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本編
D17 再度の依頼
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このところ、毎朝トリオとの散歩の時にパトリツァ夫人がついてくるんだけど……ちょっとでもトリオが泣いたり粗相をすると癇癪を起こす上、僕のやることなすこと気に入らないらしくて厭味ったらしくぶつぶつ悪態をついているのが本当に鬱陶しい。
毎日暇を持て余している夫人とは違って、僕はこれから登庁して休む間もなく仕事なんだけど……自分の子供の世話をする気がないならないで、大人しく黙っててくれないかな?
この日も朝からげんなりしながら登庁すると、マリウス殿下から話したいことがあるからと呼び出しを受けた。エリィは抜きで、という事だからおそらくまた治癒魔法を使ってほしいと言う事だろう。
正直、この間大技を使ったばかりでまだ身体がきついのだけど……みんな気楽に頼んでくるから困る。
治癒魔法は僕自身の生命を代償に捧げなければ発動しないということは殿下も承知の上のはずなんだけどなぁ……
殿下は大事な友達だし、ぜひ側近にというお誘いを断って勝手をさせていただいてるからできるだけお役に立ちたいのは山々なんだけど……さすがにここまで立て続けになると、僕自身の生命がかなり危ない。
僕の技能なり持ち物なり、僕に何かを差し出せと言われる事自体はあまり気にしていない。大抵の場合、人々の欲しがるものは僕にとっては取るに足りないものばかりなので、与える事にいちいち躊躇したりはしない。
人の欲しがるものを与える事ができるということは、僕自身がそれを持っているということ。それを差し出せる程度には価値があるという事なのだ。
それは決して悪い気はしない。
でも、僕が差し出すことにみんな慣れてしまって、それが当たり前になってしまっている気がする。だから、言われるままにすぐ差し出さないと、まるで僕がものすごく強欲で、理不尽に出し惜しみをしているかのように責められるのが、ちょっとだけ辛い。
何かを持っている者は、その手の中が空っぽになってでも、常に差し出し続けなければならないのだろうか?受け取る側は手の中に丸ごと残るのに、差し出す側は最後の一欠片まで求められて何一つ手元に残すことは赦されないのは、ちょっと割に合わない気がする。
そうは思うのだけど、結局は僕がおとなしく差し出せば丸くおさまるものを、そうしない事で誰かが不利益を得るのだから、責められてしまうのも仕方がないのかもしれない。
少し捻くれた気分で殿下の元を訪れた僕に告げられたのは、予想通りのものと、予想外の……しかしよく考えれば当たり前の事だった。
ここはもう、腹を括るしかない。
帰宅して二人になると、すぐにエリィにマリウス殿下から難病の子供の治療依頼が来たことを話した。今回は血液の病気で苦しむ子供のために、血液と骨髄を全て再構築する。
「どうしても断れないのか? 時期が時期だし、どう考えてもあやしすぎる。だいたいついこの間だって無茶な願いを聞いてやったばかりだろう? どうしてお前がここまでしてやらなければならないんだ」
「そういう問題じゃないんだ。まだたったの五歳なんだよ。僕の術でなければ助からない。僕が術を使えば元の健康な身体に戻れる。トリオが同じ病気になったらエリィは同じことがいえるの?」
もしトリオが同じ病気になったら、僕は迷わず術を使う。その結果、自分が生命を失う事になっても構わない。後悔するのは嫌なんだ。
きっとその子の親御さんだって同じ気持ちだ。ただ、彼らがいくら生命を差し出したところで何も起こらない。
残念ながら治癒魔法を使える人間はごく限られていて、ここまでの術を使えるのはこのイリュリアでは僕一人だ。
「そんな事を言って……消費されるのはお前の生命だろう!?このままじゃ寿命を削り取られて死んでしまうんじゃないか? 前回倒れてからまだ1か月も経ってないんだぞ!?」
「大丈夫だから。僕を信じて」
正直、本当に大丈夫かは自信がないが、今から少しでもしっかり食事と休養を取って体力の回復につとめてむざむざと死んだりはしないようにするつもり。
「前回術を使ってからまだ全然回復していないじゃないか。今度こそお前の生命が失われるかもしれないんだぞ。お前に危険な真似はして欲しくない。本当は一回だってあんな奴らに協力させたくないんだ。頼むからわかってくれ!!」
彼が僕に対してこんなに強い声を出すのは珍しい。それだけ心配してくれているのだろう。最後の方はもう絞り出すような声で、彼の強い想いが痛いほど伝わって来た。
とても心苦しいのだけど、今回の依頼を断れなかったのは病気の子供を思っての事だけではない。
ごめんね、エリィには詳しく言えないけど、ほどほどに僕が弱った状態にならないと意味がないんだ。少し心配をかけるけど、必ず奴らを一網打尽にできるようにするから。
僕にできることをしないせいで、不幸な人を出してしまって、後から自分のせいだと思って寝覚めの悪い思いをするのは嫌なんだ。
だから、今回だけは僕のわがままを通させてくれ。
毎日暇を持て余している夫人とは違って、僕はこれから登庁して休む間もなく仕事なんだけど……自分の子供の世話をする気がないならないで、大人しく黙っててくれないかな?
