘍に転じたりしかねないし、淋病や梅毒などの花柳病の危険だってあるのだが、この期に及んでそれを指摘してももう遅かろう。
むやみに友人を悲しませたくなかった僕は、はっきりとそのリスクを告げることができなかったのだ。
そんなパトリツァ嬢は、コンタビリタ家と家格が合うような高位貴族からはまともに相手にされず、一方でコンタビリタ家とのつながりが欲しいだけの下位貴族や裕福な平民との縁談は本人が鼻で笑って相手にしないと言う状況で、マシューもご両親も途方に暮れていた。
そこで婚約者のいなかったエリィに頼んで家格に合った結婚という体裁を整えて、コンタビリタ家の面目を何とか保とうとしたのだ。
今は教会派と王室派の派閥争いが厳しくて、うかつに家名を穢すような縁談を結べば、王室派そのものが勢いを失いかねない。
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そんな事態を防ぐためだけに、エリィとパトリツァ夫人の婚姻は結ばれた。
二人とも、互いに愛情など欠片もない結婚だった。
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