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第一章 後宮の出会い
優雅にはなれない
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香 麗然は起き上がり、埃をはたく。そして手櫛でさっと髪を整えた。風呂敷を背負い直し、嘆息する。
(じっちゃんの言ってたとおりだ。後宮は、薄汚い。相手が妃だろうと、容赦なく欲望の贄になる)
門にいる兵たちが彼女たちに気をとられている隙に、少し離れたところへと向かった。そこには後宮を囲う壁がある。無限に続くような錯覚すら生まれるほどに広く、そして横に長い壁だ。
風呂敷を床に降ろす。そして中身を開き、紫藤の簪を取り出した。手に取るやいなや、髪を一纏めにして頭に刺す。
風呂敷を背負い直し、キョロキョロとしはじめた。
「……あっ、あの木なんかちょうどいいかも」
門兵たちと話していたときのような訛りは一切ない。
壁によりかかるほどの葉っぱを持つ木を見つけ、枝を軽々と登っていった。枝から枝へと飛び移る様は、まるで猿のようだ。
『ちょっとぉー。教えたとおりに、優雅に行きなさいよね?』
塀の屋根瓦に到着したとき、どこからともなく声が聞こえてきた。とても野太い声で、渋みがある。
「えー? だって、正面からだと無理なんだもの。それに……」
香 麗然は謎の声に対してまったく狼狽えない。むしろ慣れた様子だ。周囲を見渡すこともなく、平然としながら謎の声と語り合う。
カコカコと、瓦の上を歩くたびに鳴る微かな音に気を配りながら、身を低くして進んだ。
『……それに、何?』
「さっきの妃から、香死の匂いがしたの」
『……っ!?』
謎の声は押し黙る。香 麗然の言葉を聞いた瞬間からおとなしくなり、うんともすんとも答えなくなった。
香 麗然は足をとめて、どうしたのと小首を傾げる。
『……………』
謎の声はこれ以上言葉を発することがなかった。
香 麗然は肩をすくませ、歩みを再開させる。やがて、後宮の庭が見える場所にたどり着いた。そこは広い園がある。
園路は欄干という朱い鉄格子の道を中心に、園のあちこちに伸びていた。立派な鯉が泳ぐ蓮池、朱の柱と入母造りの屋根の東屋。そして本館へと続く道や、石峰もある。
他にもたくさんの場所へと繋がっているようで「ほへー」と、ほうけてしまった。
それでも屋根の上を進んでいく。瞬間──
(じっちゃんの言ってたとおりだ。後宮は、薄汚い。相手が妃だろうと、容赦なく欲望の贄になる)
門にいる兵たちが彼女たちに気をとられている隙に、少し離れたところへと向かった。そこには後宮を囲う壁がある。無限に続くような錯覚すら生まれるほどに広く、そして横に長い壁だ。
風呂敷を床に降ろす。そして中身を開き、紫藤の簪を取り出した。手に取るやいなや、髪を一纏めにして頭に刺す。
風呂敷を背負い直し、キョロキョロとしはじめた。
「……あっ、あの木なんかちょうどいいかも」
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壁によりかかるほどの葉っぱを持つ木を見つけ、枝を軽々と登っていった。枝から枝へと飛び移る様は、まるで猿のようだ。
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カコカコと、瓦の上を歩くたびに鳴る微かな音に気を配りながら、身を低くして進んだ。
『……それに、何?』
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『……っ!?』
謎の声は押し黙る。香 麗然の言葉を聞いた瞬間からおとなしくなり、うんともすんとも答えなくなった。
香 麗然は足をとめて、どうしたのと小首を傾げる。
『……………』
謎の声はこれ以上言葉を発することがなかった。
香 麗然は肩をすくませ、歩みを再開させる。やがて、後宮の庭が見える場所にたどり着いた。そこは広い園がある。
園路は欄干という朱い鉄格子の道を中心に、園のあちこちに伸びていた。立派な鯉が泳ぐ蓮池、朱の柱と入母造りの屋根の東屋。そして本館へと続く道や、石峰もある。
他にもたくさんの場所へと繋がっているようで「ほへー」と、ほうけてしまった。
それでも屋根の上を進んでいく。瞬間──
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