【完結】悪女のなみだ

じじ

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本編【第一章】

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「どうかしましたか、カレン嬢。」

その声にカレンははっとしたように黙った。

「兄上…」

呟くシュナイダーの声を聞いて、声の主がフォーゼム様と分かった私はゆっくり振り返った。
そこに立っていたのはスラリとした美丈夫だった。シュナイダー様も美しい顔立ちをしているが、どこか軽薄そうな雰囲気がある。しかし、フォーゼム様は美しい顔立ちでありながらそのような気配を微塵も感じさせない。

「ああ。あなたでしたか、カリーナ嬢。先日は愚弟があなたに無理やり言い寄ったとか…本当に愚かなやつで申し訳ない。」

驚いて目を瞠る私の横で、カレンがシュナイダーを問い詰めている声が聞こえる。周りはその様子を面白そうに遠巻きに眺めている。私が居た堪れなくなり、俯くとフォーゼム様は私の手を取って一言告げた。

「少しお話よろしいですか」
「はい」

この場を早く離れたかった私はフォーゼム様の手に引かれるまま着いて行った。
バルコニーで二人きりになると、フォーゼム様は私の手を離し謝罪した。

「弟のみならず私まで…あのような場所でお身内に恥をかかせてしまい申し訳ない」

先ほどのカレンのことを言っているのだろう。私は苦笑して答えた。

「いいえ。あそこで助け船を出していただけなかったら、また周りから誤解をされていましたし…まあ、今更誤解の一つや二つ関係ないと言えば関係ないのですが」
「あなたが妹の婚約者をたぶらかした、と。それはやめておいた方がいい。誤解されるにしてもあいつが相手などあなたに失礼だ。」

弟へのきつい一言に思わず私は笑ってしまった。

「シュナイダー様は女性達の間で大層人気があると伺いましたが」
「見る目がないのだろう。まあ、あなたの妹君にはちょうど良いかもしれないが。あなたが相手などあいつにはもったいない。」

カレンと私とを比べて、カレンを悪く言う人物などアン以外に知らなかった私は驚いて尋ねた。

「あの。妹が何かフォーゼム様に失礼をしたのでしょうか」

不安げな私の様子を見てとって、フォーゼム様は慌てたように答えた。

「ああ失礼。あなたの妹を悪く言うつもりは…」

私がじっと見つめると観念したようにフォーゼム様は息を吐き、話し出した。

「大したことではないのだが、弟の婚約が決まった後にカレン嬢を王宮でたまたま見かけてな。声をかけようとしたら、クゼン男爵家の長男と逢引きしている現場だったようだ。カレン嬢は私に気づかなかったし、私も取り立てて誰かに告げるつもりもなかったのだが。」

私は思わず額に手を当てた。

「それは本当に申し訳ございません。こちらは婚約破棄されても仕方のない身でありながら…」
「ああ、いや。シュナイダーもその点は似たりよったりだからな。それにあなたが謝ることではない」

そう言い置いてから、私を静かに見つめた

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