至高の騎士、動きます〜転生者がこの世界をゲームと勘違いして荒らしてるので、最強騎士が分からせる〜

nagamiyuuichi

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崩落のアジト

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 その日、盗賊のアジトは崩落の時を向かえた。

 比喩ではなく、物理的に。

 ドワーフの国から奪い取った炭鉱を改造しアジトにしていた盗賊たちは、洞窟が崩れる可能性は一切視野に入れていない。

 なぜならドワーフが作った洞窟は崩れない……それが世界の常識だからだ。

 たとえ星が落ちようが何が起ころうが、絶妙なバランスに計算されつくした形状により、ドワーフ族は人間では成し遂げないほど強固な洞窟を掘る。
 
【Dig】 と呼ばれるその種族にしか与えられない特殊なスキルのおかげで作り上げられた炭鉱はまさに一つの芸術品でもあり、その安全性が約束されるからこそ、ドワーフたちは地上に国を作るのではなく、地下に国を作るのだ。

 しかし、その世界の常識は一瞬のうちに崩れ去った。
 
 音を立てて崩れ始める盗賊のアジト。

 洞窟自体に手を加えたことのない彼らにとっては【Dig】のスキルが完全なものではないという想像したこともない事実を前に、当然奥から崩壊をしていく洞窟に、悲鳴や絶叫をあげながら地上へと一目散に逃げだしていく。

 ドワーフ用に作られたためそこまで大きくない出入口。
 
 あるものは、仲間を踏みつけて、あるものは崩落に仲間を置き去りにして。

 悲鳴と絶叫を巻き上げながら盗賊たちは這う這うの体で地上へと逃げ出していき、一息をつく。

 だが。

「!!な、なんだあぁ!」

 誰かが響かせたその驚愕の声。
 
 その声と同時に響き渡る轟音。
 
 三つあった、ドワーフの国へとつながる水晶鉱脈の通路、その二つが音を立てて崩落を始めたのだ。

 しかも、洞窟が崩落したから落ちたのではない、どの水晶もまるで刃物か何かで切断されたかのような切断面を残して、入り口をふさぐように倒れた。
 
 ここにきて初めて……盗賊たちはこれが人為的に引き起こされたものなのだと悟り、息をのむ。

「ま、まさか悠久の風か!?」
 
 隣の国に存在するという、【最優】ともてはやされるS級クラン……悠久の風。
 
 中でもリーダーであるアッガスは、黒龍との死闘を繰り広げ、国を一つ救ったという伝説が残るほどの英雄であり、何をするにも豪快であることで有名なクランである。
彼らが恐れるクランの一つであり、そして、洞窟(こん)を(な)崩壊(こと)をする輩など、それぐらいしか思いつかず

【戦技・大鬼神斬!】

 
 怒声と共に十人ほどの仲間たちが宙を舞う姿を目撃し……その想像が正解であることを告げられる。
 
 大剣を構えた、丸太のような腕をもち威風堂々と盗賊たちの前に現れた男。
 
 アッガス・ガースフィールドはにやりと口元を吊り上げて、盗賊たちの前に現れる。

「おい、誰か骨のある奴ぁいねえのか?」
 
 挑発をするように剣を構えて迫りくるその鬼神……盗賊たちは反射的に剣や短刀を抜き迎撃の姿勢をとるが。

「ままごとしてんじゃねえんだぞ! こっちはよぉ!」

 斬り結ぶ……なんて夢のまた夢。
 
 横なぎに振られたその大剣は、小枝のように盗賊たちの剣をへし折っていき、同時に盗賊たちを吹き飛ばす。

「で、で……でたらめだ! 勝てるわけがねえ、逃げろ!」

 その光景、そのひと振りで勝負はついた。
 
 吹き飛ばされた盗賊は、アッガスの一番近くにいた八人だったが、その一振りだけで残りの百人以上は戦意を喪失し逃走を開始する。

 超一流の冒険者……盗賊のアジトをつぶした数は噂だけでも百を超えるアッガスから、足並みもつれた盗賊が逃走できる可能性はゼロに等しく、盗賊たちはそれも無駄な逃走であると分かりながらも、一つだけ残されたドワーフの国へと続く道へと疾駆をするが。
 
 しかしながらアッガスは追ってくる気配はない。

 なぜならそんな必要はないからだ。

【いらっしゃい】

 狭い通路に入った瞬間に響く地響き……。

 水晶鉱脈を破壊しながら目前の通路を塞ぐように現れたそれは……不気味な声をあげてこちらを向く。

「め……メタルドラゴン……」
 
 災厄の竜。

 伝説上では先代勇者の力をもってしても、封印することしかできなかったとされる……最高位の邪竜。

「な、なんでこんなところにぃぎぃ!?」
 
 疑問を浮かべる間もなく、盗賊の男が目の前で肉塊になる。


【悪いけど、ご主人に命令されているっす!】
 

 響き渡る咆哮に、抜け道など存在しないほどの巨躯。
 
 迫りくるその絶望の鋼塊に……盗賊たちの運命は決定したのであった。

【鉄頭鉄尾……鉄拳制裁タイムだ!】
                   ■ 
 
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