この日も朝からげんなりしながら登庁すると、マリウス殿下から話したいことがあるからと呼び出しを受けた。エリィは抜きで、という事だからおそらくまた治癒魔法を使ってほしいと言う事だろう。
正直、この間大技を使ったばかりでまだ身体がきついのだけど……みんな気楽に頼んでくるから困る。
治癒魔法は僕自身の生命を代償に捧げなければ発動しないということは殿下も承知の上のはずなんだけどなぁ……
殿下は大事な友達だし、ぜひ側近にというお誘いを断って勝手をさせていただいてるからできるだけお役に立ちたいのは山々なんだけど……さすがにここまで立て続けになると、僕自身の生命がかなり危ない。
僕の技能なり持ち物なり、僕に何かを差し出せと言われる事自体はあまり気にしていない。大抵の場合、人々の欲しがるものは僕にとっては取るに足りないものばかりなので、与える事にいちいち躊躇したりはしない。
人の欲しがるものを与える事ができるということは、僕自身がそれを持っているということ。それを差し出せる程度には価値があるという事なのだ。
それは決して悪い気はしない。
でも、僕が差し出すことにみんな慣れてしまって、それが当たり前になってしまっている気がする。だから、言われるままにすぐ差し出さないと、まるで僕がものすごく強欲で、理不尽に出し惜しみをしているかのように責められるのが、ちょっとだけ辛い。
何かを持っている者は、その手の中が空っぽになってでも、常に差し出し続けなければならないのだろうか?受け取る側は手の中に丸ごと残るのに、差し出す側は最後の一欠片まで求められて何一つ手元に残すことは赦されないのは、ちょっと割に合わない気がする。
そうは思うのだけど、結局は僕がおとなしく差し出せば丸くおさまるものを、そうしない事で誰かが不利益を得るのだから、責められてしまうのも仕方がないのかもしれない。
少し捻くれた気分で殿下の元を訪れた僕に告げられたのは、予想通りのものと、予想外の……しかしよく考えれば当たり前の事だった。
ここはもう、腹を括るしかない。
帰宅して二人になると、すぐにエリィにマリウス殿下から難病の子供の治療依頼が来たことを話した。今回は血液の病気で苦しむ子供のために、血液と骨髄を全て再構築する。
「どうしても断れないのか? 時期が時期だし、どう考えてもあやしすぎる。だいたいついこの間だって無茶な願いを聞いてやったばかりだろう? どうしてお前がここまでしてやらなければならないんだ」
「そういう問題じゃないんだ。まだたったの五歳なんだよ。僕の術でなければ助からない。僕が術を使えば元の健康な身体に戻れる。トリオが同じ病気になったらエリィは同じことがいえるの?」
もしトリオが同じ病気になったら、僕は迷わず術を使う。その結果、自分が生命を失う事になっても構わない。後悔するのは嫌なんだ。
きっとその子の親御さんだって同じ気持ちだ。ただ、彼らがいくら生命を差し出したところで何も起こらない。
残念ながら治癒魔法を使える人間はごく限られていて、ここまでの術を使えるのはこのイリュリアでは僕一人だ。
「そんな事を言って……消費されるのはお前の生命だろう!?このままじゃ寿命を削り取られて死んでしまうんじゃないか? 前回倒れてからまだ1か月も経ってないんだぞ!?」
「大丈夫だから。僕を信じて」
正直、本当に大丈夫かは自信がないが、今から少しでもしっかり食事と休養を取って体力の回復につとめてむざむざと死んだりはしないようにするつもり。
「前回術を使ってからまだ全然回復していないじゃないか。今度こそお前の生命が失われるかもしれないんだぞ。お前に危険な真似はして欲しくない。本当は一回だってあんな奴らに協力させたくないんだ。頼むからわかってくれ!!」
彼が僕に対してこんなに強い声を出すのは珍しい。それだけ心配してくれているのだろう。最後の方はもう絞り出すような声で、彼の強い想いが痛いほど伝わって来た。
とても心苦しいのだけど、今回の依頼を断れなかったのは病気の子供を思っての事だけではない。
ごめんね、エリィには詳しく言えないけど、ほどほどに僕が弱った状態にならないと意味がないんだ。少し心配をかけるけど、必ず奴らを一網打尽にできるようにするから。
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だから、今回だけは僕のわがままを通させてくれ。
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