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蜻蛉切
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「神業……まさか、ゴッズスキルのこと!」
ナイトさんの表情が変わり、同時に発せられた名称に私は青ざめる。
転生者が異世界より召喚される際、神に授けられるという人知を超えた唯一無二の力それがゴッズスキル。
その力こそ転生者を転生者たらしめる、この世界の人間との決定的な違いであり、転生者ではないといったナイトさんには存在しないはずのものである。
「盾ではこの技受け切れぬぞ?」
殺意と入り混じった魔力の波に、私は口元を手で押さえる。
気を抜けばすべての臓器が口からこぼれ落ちてしまいそう。
それほどの狂気……私たちの世界はこんなものに狙われているのかとおもうと……絶望すらこみあげてくる。
だが。
「試してみろ。そして貴様こそ目に焼き付けるといい。至高の騎士という存在をな」
ナイトさんは依然剣を抜くことはなく、盾を構えて相手を見据える。
「後悔するなよ」
「我が道に後悔はない……騎士だからな」
もはや、忠告も脅しも必要ないとの判断か、転生者は目を見開き。
スキルを発動する。
「我が魂は空へ落ちる……」
あふれ出た魔力が槍に集まっていき、まるで太陽のように煌々と赤く光る。
息をすることもつらい……あふれ出た魔力は、スキルの発動により熱を持ち、空気を吸うたびに喉がやけどをしてしまいそうなほどだ。
「鋭いな……」
ナイトさんの感想はシンプルであったが、しかしその表情からは笑みが消えている。
――――――――… - ……。-
やがて、魔力の収束は収まり……研ぎ澄まされ……一瞬の静寂が訪れる。
呼吸を忘れ、瞬きすらも許されない。
そんな短くも永遠にも感じる静寂の中。
「来い……」
短い合図を出したのはナイトさんであり。
「……っ」
応えるように転生者はその巨大な槍を構えたまま。
爆ぜる。
純粋なる突撃。
全身をばねにして飛び掛かる跳躍は、先ほどの打ち合いの一足をはるかに凌駕する一閃。
十メートルほどの距離を、一足にてゼロにしたその跳躍はまさに飛翔にも近く。
ナイトさんは一瞬で間合いへと踏み込まれる
「その程度か?」
いや……あえて踏み込ませた。
速度を込めた一撃ということは、盾の破壊ではなく……盾を躱し本体を貫くことを目的とした一撃。
ゆえに、盾で防ぐことは可能であるとナイトさんは判断したのだ。
だが。
「其は、自由にして不規則な軌跡……言ったはずだぞ、我が一撃、盾では防ぎきれぬと!」
「なに!?」
その槍は、盾を貫通し……ナイトさんの心臓を穿ち、貫く。
【蜻蛉】
「ナイトさん!」
圧倒していた。
実力も速度も力も、すべてを凌駕していたナイトさん。
しかし、ゴッズスキルを前には、その戦力差でさえも容易に無意味に帰す。
「これが……神業」
自分の死が間近に迫っていることすらも忘れ……私はその一撃にくぎ付けになる。
そして確信をする。
もはやこの世界に生き残る道などないということを。
だが。
「躱したか……この一撃すらも」
ナイトさんを貫いたはずの転生者からこぼれたのは、そんな悪態と呆れの入り混じった声であった。
「……え?」
その言葉に槍の穂先を私は見る……。
確かに、光る槍は依然輝いたまま……血液のようなものは一切付着していない。
「貫いたかと思ったか? 残念、お見通しだ」
みれば、ナイトさんの体を貫いたかと思った槍は、ナイトさんの脇腹をすり抜けていただけであり……その身に傷
をつけてはいなかった。
盾を貫かれた一瞬、ナイトさんは体をひねって一撃を回避したのだ。
「恐れ入ったよ、すり抜けた直後に躱せるとはどんな動体視力だ、おぬし」
転生者はそういうと、槍を振るい背後へと飛ぶ。
