至高の騎士、動きます〜転生者がこの世界をゲームと勘違いして荒らしてるので、最強騎士が分からせる〜

nagamiyuuichi

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平穏

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【冒険者都市アルムハーン・中央通り】

 キングフェンリルの襲撃から、四日が過ぎた昼下がり。

 私はナイトさんと二人でいつもの通りにぎわう冒険者の町、アルムハーンを歩く。

 キングフェンリルという名の強敵と戦ったにもかかわらず町の被害は皆無。勝利の余韻も三日を過ぎればさすが
になりを顰め、今ではいつもの日常が町に戻ってきた。

「町の被害はご存知の通り皆無。弓矢づくりにエルフの森の総面積の一割を失ってしまったけれども、何、命あっ
ての物種だ。森は長い時間をかければ蘇るからね」

「そんなお気楽なもんじゃないですよ局長。簡単に一割なんて言いましたけど、木の伐採のために、多くの人が森に立ち入りました……住処に立ち寄って一割も奪っていったんです。木は何年もたてばもとに戻るかもしれません
が、崩れてしまった生態系はすぐに元には戻らないんですよ?」

「それはそうだけど、そうしなければ僕たちが死んでいた。 住処の一割どころじゃない、すべてが奪われること
になっていたんだ」

「それは、そうですけど」

「もしかして自分たちの目的や欲望のために、弱いものから奪い取っている。自分たちも転生者たちと同じなんじ
ゃないかって、思ってる?」

「……すみません。転生者からこの国を守るべき騎士団が……変ですよね」

「謝ることでもないし変なことでもない。弱きを助け強きを挫く。騎士団の理想の在り方だけど、結局僕たちも弱
肉強食のカテゴリの中に生きているし、【王権】という物に縛られている限り、王が悪政を敷けばそれに加担をし
なければならなくなる。そんなジレンマは簡単に拭えるものじゃない。それに、食事一つを取ったって、結局僕た
ちだって広い目で見れば弱いものたちから住処も命も奪って繁栄をしていることには変わらない。 君の言う通り
森の動物たちからしたら、僕たちも転生者と同じなのかもしれない」

「局長も……そう思うんですか?」

「意外そうな顔だね。 僕だって君みたいに若い時があったんだ、そういった問題や矛盾に折り合いを一つずつ付
けて、目の下のクマを少しずつ濃くしていって、みんな大人になっていくのさ」

「目の下のクマは睡眠不足が原因です。ちゃんと寝てください」

「あ、はい。ごめんなさい」

「まったく……ですが。そしたらナイトさんの言う、私たちと転生者との違いというのは、一体何なんでしょう
か?」

 ナイトさんは、私たちをこの世界の主人公だといった。

 だけど、この世界に召喚された異世界の人間だってこの世界に来た時からここで自分の物語を綴っていることに
は変わりない。

 考えれば考えるほど、彼らと私たちの違いというものは曖昧だ。

 強大な力を己のために振るうことが悪ならば……いつしか、ナイトさんが私たちに剣を向ける時が来るのだろう
か?

 自らに剣を向けるナイトさんの姿に、私は背筋にうすら寒いものを感じるが。

「なんだ、そんなことを気にしていたのかサクヤ君は」

「むっ……何ですか、局長はわかるっていうんですか?」

 局長はそんな言葉をあっけらかんと言い放つ。

 まるで大人が問題が解けなくて悩んでいる子供に語り掛けるかのような言い草に私は少し心の中にむかりとした
ものが芽生えるが、答えの方が気になったため続きを促すと。

「そうだねぇ。 例えばだけどサクヤ君が言っていた通り、僕たちの今回の行動のせいで生態系は完全には元には
戻らないだろう。 だけど、だからと言って諦めて森を奪い続ければ、僕たちだって生活ができなくなってしまう
だろ? 僕たちは全員、自分の行動にそうやって責任を負うことになるし、少なからずそれをわかって生きている
はず」

「ええ……でもそれは転生者たちだって同じですよね? ナイトさんだって、おなかがすくと力が出ないって言っ
てましたし」

「そうだね、でもきっと彼らはそんな事意識すらしていないだろう……自分たちの思うように生き、気に入らない
ものは壊してしまうし、自分のためだけに全てを変えようとしてしまう。文字通り他人事だからさ」

「それは、私たちも同じなんじゃないんですか? 私たちだって、自分のためにいろんなものを犠牲にしていま
す」

「ああそうさ。だからねサクヤ君、本当はみんな同じなはずなんだよ。だけど転生者はそれがわかっていない。本
当は特別な人間なんていないはずなのに、自分だけが特別だと思い込んでいる」

「つまりは転生者と私たちには明確な違いはなくて……大事なのは心のありようということですか?」

「まぁ、大まかに言うとそんな感じだね……正確には、この世界の住人であることを実感できているかいないか、という言い方が正解かもしれない」

「実感できているかいないか?」

「そう、この世界に生まれて生きる僕たちは意識しなくても実感はしているけれど、違う世界から連れてこられた
転生者は違う」

「どこかで、この世界は自分たちの住む世界ではないと認識してしまうということですか?」

「そういうことさ。 だから彼らは自由に生きている。何にも縛られることなく好きかってね。だけど、自由には
本来責任というものが付いて回る。 だけど転生者には、その責任がないんだよ」

「この世界の住人じゃないから。いざとなれば、自分たちにはもう一つの世界がある」

「そういうこと、ナイト君とミコト君の言い草からして、それはまやかしだということらしいけど、けれどもそわ
かっていても。結局彼らにはこの世界で物語を綴る覚悟なんて無いのさ」

「難しいですね」

「まぁね。だけど僕たちはそんな彼らと渡り合っていける。今回のことはそれを十二分に教えてくれたよ。ナイト
君に、そしてアッガス君に感謝だね」

「ふふっそうですね」 

私は微笑み、中央通りを歩いていくと。

「かっかっかっ! 痒いっすううううううう!」

「おや、またイワンコフ君が叫んでるね」

「鱗の蠅変わりはすごい痒いんですって」

槍に貫かれ死亡したとばかり思っていたイワンコフさんであったが、さすがは先代勇者すらも貫くことのできなか
ったご自慢の鱗。

蜻蛉切さんの予想をはるかに上回る硬度の鱗は蜻蛉切さんの槍を受け切った。

しかし、無傷であったわけではなく、その鎧のような鱗は粉砕され今は生え変わっているところらしい。

 正直、かゆみで暴れるイワンコフさんが破壊する道路や、背中をこすりつけて壊れた城壁のほうが、キングフェ
ンリルの被害よりもはるかに大きい。

「掻いて、誰か背中掻いてほしいっす!」

「無茶言うなぁ……」

 苦笑を漏らし、イワンコフさんの悲鳴を聞きながら私たちは目的地へと歩を進めた。

                 ◇
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