香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)

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第三章 雪山へ

二人目の侍女 

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 香 麗然コウ レイランのそばにいる、目を布で隠した女性。彼女は何者なのか。楊周ヤンヂョウ妃に尋ねられた。

「この人は、緑の宮の楽士ですよ?」

「え!? 緑の宮って……」

 楊周ヤンヂョウ妃の驚きはもっともだった。
 緑の宮は香 麗然コウ レイランと同じ、四夫人の一角になっている。けれど宮も違えば、皇后の座を狙う妃の一人でもあった。
 緑の妃がどのような人物かは、ほどんどの人はしらない。同じ妃の楊周ヤンヂョウ妃ですら、人柄などを存じてはいなかった。 
 そういったことを抜きにしても違う宮の者を迎え入れるなど、無謀むぼうではないだろうか。
 楊周ヤンヂョウ妃は瞳を細めて忠告した。

「あー。その心配はいりませんよ? 緑の宮の侍女たちから、どこかへ連れてってくれるだけありがたい! なんて、お礼を言われたぐらいですから」
 
 楽士は緑の宮で冷遇れいぐうされていたのだろう。必要ないとすら言われ、厄介者払いできて嬉しいとまで言われてしまった。
 そのことに香 麗然コウ レイランは一瞬だけ、緑の宮の侍女たちに憎悪ぞうおを覚える。けれどそれならばと、侍女として働いてもらうことにした。

 香 麗然コウ レイランは笑顔で、嬉しさを隠さずに語る。

「あ、ただ、一つだけ。これは極秘ごくひなんですけどね?」

 楊周ヤンヂョウ妃に耳を貸すように誘った。楊周ヤンヂョウ妃は小首を傾げながら、身を乗り出す。

「この楽士様、男なんですよ」

「え!?」

「侍女の格好、けっこう似合ってるって思いません?」

 香 麗然コウ レイラン悪戯いたずらをする子供のように無邪気に笑った。女装させたことへの罪悪感などないようで、悪巧みばかりを笑顔に乗せている。
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