盾を貫通しているはずの槍であったが、まるで盾がないがごとくあっさりと盾から外れると……ナイトさんは苦笑を漏らして構えを解く。
見える盾には傷一つ、貫かれた形跡もない。
「え? あれ?」
「それが貴様のゴッズスキルか」
その言葉に私は首をかしげると、舌打ちを漏らし転生者は槍を再度構える。
「いかにも。槍使いは速度こそあれど、貴様ほどの騎士の盾を割るほどの破壊力はない……小生の神業の名は【鎧通し】いかなる防具呪具問わず、すべての守りをすり抜け小生の槍は敵を穿つ……よくぞ躱した」
「なに、当たらなければどうということはない」
「あぁ、だがその剣を抜かなければ……貴様は主を守るすべはない」
ぎろりとこちらをにらむ転生者、その眼光に射止められ私は足がすくむ。
「そのようだな……マスター。命の危険がある故、剣を抜くが構わんか?」
ナイトさんの言葉に私は無言で一つうなずくと、腰に下げた剣の柄に手を触れ。
一瞬で転生者の懐まで踏み込む。
「よくぞ抜かせた。約束通り教えてやろう、騎士こそ最強であることを」
めくれ上がる迷宮の床、そして、ナイトさんが放つ明確な殺意により、空気が尋常でないほどに震えあがる。
「はやっ……」
転生者の漏らす声など間に合うはずもなく。
槍の間合を完全にすり抜け、抜刀と同時に転生者の首に一閃を叩き込む。
その一撃は閃光……。
「がっ!?」
神速にて放たれた刃、首を落とさんと振るわれた一撃をかろうじて転生者は槍で受け止めたが。
その代償に……槍に亀裂がはいり、砕け散る。
「案外もろいんだな? ちゃんと強化してるのか?」
魔力の痕跡もスキルの発動もないただの強烈な一撃に……ゴッズスキルをまとった槍が打ち砕かれたのだ。
「ば、かなっ……」
壁に叩きつけられ、ずるりと崩れ落ちる転生者。
その首元に刃を突きつけ、ナイトさんは笑みをこぼす。
突きつけられた刃は帯電しているかのように黄金に輝き、翼のような形状の鍔の中央には赤い宝玉が埋め込まれている。
「この剣は……なぜおぬしが」
「これから死ぬやつが、知る必要もないだろう?」
「!……ふっ……言いおる」
皮肉を込めた笑みを浮かべてナイトさんはそう呟き、転生者にとどめを刺す。
「さらばだ……蜻蛉切」
蜻蛉切にはもはや回避をする動作は見られない。
だが。
「あぁ、また会おう。我等が理想よ」
にやりと蜻蛉切は嗤い。
【任務完了……山茶花はつぼみを開いた】
短い呪文を口にする。
同時に、ナイトさんを中心に、魔法陣のようなものが浮かび上がり。
部屋の中が光に包まれる。
「転移魔法……用意がいいな」
最後に聞いたのはそんな驚愕の声を漏らすナイトさんのつぶやきと。
【テレポーター……起動】
響き渡る無機質な女性の声であり……私の記憶は一度そこで途切れたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
「……やれやれ、どうやら命を拾ったようだ」
ナイト=サン、そしてその主と思われる少女と死体が消えた部屋の中で、蜻蛉切は一人息をつき立ち上がる。
「我が槍【蜻蛉切】がこうもあっさりか……我が師匠ながらとんでもないものを呼び寄せたものだ。まぁしかし、ここまでは予定通りだが……」
砕け折れた槍を拾い上げ、蜻蛉切はため息を漏らしてそう呟き、己の記憶が見たものが間違いではなかったことを思い出す。
それは、計画にはない不純物……しかし不純物にしてはあまりにも強大な武器。
「冠位剣グランド……」
間違いではないからこそ、転生者の表情は暗く……そして疑問が渦巻く。
ありえないものを見た……。
思い起こせば思い起こすほど、転生者の額にはぽたぽたと汗が滴っていく。
「あれは、ナイト=サンの物ではないはず」
疑問は迷宮に不気味に響き渡るが、迷宮はその謎かけには答えかねるといわんばかりに、不協和音を返すのみ。
「よからぬものを呼び寄せたか」
