至高の騎士、動きます〜転生者がこの世界をゲームと勘違いして荒らしてるので、最強騎士が分からせる〜

nagamiyuuichi

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アッガス合流

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「俺が寝てる間にそんなことがあったとはなぁ……」

 ぼりぼりと少し伸びた顎髭をうっとうしそうに掻きながら、妖精の森、エルフの里の奥をアッガスさんはのそりのそりと先導をするように歩いていく。

 森を歩くその姿は熊そのもので、生い茂る木々を剣ではなく腕で引きちぎり進んでいく様は、つい二時間ほど前ま
でベッドの上に横たわっていた人間とは到底思えない。

「すみません……病み上がりだというのに……」 

「なに、ナイトにもらったエリクサーのおかげで、ぴんぴんしてやがるぜ! 今ならドラゴンの一匹二匹はぶった切れそうだ!」

 快活に笑うアッガスさん。

 その様子を見る限り、怪我は本当に全快しているようで、休むことなくバリバリと邪魔になる枝を引きちぎっていく。

「どうやら襲撃者は痕跡を隠すつもりもなかったみたいだね。無理やりに道を作った形跡が一直線に続いてる……」

 木々でできた厚い壁を貫くかのように作られた不自然な空洞。そして地面には巨大な車輪の跡。木々も、枝も、まるでその場所だけをごっそりと抜き取ったかのように作られたその不自然な通路は何を調べる必要もなく襲撃者のもとに続いていることを物語っている。

「どうだかな、一か月でこれだけ枝が伸びてんだ……三か月もあったらこんな小さな傷口なんて自然に閉じちまうだろうよ、それぐらいは見つからないって踏んでたのかもな」

 アッガスさんはそういうと、まだ若々しさの残る緑色の枝を掴み、引きちぎりながらそう呟き、さらに奥へと進んでいく。

【―――――!】

 森は、自らの体内にできた傷口を塞ごうと必死に枝を伸ばしているようだが、先を急ぐ私たちは無遠慮にその枝を引きちぎっては先へと進んでいる。

 森は身を揺らし、抗議するように木の実や葉を落としてくるが。

 イワンコフさんを迂回させただけ気を使ったと思ってほしいものだ。

「ほかの二人も、直してあげられたらよかったんですけれど」

「しゃーねーだろ、あのバカ二人はいまだにぴーこら花提灯垂らしてんだから。 無理に起こしてやってもよかっ
たが、そこのナイトがやめろっていうんだからな」

「当然だ。 ナイトは安眠を守るものであっても安眠を妨げるものであってはならない。それに、目が覚めないと
いうことは魂が体に定着をしていないということだ。無理に起こしても有益なことは何もない」

「薬を飲ませてもだめなのかい?」

「エリクサーは万能薬だが全能ではない。 治せるのは体の傷だけだ」

「そういう物なんですか……私たちから見たら、似たようなものなんですけれどもね」

「大違いだがよくあるミスでもある。往々にしてエリクサーなどの貴重な回復薬を大量に保有していると、気が付
くと肝心な蘇生アイテムがなくて困ることになる。貴重さ、レア度だけが重要なのではない。必要なものを必要な
だけ、その取捨選択が冒険では命運を分ける」

「ほう、騎士様の癖に随分と冒険者みたいなことを言うなアンタ」

「そうだな、俺の世界での騎士は、どちらかというと冒険者に近いだろう」

アッガスさんは関心示したようにほぅとうなずき、さらに枝を引きちぎると。

「あ、森を抜けるわ」

 案内されるがまま、私たちが到着をしたのは国境を越えた先にあるのは切り立った崖。

 そしてその眼下には草木のようにびっしりと大地に根付き、きらびやかに輝く水晶と、ごつごつした岩肌が支配する宝石の国。

 土と鉄……そして宝石、ドワーフの国である【ロットガルド】によくみられる水晶渓谷地帯である。

「この先、渓谷を降りた先の、鉱脈に採掘施設があって、そこにみんなつかまっているわ」
ミアちゃんは当時の様子を思い出し、少し体を震わせるが、私はそっと手をつないでその震えを収まらせる。

「鉱脈地帯には、ドワーフの反応はここからだと感じられない。ただ、ミアちゃんの言う通りナイトくんみたいなとんでもない魔力の嵐が谷の下から感じられるね。間違いない、この反応は転生者だろう。しかも、召喚されたあの転生者とは規模も質も全く違う何倍もの魔力嵐だ」

 局長の言葉に、ミアちゃんとアッガスさんは息をのむ。

「ナイトよぉ、俺を殺した転生者もなかなかでたらめな強さだったっが……本当に勝てんのか?」

 アッガスさんの戸惑うような、疑うような言葉に、もはや見慣れた得意げな笑みを浮かべ。

「無論だ。至高にして最強の騎士であるこの俺に敗北はない」

 ナイトさんは聞きなれた言葉で私たちに念を押す。

 自信満々。

 自らが敗北するイメージなど微塵もないといった様子のその言葉。

 だが、ミアちゃんもアッガスさんもその断言に不安そうに表情をゆがめて見つめあう。

「本当に、いい奴だし事実しか言ってないんだろうけど、君ってうさん臭いんだよねぇ、ナイトくん」

「なぜだ!?」

 局長の突っ込みに、ナイトさんは納得いかないといわんばかりに声を上げ、私はどんまいと心の中でナイトさんを
励ました。

【ふいー……回り道すると結構距離あるっすねえ。でも全力ダッシュで何とか合流できたっす】

 そんなやり取りをしていると、切り立った壁の下から声が響く。

 眼下を見下ろすと、迂回してきたイワンコフさんが崖を上ってきているのが見える。

 ドワーフの国境付近。
 
 ミアちゃん曰く、その生い茂る木々はドワーフ族からの侵攻を妨げる役目も担っているらしく。

 無駄な破壊は避けるようにとお願いされたため、イワンコフさんを迂回させたのだ。

 しかし、迂回しろとは言ったがまさか崖を這ってくるとは。

「竜というよりトカゲだな」

【ちょっ、竜生初めてのロッククライミングにしては頑張ったほうだと思うんですけど!ひどくないっすかご主人! こちとらあの狭い空間に千年も封印されてたんすよ! もっと労いの、労いの言葉をプリーズっす!】

「そ、そうですよね。 ごめんなさいイワンコフさん。見た目はあれとして、貴方のおかげでこの崖を迂回しないで降りられそうですよ! さすがは伝説のドラゴンさんです!」

【そうっすよそうなんすよ!! 流石マスターっす! さて、やる気も取り戻したところでみなさん俺っちに掴まってくださいっす】

 そういうとイワンコフさんは、ごつごつした自分の岩が伸びる背中でも、比較的捕まりやすそうな部分を差し出す
ように体を私たちに近づけ、私たちはその言葉に甘えて背中に掴まり崖を降りる。

 私たちを振り落とさないようにか、イワンコフさんはゆっくり慎重に崖を降りた。
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