香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫

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雪原の狼

玄武の分身

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 しばらく飛んで、庭にある池の前に降りた。

玄武げんぶの分身が、人の中に紛れこんでいるはずよ。それを探しなさいな。あんたなら、匂いでわかるはずだし』

「分身? ……その言い方だと、人間に化けているってこと?」

『さあ? どう捉えるかは、あんたたち次第。あたしたちはすべてを知っているけれど、全部は教えない』

 いつの間にか【やきとり】の隣に、【もち】が並んでいる。【もち】は人の言葉を喋ることなく「ジュリリ」と、かわいらしく眼をパチクリしていた。お互いに小さな身体をりつけながら、仲良く微笑んでいる。
 【やきとり】は香 麗然コウ レイランに視線を走らせ、コホンッと咳払いをした。

『まあ、あたしも鬼じゃないわ。手がかりが何もないままじゃ、動けないものね。だから一つだけ』

 パタパタ。翼をゆっくりと羽ばたかせる。

『玄武は人が大好きなの。だけど、かなりの恥ずかしがり屋でね。人の中に潜りこんだはいいけど、自分から名乗ることはしないわ』

「……え? 何、それ」

 人が好きなのに話すことが苦手というのか。矛盾があるようで、どこがおかしいのか。いまいち、わからなかった。
 それでも【雪狼山せつろうざん】への道のためには、玄武の分身の力を借りる必要がある。例え相手が恥ずかしがり屋だったとしても、いやおうでも手伝ってもらうしかなかった。
 香 麗然コウ レイラン脱力だつりょくしながら、盛大なため息をつく。

「しょうがない、か。でも、この広いくにの中を、たったそれだけの手懸かりで探すのは至難しなんの技よね?」

『何、言ってんの? 玄武の分身は、この後宮の中にいるわよ?』

「えっ!? 本当!?」
 
 【やきとり】は彼女の驚きを無視して、少しずつ宙に浮いていった。やがて、手すら届かない高い位置にまで登ってしまう。

『嘘なんかつかないわよ。あ、そうそう。もう一つ、いいこと教えてあげるわ。玄武はね、音楽が大好きなの。じゃあねー!』

 軽口を叩たたいたまま、二匹はどこかへと飛び去っていった。


 香 麗然コウ レイランは二匹の小さな身体が見えなくなるまで空を眺める。きびすを返し、一緒にいる金明ジンミン曹朱ツァオジュにへらりとした笑いを送った。

「どうしよっか?」

「音楽……もしやそれ、元宵祭げんしょうさいのことを言っているのか?」 

「……?」
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