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本編【第一章】
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王宮の舞踏会が行われている広間のとびらに着いた時、私の心臓は早鐘をうっていた。
いつも一人で入場する際に周りからの嘲笑の視線を浴びることになる。それは地味なドレスに身を包もうが、美しいドレスを纏おうが変わらないだろう。
いつもよりはほんの少しだけ勇気を持って入れるかな。そう思いながら広間に入った。
ぱっと私に向けられる視線。いつもの通り嘲りと侮蔑の色が見えることが怖くて目を伏せそうになるのをかろうじて堪える。
すると、あたらこちらから溜め息混じりの密やかな賛辞が聞こえてきた。
「美しいお嬢様ですね」
「どちらのご令嬢だろう」
「パートナーがおられないようだが…よこに並ぶ自信がなかったのだろうか」
いつも全く違う周りの反応に思わず目を見開きそうになる。
ふと顔を向けた方向に、カレンとシュナイダーがいた。シュナイダーの目は私に釘付けになっており、その様子に気づいたカレンは睨みつけるように私を見ている。
知り合いのいない私は二人の元に向かった。
あの二人に聞けばフォーゼム様のいどころも知れると思ったからだ。
「あなたは…」
シュナイダーは私をカリーナだと気づく様子もなく話しかける言葉を探している。
私は微笑んで答えた。
「先日は屋敷で失礼いたしました。カリーナでございます。フォーゼム様より先日の非礼のお詫びとしてドレスをいただきましたので、一言ご挨拶させていただきたいのですが、どちらにいらっしゃるかご存知でしょうか」
私が誰なのか分かった途端、シュナイダーはギョッとしたように尋ねてきた。
「カリーナ嬢?あなたがか。しかし、いつもと全く様子が違う…とても美しい」
私は呆れて溜め息を吐きそうになった。仮にも婚約者が真横にいながらその姉を平気で褒めるとは…
「ありがとうございます。ですが、婚約者が横にいる時に他の女性を褒めるのはあまりよろしくないかと。どうぞ女性を褒める言葉はカレンに向けてください」
カレンは私のことを睨みつけたまま、尋ねてきた。
「姉様、そんな格好。どう言う風の吹き回しなの?」
「先ほど言った通り、フォーゼム様からシュナイダー様の非礼のお詫びとして頂いたの。フォーゼム様がどちらにいらっしゃるか知ってる?」
「知らないわよ、そんかの。だいたいシュナイダー様の非礼ってなによ。この間の屋敷の件なら、迷惑かけたのは姉様の方でしょう!」
鋭い声で私を糾弾する声に私は肩をびくっと震わせた。周りが不思議そうにこちらを見ている。だめだ、また私が、私だけが勝手に悪者にされる。
そう思った瞬間、若い男性の声が響いた。
いつも一人で入場する際に周りからの嘲笑の視線を浴びることになる。それは地味なドレスに身を包もうが、美しいドレスを纏おうが変わらないだろう。
いつもよりはほんの少しだけ勇気を持って入れるかな。そう思いながら広間に入った。
ぱっと私に向けられる視線。いつもの通り嘲りと侮蔑の色が見えることが怖くて目を伏せそうになるのをかろうじて堪える。
すると、あたらこちらから溜め息混じりの密やかな賛辞が聞こえてきた。
「美しいお嬢様ですね」
「どちらのご令嬢だろう」
「パートナーがおられないようだが…よこに並ぶ自信がなかったのだろうか」
いつも全く違う周りの反応に思わず目を見開きそうになる。
ふと顔を向けた方向に、カレンとシュナイダーがいた。シュナイダーの目は私に釘付けになっており、その様子に気づいたカレンは睨みつけるように私を見ている。
知り合いのいない私は二人の元に向かった。
あの二人に聞けばフォーゼム様のいどころも知れると思ったからだ。
「あなたは…」
シュナイダーは私をカリーナだと気づく様子もなく話しかける言葉を探している。
私は微笑んで答えた。
「先日は屋敷で失礼いたしました。カリーナでございます。フォーゼム様より先日の非礼のお詫びとしてドレスをいただきましたので、一言ご挨拶させていただきたいのですが、どちらにいらっしゃるかご存知でしょうか」
私が誰なのか分かった途端、シュナイダーはギョッとしたように尋ねてきた。
「カリーナ嬢?あなたがか。しかし、いつもと全く様子が違う…とても美しい」
私は呆れて溜め息を吐きそうになった。仮にも婚約者が真横にいながらその姉を平気で褒めるとは…
「ありがとうございます。ですが、婚約者が横にいる時に他の女性を褒めるのはあまりよろしくないかと。どうぞ女性を褒める言葉はカレンに向けてください」
カレンは私のことを睨みつけたまま、尋ねてきた。
「姉様、そんな格好。どう言う風の吹き回しなの?」
「先ほど言った通り、フォーゼム様からシュナイダー様の非礼のお詫びとして頂いたの。フォーゼム様がどちらにいらっしゃるか知ってる?」
「知らないわよ、そんかの。だいたいシュナイダー様の非礼ってなによ。この間の屋敷の件なら、迷惑かけたのは姉様の方でしょう!」
鋭い声で私を糾弾する声に私は肩をびくっと震わせた。周りが不思議そうにこちらを見ている。だめだ、また私が、私だけが勝手に悪者にされる。
そう思った瞬間、若い男性の声が響いた。
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