21 / 102
20
しおりを挟む
契約書の件から一週間。アリアナはいよいよ本格的に嫁ぐ準備をし始めた。
塩の販売権の移譲から式当日のドレスに至るまでベスと二人で抜けがないか確認していく。
「お嬢様、ドレスに合わせたブーケや、会場のお花もそろそろ頼みませんと。」
「あら本当ね。クレメント様の意見聞かないといけないわね」
その途端、ベスの顔がすっと真顔になり冷たい声で答えた。
「費用は全てゾーイ家でご負担されるのです。クレメント様のご意見など不要でございましょう。主導権はこちら。あくまであちらはこちらの言いなりになるしかないと言うことをしっかり認識させておくべきでは」
過激なベスの言葉に苦笑しながらアリアナは嗜めた。
「ベス。気持ちは嬉しいのだけどね。一応彼の本心を私が知ってることはまだ彼は知らないんだし。従順な妻が自分に断りもなく式の全てを決めた、ではまずいでしょう。」
ベスはしゅんとして謝った。
「申し訳ありません。つい、頭に血が上ってしまって」
「いいえ、私のことを思ってくれてありがとう。」
「ドレスや宝石はこちらで決めていいのですよね」
「ええ。ウェディングドレスとカラードレスね。カラードレスは真紅にしようと思ってるの」
「真紅ですか」
驚いたようにベスが尋ねてくる。
「確かに着用される方が多い色合いではございますが、お嬢様の髪色と重なってしまうので、違うお色の方が釣り合いが取れるかと思いますが」
「いいえ。宝石もルビーにするの」
「それでは全身が赤一色でございます。流石に周りの方からも奇異に映ってしまわれるかと。」
「そう。だからウェディングドレスは一般的なものにするし、1着目のカラードレスは常識的にネイビーに真珠を合わせるわよ。お色直し後の2着目で、赤い花嫁って言う印象を周りの方につけようと思って。」
「なぜわざわざそのような真似をなさるのです。」
「赤髪の花嫁を娶らざる得ない公爵家と印象付けるためね。自分の髪色が相手に恥をかかすなんて悔しくもあるけれど、彼への意趣返しの始まりよ。利用できるものはなんでもするわよ」
「でも…」
「家族もあなたも、私の髪色を貶したりしないもの。私はこの髪に誇りを持ってる。でも、クレメント様はできるだけ髪が目立たないようにして欲しいと思ってるはずよ?それなら思いっきり印象付けてあげないと。私が従順であると信じてるからドレスの色までは確認しないでしょう。そのドレスが私からクレメント様への反撃の始まりよ」
にこりと笑ったアリアナにベスは引き攣った顔で頷いた。
塩の販売権の移譲から式当日のドレスに至るまでベスと二人で抜けがないか確認していく。
「お嬢様、ドレスに合わせたブーケや、会場のお花もそろそろ頼みませんと。」
「あら本当ね。クレメント様の意見聞かないといけないわね」
その途端、ベスの顔がすっと真顔になり冷たい声で答えた。
「費用は全てゾーイ家でご負担されるのです。クレメント様のご意見など不要でございましょう。主導権はこちら。あくまであちらはこちらの言いなりになるしかないと言うことをしっかり認識させておくべきでは」
過激なベスの言葉に苦笑しながらアリアナは嗜めた。
「ベス。気持ちは嬉しいのだけどね。一応彼の本心を私が知ってることはまだ彼は知らないんだし。従順な妻が自分に断りもなく式の全てを決めた、ではまずいでしょう。」
ベスはしゅんとして謝った。
「申し訳ありません。つい、頭に血が上ってしまって」
「いいえ、私のことを思ってくれてありがとう。」
「ドレスや宝石はこちらで決めていいのですよね」
「ええ。ウェディングドレスとカラードレスね。カラードレスは真紅にしようと思ってるの」
「真紅ですか」
驚いたようにベスが尋ねてくる。
「確かに着用される方が多い色合いではございますが、お嬢様の髪色と重なってしまうので、違うお色の方が釣り合いが取れるかと思いますが」
「いいえ。宝石もルビーにするの」
「それでは全身が赤一色でございます。流石に周りの方からも奇異に映ってしまわれるかと。」
「そう。だからウェディングドレスは一般的なものにするし、1着目のカラードレスは常識的にネイビーに真珠を合わせるわよ。お色直し後の2着目で、赤い花嫁って言う印象を周りの方につけようと思って。」
「なぜわざわざそのような真似をなさるのです。」
「赤髪の花嫁を娶らざる得ない公爵家と印象付けるためね。自分の髪色が相手に恥をかかすなんて悔しくもあるけれど、彼への意趣返しの始まりよ。利用できるものはなんでもするわよ」
「でも…」
「家族もあなたも、私の髪色を貶したりしないもの。私はこの髪に誇りを持ってる。でも、クレメント様はできるだけ髪が目立たないようにして欲しいと思ってるはずよ?それなら思いっきり印象付けてあげないと。私が従順であると信じてるからドレスの色までは確認しないでしょう。そのドレスが私からクレメント様への反撃の始まりよ」
にこりと笑ったアリアナにベスは引き攣った顔で頷いた。
6
あなたにおすすめの小説
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
【完結】冷遇された私が皇后になれたわけ~もう貴方達には尽くしません~
なか
恋愛
「ごめん、待たせた」
––––死んだと聞いていた彼が、私にそう告げる。
その日を境に、私の人生は変わった。
私を虐げていた人達が消えて……彼が新たな道を示してくれたから。
◇◇◇
イベルトス伯爵家令嬢であるラシェルは、六歳の頃に光の魔力を持つ事が発覚した。
帝国の皇帝はいずれ彼女に皇族の子供を産ませるために、婚約者を決める。
相手は九つも歳の離れた皇子––クロヴィス。
彼はラシェルが家族に虐げられている事実を知り、匿うために傍に置く事を受け入れた。
だが彼自身も皇帝の御子でありながら、冷遇に近い扱いを受けていたのだ。
孤独同士の二人は、互いに支え合って月日を過ごす。
しかし、ラシェルが十歳の頃にクロヴィスは隣国との戦争を止めるため、皇子の立場でありながら戦へ向かう。
「必ず帰ってくる」と言っていたが。
それから五年……彼は帰ってこなかった。
クロヴィスが居ない五年の月日、ラシェルは虐げられていた。
待ち続け、耐えていた彼女の元に……死んだはずの彼が現れるまで––
◇◇◇◇
4話からお話が好転していきます!
設定ゆるめです。
読んでくださると、嬉しいです。
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる