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言うや否や、先ほど出て行ったばかりのケイビスを追いかけてユージンは部屋から飛び出した。
「え?」
訳が分からないままのアリアナにベスは溜め息を吐いた。
「ユージン様なりの気遣いです。ケイビス様の倫理観では現状、あれ以上は無理でしょうし。まあ、それはアリアナ様も同じだとは思いますが」
「…」
「離縁したからと言ってすぐに元義姉と恋仲になれる倫理観はお持ちではないかと。まあ、あんな告白した時点で、ほとんど…いえ、なんでもありません。」
「…」
「それで、ケイビス様にアリアナ様は出戻った実家で弟とその婚約者に冷遇されている、と伝えるわけです。」
「そんな…あなた達がそんなことする訳ないってご存知だわ。いいえ、もし万が一信じてしまわれたら、あなた達に不利益が…」
「ケイビス様はそれほど愚かな方ではありませんよ。それはアリアナ様が一番ご存じのはずです」
「でも…」
「必要なのは、アリアナ様に求婚できる大義名分です。例え嘘だと分かっていても、姉が家にいると婚約者の気が休まらない、姉に早く家を出て行って欲しい、などとユージン様が仰れば、ケイビス様は堂々と求婚できます。」
「そんなまさか…」
アリアナが冗談でしょう、と笑おうとした瞬間、部屋がノックされる。
「どうぞ」
恐る恐る答えると、なぜか左頬を抑えたユージンと、バツの悪そうなケイビスが現れた。
「あの…クレメントは先に帰らせております」
下を向いたまま、何故か開口一番クレメントの所在を告げたケイビスにアリアナは呆気に取られたまま返事をする。
「はい…あの、ケイビス様?」
「アリアナ様…あの…もしよろしければ、ハンゼ公爵家にいらっしゃいませんか」
決死の覚悟と言った様子でケイビスがアリアナに言った。
「それは…」
「ケイビス様、その言葉で済ませるおつもりではありませんよね」
アリアナが言葉に詰まるのと同時に、ユージンが恨みがましい様子でケイビスを見つめながら詰問した。
「え?」
ユージンの常にない強い口調にアリアナが驚いていると、ユージンが溜め息をつきながら言った。
「ケイビス様はよほど姉さんのことが心配みたいですね」
「…」
「僕はケイビス様を買い被りすぎたみたいです。姉さんもケイビス様は頭の切れる方だと言っていましたし…僕が姉さんのことを実家に居られるのは邪魔だ、と言ったら求婚の大義名分を与えられたと判断されるくらいには頭の良い方だと思っていました。」
炸裂するユージンの嫌味にケイビスはどんどん俯いていく。
「本当にすまない」
居た堪れなさそうに謝るケイビスを横目にユージンは不敵な笑みを浮かべて続けた。
「まさか、僕の言葉を本気にとった挙句、一発お見舞いされるとは思いませんでした。」
「…」
「なんでしたっけ?大切な姉君が傷ついているのに、労わってやることもできないのか。それなら私が彼女を連れて行く、でしたっけ」
「まあ!素敵ですねぇ」
ベスの言葉がとどめとなったようで、ケイビスはがっくりと頭を落とした。耐えるように下を向いている姿が妙に愛おしく思えて、アリアナはそっとケイビスに近づくと手を取った。
「連れて行ってくださるのですか?」
「え?」
訳が分からないままのアリアナにベスは溜め息を吐いた。
「ユージン様なりの気遣いです。ケイビス様の倫理観では現状、あれ以上は無理でしょうし。まあ、それはアリアナ様も同じだとは思いますが」
「…」
「離縁したからと言ってすぐに元義姉と恋仲になれる倫理観はお持ちではないかと。まあ、あんな告白した時点で、ほとんど…いえ、なんでもありません。」
「…」
「それで、ケイビス様にアリアナ様は出戻った実家で弟とその婚約者に冷遇されている、と伝えるわけです。」
「そんな…あなた達がそんなことする訳ないってご存知だわ。いいえ、もし万が一信じてしまわれたら、あなた達に不利益が…」
「ケイビス様はそれほど愚かな方ではありませんよ。それはアリアナ様が一番ご存じのはずです」
「でも…」
「必要なのは、アリアナ様に求婚できる大義名分です。例え嘘だと分かっていても、姉が家にいると婚約者の気が休まらない、姉に早く家を出て行って欲しい、などとユージン様が仰れば、ケイビス様は堂々と求婚できます。」
「そんなまさか…」
アリアナが冗談でしょう、と笑おうとした瞬間、部屋がノックされる。
「どうぞ」
恐る恐る答えると、なぜか左頬を抑えたユージンと、バツの悪そうなケイビスが現れた。
「あの…クレメントは先に帰らせております」
下を向いたまま、何故か開口一番クレメントの所在を告げたケイビスにアリアナは呆気に取られたまま返事をする。
「はい…あの、ケイビス様?」
「アリアナ様…あの…もしよろしければ、ハンゼ公爵家にいらっしゃいませんか」
決死の覚悟と言った様子でケイビスがアリアナに言った。
「それは…」
「ケイビス様、その言葉で済ませるおつもりではありませんよね」
アリアナが言葉に詰まるのと同時に、ユージンが恨みがましい様子でケイビスを見つめながら詰問した。
「え?」
ユージンの常にない強い口調にアリアナが驚いていると、ユージンが溜め息をつきながら言った。
「ケイビス様はよほど姉さんのことが心配みたいですね」
「…」
「僕はケイビス様を買い被りすぎたみたいです。姉さんもケイビス様は頭の切れる方だと言っていましたし…僕が姉さんのことを実家に居られるのは邪魔だ、と言ったら求婚の大義名分を与えられたと判断されるくらいには頭の良い方だと思っていました。」
炸裂するユージンの嫌味にケイビスはどんどん俯いていく。
「本当にすまない」
居た堪れなさそうに謝るケイビスを横目にユージンは不敵な笑みを浮かべて続けた。
「まさか、僕の言葉を本気にとった挙句、一発お見舞いされるとは思いませんでした。」
「…」
「なんでしたっけ?大切な姉君が傷ついているのに、労わってやることもできないのか。それなら私が彼女を連れて行く、でしたっけ」
「まあ!素敵ですねぇ」
ベスの言葉がとどめとなったようで、ケイビスはがっくりと頭を落とした。耐えるように下を向いている姿が妙に愛おしく思えて、アリアナはそっとケイビスに近づくと手を取った。
「連れて行ってくださるのですか?」
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