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8 結婚式の夜
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式を終えた私たちは新居の屋敷に入った。屋敷と家財道具一式はお父様とお母様が用意して下さった。
素敵な屋敷を与えてくれたお父様には悪いけれど、私は早速一つ手を加えることにした。
「ねえ、ヴァン」
「なんだ?」
「この部屋、暗いわね」
二人で家の中を見て回りながら一番奥にある小部屋に辿りついた。窓ひとつないその部屋は、おそらく物置か何かなのだろう。
「アレネ、これ物置だろ?部屋じゃない」
呆れたように笑うヴァンに私は小首を傾げてお願いする。
「あら、部屋じゃないなら外に鍵つけておいてくれない?」
「物置に?」
不思議そうに尋ねるヴァンに私は微笑んで答えた。
「お客様が来た時うっかり開けられたら恥ずかしいもの」
「ああ、そう言うことか。分かった。明日にでもつけておくよ」
「ありがとう」
「それより、この広い屋敷でメイドも執事も置かないなんて、大丈夫?」
ヴァンが尋ねてきた言葉に私は微笑んだ。
「あら、いないわけじゃないわよ。私が必要な時にはすぐに来てくれるわ」
「そうか…アレネが屋敷に人をおきたがらないとは思わなかったな。実家ではメイドとも執事とも仲が良さそうだったから」
「ふふ。あなたと私のためよ」
私が意味深に呟くとヴァンはどう勘違いしたのか、さっと顔を赤く染めた。
「あ、アレネ。新婚早々に悪いけれど今日は寝るのを別々にしてもらっていいかな?」
「あらなぜ?」
「前にちらりと言った悪夢、あるだろう?」
「ああ、女性の出てくる…」
「今日あたりなんとなく見そうなんだ。だから…」
「そう…分かったわ」
「すまない。新婚の君にこんなこと」
「いいえ、気にしないで。おやすみなさい」
「お休み」
ヴァンの部屋から物音がしなくなるのを確認して、そっと彼の部屋を訪れる。用心深く鍵までかけていたのには恐れ入る。よほどうわ言が怖いのか。
足音を忍ばせてベッドに近寄ると彼は規則正しい寝息を立てていた。
やはりそう都合よくはいかないか。戻ろうとしたその時、再び彼は呟いた。
「ほのか、ほら!跪けよ。謝罪が聞こえねーよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で血が沸騰するのが分かった。
反射的に寝ているヴァンの髪を思いっきり掴んで引っ張った。
「起きなさい、ヴァン!何を寝ているの!?」
一月。我慢の限界だった。あの日以来思い出しては幸樹へのヴァンへの憎悪を募らせてきたのだから。
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「ねえ、ヴァン」
「なんだ?」
「この部屋、暗いわね」
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「アレネ、これ物置だろ?部屋じゃない」
呆れたように笑うヴァンに私は小首を傾げてお願いする。
「あら、部屋じゃないなら外に鍵つけておいてくれない?」
「物置に?」
不思議そうに尋ねるヴァンに私は微笑んで答えた。
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「ああ、そう言うことか。分かった。明日にでもつけておくよ」
「ありがとう」
「それより、この広い屋敷でメイドも執事も置かないなんて、大丈夫?」
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「あら、いないわけじゃないわよ。私が必要な時にはすぐに来てくれるわ」
「そうか…アレネが屋敷に人をおきたがらないとは思わなかったな。実家ではメイドとも執事とも仲が良さそうだったから」
「ふふ。あなたと私のためよ」
私が意味深に呟くとヴァンはどう勘違いしたのか、さっと顔を赤く染めた。
「あ、アレネ。新婚早々に悪いけれど今日は寝るのを別々にしてもらっていいかな?」
「あらなぜ?」
「前にちらりと言った悪夢、あるだろう?」
「ああ、女性の出てくる…」
「今日あたりなんとなく見そうなんだ。だから…」
「そう…分かったわ」
「すまない。新婚の君にこんなこと」
「いいえ、気にしないで。おやすみなさい」
「お休み」
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足音を忍ばせてベッドに近寄ると彼は規則正しい寝息を立てていた。
やはりそう都合よくはいかないか。戻ろうとしたその時、再び彼は呟いた。
「ほのか、ほら!跪けよ。謝罪が聞こえねーよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で血が沸騰するのが分かった。
反射的に寝ているヴァンの髪を思いっきり掴んで引っ張った。
「起きなさい、ヴァン!何を寝ているの!?」
一月。我慢の限界だった。あの日以来思い出しては幸樹へのヴァンへの憎悪を募らせてきたのだから。
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