香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)

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御子の父

楊鈴《ヤンリン》

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 白のみやにて、楊周ヤンヂョウ妃の御子を預かることとなった。それは花嫁修行でもあり、後宮を出たときに必要な知識や常識を身につけるため。
 そのことを伝えられた楊鈴ヤンリンは、実の母に宮を追い出されたのだと思ってしまった。ていのいい厄介やっかい払い。

「……母上は、私のことなんてどうでもいいんだ。心配事を持ちこんでくる私を捨てたいんだ!」

 自身が問題児だということは自覚していた。それでも、ここまであからさまに追い出されるとは思っていなかった。
 
 ズカズカと、女性らしからぬ品のないがに股で白の庭を歩く。
 たくさんいる猫たちに囲まれながら、ふわふわな毛並みに触れては口を尖らせた。



「──そう思うのなら、直接聞いてみたら?」

「……っ!?」

 楊鈴ヤンリンの独りがりな言葉に、香 麗然コウ レイランはついつい口を出したくなってしまう。妃としてというよりも、女性として。楊鈴ヤンリンの女性らしからぬ大股な動き、そして姿勢に着目した。
 キッと睨みつけてくる楊鈴ヤンリンを、香 麗然コウ レイランはへらりと笑いながら受け流す。

「別に私を睨むのは勝手だけど……あなた、忘れてない?」

「はあ!? 何をだ!?」

「……え? まだ、わからないの? 私は……」 

 上級妃。そう言おうとした矢先……
 曹朱ツァオジュが表立った。香 麗然コウ レイランを背に隠し、腰にある剣を抜く。冷めた眼差しで楊鈴ヤンリンを見下ろし、剣の切っ先を向けた。

「貴殿が楊周ヤンヂョウ妃様の御子だったとしても、今は、ただの侍女にすぎぬ。そのような者が上級妃の香死妃かしひに、めた口を聞いてよいと? そう、思っているのか?」

 容赦とい言葉を知らないような、鋭い目つきだ。凍てつき、誰もが怯える。そんな冷酷な眼差しをしている。

 仲裁ちゅうさいされた香 麗然コウ レイランはこめかみを押さえた。苦笑いしながら「だから言ったのに」と、楊鈴ヤンリンに哀れみの視線を放つ。

 楊鈴ヤンリンはガタガタと震え、今にも泣きそうな表情になっていた。

 (……はあー。何で曹朱ツァオジュは私が何かされたりすると、こんなに怒るのかしら?)

 謎だわと、彼の真意を心の中で問う。けれどこのままでは話が進まないとわかっていたので、曹朱ツァオジュに剣を収めるように言った。
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