ストーカーに遭遇した

漆黒之仔猫

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部屋にて

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 家にはカステラの切り落としくらいしか出せなかったことに少しだけ過去の自分を恨んだが、仕方がないと割り切ってお皿に載せてフォークと一緒に出す。加えて、電子レンジで牛乳を温めたのも出しておく。

「えっと、どうぞ」

 紅茶だったりのお茶なんかを切らしてなければと後悔したことなんて初めてだ。大丈夫だろうかと不安を抱くが、彼女の様子を見る感じでは大丈夫そうだった。

「勝手に外で待ってただけで、おもてなしして頂いてありがとうございます」

 なんだか喋りが固くなってることに少し笑ってしまう。

「そんな固くならなくても大丈夫ですよ」

 そう笑って返すが、視線が右に左にと忙しなく動いている。

「………」

「………」

「えっと、どうぞ食べて下さい」

 無言が部屋を支配するのを防ぐ為にそう言う。

「は、はい、頂きます」

 少し食べてから、そういえば名前を互いに知らないことに気付いた。

「そういえば名前聞いてなかったですね」

「あ、はい、そうですね」

「古田 優って言います。優って呼んでください」

「えっと、優くんね。私は、川嶋 望って言うの望でいいからね」

「わかりました、望さんですね」

 ぎこちない名前交換が終わる。

「一人暮らしなの?」

 会話が途切れないようにした質問だと感じた。

「そうですね、親に少しは一人暮らしの苦労を味わっとけって言われて」

「そうなんだ、でも偉いね」

 望さんの表情に少しドキリとしてしまう。それと同時に初めて女の人を部屋に招いたことを思い出し、さらにドキドキとしてしまう。
 だけど、平静をなんとか取り繕いながら接する。

「あ、ちょっとゴミついてるよ」

 望さんにそう言われて取ろうとすると

「私が取ってあげるよ」

 そう遮られて、彼女が僕のそばに近寄り、手が迫ってくる。
 傍にいるからか、甘い香りが漂ってきてさらにドキドキする。

「取れたよ?」

「あ、ありがとうございます。あ、ちょっとトイレ行ってきますね」

 僕は逃げるようにして、トイレへ駆け込んだ。


・・・
・・


 気持ちを少し落ち着けてからトイレを出た。
 望さんはまだ部屋におり、何を話せばいいのか分からなくなる。
 帰って貰えばいいのだろうか、それとも、ご飯を食べていきますかなんて言えばいいのだろうか。今日初めて会った人へは厚かましいかなど、頭の中で思考が右往左往してしまう。

「カステラと牛乳のお礼に今日の晩御飯は私が作ろうか?」

 僕は望さんの言葉に甘えてお願いした。
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