何かの訪れを予見するかのように、不協和音はやがて不気味な音となり迷宮中に響いた。
◆◆◆◆◆◆◆
ナイトさんの表情が変わり、同時に発せられた名称に私は青ざめる。
転生者が異世界より召喚される際、神に授けられるという人知を超えた唯一無二の力それがゴッズスキル。
その力こそ転生者を転生者たらしめる、この世界の人間との決定的な違いであり、転生者ではないといったナイトさんには存在しないはずのものである。
「盾ではこの技受け切れぬぞ?」
殺意と入り混じった魔力の波に、私は口元を手で押さえる。
気を抜けばすべての臓器が口からこぼれ落ちてしまいそう。
それほどの狂気……私たちの世界はこんなものに狙われているのかとおもうと……絶望すらこみあげてくる。
だが。
「試してみろ。そして貴様こそ目に焼き付けるといい。至高の騎士という存在をな」
ナイトさんは依然剣を抜くことはなく、盾を構えて相手を見据える。
「後悔するなよ」
「我が道に後悔はない……騎士だからな」
もはや、忠告も脅しも必要ないとの判断か、転生者は目を見開き。
スキルを発動する。
「我が魂は空へ落ちる……」
あふれ出た魔力が槍に集まっていき、まるで太陽のように煌々と赤く光る。
息をすることもつらい……あふれ出た魔力は、スキルの発動により熱を持ち、空気を吸うたびに喉がやけどをしてしまいそうなほどだ。
「鋭いな……」
ナイトさんの感想はシンプルであったが、しかしその表情からは笑みが消えている。
――――――――… - ……。-
やがて、魔力の収束は収まり……研ぎ澄まされ……一瞬の静寂が訪れる。
呼吸を忘れ、瞬きすらも許されない。
そんな短くも永遠にも感じる静寂の中。
「来い……」
短い合図を出したのはナイトさんであり。
「……っ」
応えるように転生者はその巨大な槍を構えたまま。
爆ぜる。
純粋なる突撃。
全身をばねにして飛び掛かる跳躍は、先ほどの打ち合いの一足をはるかに凌駕する一閃。
十メートルほどの距離を、一足にてゼロにしたその跳躍はまさに飛翔にも近く。
ナイトさんは一瞬で間合いへと踏み込まれる
「その程度か?」
いや……あえて踏み込ませた。
速度を込めた一撃ということは、盾の破壊ではなく……盾を躱し本体を貫くことを目的とした一撃。
ゆえに、盾で防ぐことは可能であるとナイトさんは判断したのだ。
だが。
「其は、自由にして不規則な軌跡……言ったはずだぞ、我が一撃、盾では防ぎきれぬと!」
「なに!?」
その槍は、盾を貫通し……ナイトさんの心臓を穿ち、貫く。
【蜻蛉】
「ナイトさん!」
圧倒していた。
実力も速度も力も、すべてを凌駕していたナイトさん。
しかし、ゴッズスキルを前には、その戦力差でさえも容易に無意味に帰す。
「これが……神業」
自分の死が間近に迫っていることすらも忘れ……私はその一撃にくぎ付けになる。
そして確信をする。
もはやこの世界に生き残る道などないということを。
だが。
「躱したか……この一撃すらも」
ナイトさんを貫いたはずの転生者からこぼれたのは、そんな悪態と呆れの入り混じった声であった。
「……え?」
その言葉に槍の穂先を私は見る……。
確かに、光る槍は依然輝いたまま……血液のようなものは一切付着していない。
「貫いたかと思ったか? 残念、お見通しだ」
みれば、ナイトさんの体を貫いたかと思った槍は、ナイトさんの脇腹をすり抜けていただけであり……その身に傷
をつけてはいなかった。
盾を貫かれた一瞬、ナイトさんは体をひねって一撃を回避したのだ。
「恐れ入ったよ、すり抜けた直後に躱せるとはどんな動体視力だ、おぬし」
転生者はそういうと、槍を振るい背後へと飛ぶ。
盾を貫通しているはずの槍であったが、まるで盾がないがごとくあっさりと盾から外れると……ナイトさんは苦笑を漏らして構えを解く。
見える盾には傷一つ、貫かれた形跡もない。
「え? あれ?」
