実験体として勇者にされた僕 最強賢者の姉ちゃんに助けられて溺愛されたけど 過保護すぎるせいで全然強くなれません

nagamiyuuichi

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巨大オーガの襲来

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「魔法使いを集めろ‼︎ 上級魔法でも中級魔法でもなんでもいい‼︎ ありったけの火力を叩きつけるんだ‼︎ 奴を街に近づく前に仕留めろ‼︎」

 西門に到着をすると、一足先に到着をした上級冒険者が中心となって音頭をとり、迎撃の態勢を整えている真っ最中。

 冒険者と一口に言っても、僕たちのようなフリーランスの冒険者とは違い。
 街に常駐し自警団のような役割を担っている彼らは、金バッジ……Aランク冒険者の一団の指示に従い統率のとれた動きで隊列を形成していく。

「いつ見ても組体操みたいで楽しそうだねーユウ君。私たちも混ざらない?」

「はいはい、邪魔しないようこっちに移動するよ姉ちゃん」

 どこか抜けた感想を漏らす姉ちゃんの手を引き、邪魔にならない場所で状況を確認する。
 
 確かにまだ距離はあるものの街の西にある針葉樹林をなぎ倒しながら巨大な人型の魔物がこちらに迫ってきているのが見える。

「え、ちょっとまって? あれオーガだよね? でもあんなおっきなオーガ見たことないよ。 何食べたらあんなにおっきくなるんだろうね、ユウ君?」

「……さぁね」

「? どうしたのユウ君、さっきから反応が蛋白だけど……あ、わかった。 お姉ちゃんの下着姿見れなくて拗ねてるんだ」

「ちが……くないけど」

「うふふ……えっちなユウ君もかわいいねぇ」

「エッッ‼︎?……そ、それは今はどうでもいいだろ姉ちゃん‼︎ 今はあれをどうするのかを考えないと。あの巨体じゃ、街の防御壁ぐらい平気で破壊できちゃうよ?‼︎」

「んーそうだねぇ。 魔法が効くなら、前みたいにブラックホールで飲み込んじゃうんだけど」

 僕の言葉に姉ちゃんは魔物へと視線を移すと、人差し指を唇に当てながらちらりと隊列を組む冒険者たちに視線を移す。


「構え‼︎ ……………撃てええええ‼︎」

 先頭で指揮を取る冒険者の怒声とともに、隊列を組んだ魔法使いたちは先頭から順に魔法を放っていく。

【ブレイズバレッド‼︎】 

【ディザスターストーム‼︎】

【アイシクルカタストロフィー‼︎】

最前列の人間が魔法を放つと、ついで次の列、またその次の列と冒険者たちは上級、中級入り乱れた魔法を放ち。
 
魔法の発動を終えた魔法使いはすぐさま再度詠唱を開始し、最後の列が魔法を放ち終わるとすぐさま最前列の魔法使いが魔法を放つ。


「あーなるほどね。あぁすると攻撃の手を休めずに魔法攻撃ができるんだ……頭いい‼︎」

「でも……あんまり効いてないみたいだよ」

 確かに作戦としては良いものだったかもしれない。

 だが、次々と襲いかかる炎の塊や氷の槍といった上級魔法の直撃を受けながらも、巨大なオーガは減速する気配を見せずにこちらへと向かってくる。

「……あらら、遠距離とはいえど上級魔法の連打ではどうにもならないと……結構強めな魔法耐性があるみたいだねぇ。 あの大きさだと、ブラックホールでも撃ち漏らしちゃうかも」

 そんな様子を見ながら姉ちゃんは緊張感なくそう分析をする。

「いや、しれないね~じゃなくてどうするのさ‼︎? 姉ちゃんの魔法が効かないってなると、本当に手立てが……」

 ないじゃないか……という僕の言葉は悪戯っぽく微笑む姉ちゃんの人差し指により止められる。
 
姉ちゃんの指、柔らかい。

「慌てないでユウ君。 大丈夫、お姉ちゃんなら簡単に解決よ‼︎ ちょうどいい魔法を、この前覚えた所だから‼︎」

「お、覚えたって……そんな付け焼き刃で大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫……ちょっと勇者の剣借りるね」

「え?あぁうん」

 不安は残るが、とりあえず姉ちゃんに勇者の剣を預けると、姉ちゃんは勇者の剣を少し離れた場所に浮遊させ、魔力を練り上げて呪文を唱える。

『大地を統べる精霊よ、この地に眠る守護者の魂よ‼︎ 今ここに姿を現し迫り来る悪鬼に怒りの鉄槌をくだせ! 究極召喚!!』

 そう姉ちゃんは詠唱を終え天に手を伸ばす。

   と。

   どこからあらわれたのか、天井より巨大な岩が降り注ぎ。

「……ゑ?」

   勇者の剣を直撃した。

   直撃の瞬間、感情などあるはずのない勇者の剣から「なんでそうなるねん」という抗議の声が聞こえた気がする。

 気のせいであると思いたい。

「ちょおおおおぉっ‼︎? 姉ちゃん、勇者の剣が、今勇者の剣に岩がドカンって?‼︎ どこ狙ってんだよ‼︎?」

「大丈夫よユウ君、勇者の剣は絶対に折れない魔法の剣なんだよ?」
 
 そういって姉ちゃんは指差すと、確かに大岩は勇者の剣に次々と激突をしていくが、その中心に埋もれていく勇者の剣には傷一つ付いている様子は見受けられない。

「えと……じゃああれは一体。勇者の剣を中心に大岩をおしくらまんじゅうさせてどうするつもりなのさ?」

「簡単な話、魔法が効かない巨人が迫ってきているなら、もっとでかくて硬い巨人で対抗すればいいのよ‼︎」

「もっとデカくて硬いって……まさか姉ちゃん」

「そう‼︎ 勇者の剣という超強力な動力エンジンを核に、私の魔力を注ぎ込んだ最高級の決戦兵器‼︎とくと見よ‼︎ これぞお姉ちゃん特製、超弩級魔導兵器ギガンティックゴーレム‼︎ その名も怒りのだいまじん‼︎ 何に怒ってるのかは、知らないけれどね‼︎」

 知らないんかい。

 積み上げられた巨大な岩は、組み木のように積み上がり、連結し……やがて空にも届きそうなほど巨大な人型となる。
 その巨大さは、近くまで迫ったオーガの大きさをも上回るほどだ。
 
「で、でかっ‼︎? 街の外壁よりもでかいんだけど‼︎」

「当然‼︎ デカブツ相手にはデカブツをぶつける、それがロマ……ん? いやまって? やっぱり小さいゴーレムが頑張ってデカブツをやっつけた方がロマンがあるかも……ちょっと作り直して」

「このタイミングでディティールに拘るなよ‼︎? かっこいいから、大きいゴーレムの方がすごい格好いいから取り敢えず戦って姉ちゃん‼︎」

「本当? うーん、まぁユウ君が言うならきっとこれでいいんだね‼︎ よーし、それじゃあ早速戦うよー‼︎ さぁいけー、だいまじーーん‼︎」

『だいまじーーん‼︎』

 姉ちゃんの声にだいまじんは瞳を輝かせると、迫るゴーレムへと殴りかかる。

 その一撃はまるで暴風のようにあたりに突風を巻き起こし。

 オーガは腹部を殴りつけられ苦悶の表情を浮かべながら数歩後退する。


 どうでもいいが……デティール凝ってた割には声がいい加減だ。
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