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祖母の姉だと思っていた人

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「お嬢様……オコちゃんはね、本当は私の妹じゃなくて、私が子供のころから奉公先でお世話していたお嬢様なの。
お嬢様はね、2歳になったばかりの時に実のお父様が満州鉄道の職員として大陸に行くことになったんだけど、まだ赤ちゃんだったお嬢様を連れていくわけにいかなくって。
それで、子供がいなかった実のお母様の姉夫婦が養子に迎えることになったのよ。
その時に子守として住み込みで働くことになったのが私」

「え?
おばあちゃん、そんなお嬢様育ちだったの?
おばあちゃんが2歳ってことはおばちゃんもまだ10歳くらいだよね?」

「そうだね。
あの時代はそのくらいの年齢で住み込みで奉公に出る事が珍しくなかったから。
それに旦那様は誰に対しても礼儀正しくて、私たち使用人にも気を配って下さったから、実家にいるよりずっと暮らしやすかったくらいだよ。
学校にも行けたし勉強や作法もちゃんと教えてもらえたしね」

「なんか昔のドラマとか映画みたいだね」

「さほど貧乏人でなくても、行儀見習いもかねて奉公に出るのが珍しくない時代だったからね。
今では考えられないだろうけど。
それで、一緒に暮らし始めたんだけど……満州で戦争が激化して、本当のご両親が亡くなってね。
旦那様が実の両親や兄たちをみんな亡くしてしまったお嬢様がかわいそうだっておっしゃって、私に子守としてではなく、姉として接するようにおっしゃったんだ。
それから私はお嬢様のことをオコちゃんと呼ぶようになったし、お嬢様もずっとハルねえさんって呼んでるから。
戸籍を見なければ、付き合いの多い親戚でも本当の姉妹だと思っていたみたいだよ」

「私も本当におばあちゃんの姉だと思ってた」

「そのうち本土でも空襲が起きるようになって沢山人が死んでね。
それで、私の本当の両親や兄弟たちも亡くなったんだ。
生き延びたのは住み込みで奉公に出ていた妹と私だけ。
それ以来、ますます旦那様は私の事を奉公人ではなく家族として扱う事になさったんだよ」

「ごめん、なんか朝ドラみたいな話で頭がついていかないや」

「今とは世の中が全然違ったからね。
別の世界にいるようなもんだよ」

 確かに10歳になるやならずで家を離れて奉公に出たり、家族同然の使用人がいたり……まるでアニメか小説みたいだ。
ごく普通の家庭で育った美緒には想像がつかない。
一緒に暮らす分には「おばあちゃんのおねえさん」という認識で全く何の問題もなく、疑問を抱く機会すらなかったのだ。
見知らぬ他人が押しかけてきて「赤の他人は出ていけ」と騒ぐまでは。
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みんなの感想(2件)

麟華
2021.07.01 麟華

ありがとうございます。助かります。

おばあちゃん、しっかりと手続き取ってそうな気がするの😁
こんな欲の皮が突っ張った奴らに負けないで✊

歌川ピロシキ
2021.07.01 歌川ピロシキ

たびたび感想ありがとうございます((ヾ(≧∇≦)〃))

家系図、ちょっと待ってくださいね<(_ _)>
特におばちゃんの親戚が戦争でほとんど亡くなってて私もあやふやだったりするので(汗

ネタバレになりますが、法的な手続きはしっかり取りましたので、今はおばちゃんが存命の間はあいつらに財産を勝手に使われる心配がなくなりました((ヾ(≧∇≦)〃))
今言える事は、介護のために同居する時は必ず住民票を移して介護対象と同じ世帯にしておくべし、という事ですね。
それをやってあると、自治体がかなり力になってくれるという事を実感しました。

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麟華
2021.07.01 麟華

すみません😣💦⤵️家系図お願いします。

歌川ピロシキ
2021.07.01 歌川ピロシキ

コメントありがとうございますm(_ _)m
家系図…とりあえず画像を作ってアップすればよろしいでしょうか…
頑張って試してみます

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