「それが貴様のゴッズスキルか」
その言葉に私は首をかしげると、舌打ちを漏らし転生者は槍を再度構える。
「いかにも。槍使いは速度こそあれど、貴様ほどの騎士の盾を割るほどの破壊力はない……小生の神業の名は【鎧通し】いかなる防具呪具問わず、すべての守りをすり抜け小生の槍は敵を穿つ……よくぞ躱した」
「なに、当たらなければどうということはない」
「あぁ、だがその剣を抜かなければ……貴様は主を守るすべはない」
ぎろりとこちらをにらむ転生者、その眼光に射止められ私は足がすくむ。
「そのようだな……マスター。命の危険がある故、剣を抜くが構わんか?」
ナイトさんの言葉に私は無言で一つうなずくと、腰に下げた剣の柄に手を触れ。
一瞬で転生者の懐まで踏み込む。
「よくぞ抜かせた。約束通り教えてやろう、騎士こそ最強であることを」
めくれ上がる迷宮の床、そして、ナイトさんが放つ明確な殺意により、空気が尋常でないほどに震えあがる。
「はやっ……」
転生者の漏らす声など間に合うはずもなく。
槍の間合を完全にすり抜け、抜刀と同時に転生者の首に一閃を叩き込む。
その一撃は閃光……。
「がっ!?」
神速にて放たれた刃、首を落とさんと振るわれた一撃をかろうじて転生者は槍で受け止めたが。
その代償に……槍に亀裂がはいり、砕け散る。
「案外もろいんだな? ちゃんと強化してるのか?」
魔力の痕跡もスキルの発動もないただの強烈な一撃に……ゴッズスキルをまとった槍が打ち砕かれたのだ。
「ば、かなっ……」
壁に叩きつけられ、ずるりと崩れ落ちる転生者。
その首元に刃を突きつけ、ナイトさんは笑みをこぼす。
突きつけられた刃は帯電しているかのように黄金に輝き、翼のような形状の鍔の中央には赤い宝玉が埋め込まれている。
「この剣は……なぜおぬしが」
「これから死ぬやつが、知る必要もないだろう?」
「!……ふっ……言いおる」
皮肉を込めた笑みを浮かべてナイトさんはそう呟き、転生者にとどめを刺す。
「さらばだ……蜻蛉切」
蜻蛉切にはもはや回避をする動作は見られない。
だが。
「あぁ、また会おう。我等が理想よ」
にやりと蜻蛉切は嗤い。
【任務完了……山茶花はつぼみを開いた】
短い呪文を口にする。
同時に、ナイトさんを中心に、魔法陣のようなものが浮かび上がり。
部屋の中が光に包まれる。
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最後に聞いたのはそんな驚愕の声を漏らすナイトさんのつぶやきと。
【テレポーター……起動】
響き渡る無機質な女性の声であり……私の記憶は一度そこで途切れたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
「……やれやれ、どうやら命を拾ったようだ」
ナイト=サン、そしてその主と思われる少女と死体が消えた部屋の中で、蜻蛉切は一人息をつき立ち上がる。
「我が槍【蜻蛉切】がこうもあっさりか……我が師匠ながらとんでもないものを呼び寄せたものだ。まぁしかし、ここまでは予定通りだが……」
砕け折れた槍を拾い上げ、蜻蛉切はため息を漏らしてそう呟き、己の記憶が見たものが間違いではなかったことを思い出す。
それは、計画にはない不純物……しかし不純物にしてはあまりにも強大な武器。
「冠位剣グランド……」
間違いではないからこそ、転生者の表情は暗く……そして疑問が渦巻く。
ありえないものを見た……。
思い起こせば思い起こすほど、転生者の額にはぽたぽたと汗が滴っていく。
「あれは、ナイト=サンの物ではないはず」
疑問は迷宮に不気味に響き渡るが、迷宮はその謎かけには答えかねるといわんばかりに、不協和音を返すのみ。
「よからぬものを呼び寄せたか」
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