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サイドストーリー
シュナイダーの驚愕
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ダルラ伯爵の屋敷でカリーナに声をかけて逃げられた時、私は不思議に思った。なぜ私におもねってこない?私の容姿で女性から断られたことなどまずない。
あの格好にあの態度、まさか本当は容姿と異なり清純な乙女なのか?いや、私が声をかけた時、潤んだ瞳で私に微笑みかける様は妖艶そのものだった。
となると、私のことが気に入らなかったのか?まさかな。なんとなく腑に落ちないまま兄上の元に向かう。
今日もカレンがいかに美しくいじらしい乙女であったかを兄上に自慢する。ついでにカリーナに誘惑されたことも伝えておく。彼女の存在はカレンがいかに素晴らしい女性であるか際立たせるのに役立つ。
案の定、兄上はカレンの話を不快そうに聞き、カリーナの話に関しては苛立ちすら覚えているようだった。
私とカレンが仲睦まじいのが悔しいのだろう。カリーナについては、兄がもっとも嫌うタイプの女性だから話を聞くことすら嫌なのかもしれない。
捨て台詞と共に部屋を追い出され、私は満足していた。この感情が屈折したものであることは百も承知だが、最後まで兄上が大人しく聞いてくれていたならここまで気持ちは満たされなかったはずだ。
王宮舞踏会当日、兄上は珍しくそわそわしているようだった。いつも興味なさそうな兄にしては珍しい。カレンの様子でも気になるのか?私はわざとらしく兄上に声をかけていった。
「先に舞踏会へ向かいます。カレンを屋敷に迎えに行かなければなりませんので」
兄上はちらっと私を見ると、興味なさげに頷いた。
「ああ。カレン嬢によろしく伝えてくれ」
その澄ました様が気に食わない。もっと悔しそうにすればいいものを。
ダルラ伯爵家で出迎えてくれたカレン嬢は美しかった。ピンクのドレスを纏った彼女は春の妖精のようだ。今日一日、数多の男達の視線を浴びるであろう彼女の隣を独占できるのが自分だと思うと誇らしい気持ちになる。
彼女と共に舞踏会場に入ると案の定、多くの男達の視線は彼女に釘付けだった。カレンの愛らしさや清純さに惹かれない男などいるはずがない。兄上も先に着いていたようで、ちらっと視線があったが近づいて来ない。おおよそ悔しくて近寄れないのだろう。いい気味だ。
しばらく見知った者と話していると会場がざわつき始めた。
何があったのだろう。不思議に思い、入り口を見るととても美しい女性が凛とした様子で広間に入ってくるのが見えた。女性一人の入場は恥とされる中で、彼女は顔をあげて堂々と入ってきた姿に気圧される。まるで女王かさもなくば女神のようだ。圧倒的な美。カレンよりも美しい。目が離せない。
驚いたことに彼女はこちらに近づいてきた。このような女性、知り合いにいただろうか。いや、もしいれば忘れるはずがない。まさか、今の一瞬で私に一目惚れしたのか。それならカレンを兄上に譲っても惜しくない。
目の前にやってきた彼女に惚けて言葉が出ない。
「あなたは…」
「カリーナでございます。フォーゼム様より先日の非礼のお詫びとしてドレスをいただきましたので、一言ご挨拶させていただきたいのですが、どちらにいらっしゃるかご存知でしょうか」
信じられなかった。いつものあの似合わない地味な格好はなんだったんだ。これほどまでに高貴な美しさをよくも隠し通せたものだ。
隣では私同様カリーナの変化を信じられないカレンがカリーナに噛みついている。
いつもは鈴を転がすように愛らしいと思っていたカレンの声も、今はキンキンとうるさく聞こえる。
「どうかしましたか、カレン嬢」
その声は兄上だった。
思わず兄上の顔を見ると、カレンに問いかけたはずなのに、視線の先にはカリーナがいた。
優しく蕩けるような、しかし激しく恋焦がれるような瞳でカリーナを見つめているのを見て、私はようやく自分の誤りに気づいた。
兄はずっとカリーナに焦がれていたのだ。
あの格好にあの態度、まさか本当は容姿と異なり清純な乙女なのか?いや、私が声をかけた時、潤んだ瞳で私に微笑みかける様は妖艶そのものだった。
となると、私のことが気に入らなかったのか?まさかな。なんとなく腑に落ちないまま兄上の元に向かう。
今日もカレンがいかに美しくいじらしい乙女であったかを兄上に自慢する。ついでにカリーナに誘惑されたことも伝えておく。彼女の存在はカレンがいかに素晴らしい女性であるか際立たせるのに役立つ。
案の定、兄上はカレンの話を不快そうに聞き、カリーナの話に関しては苛立ちすら覚えているようだった。
私とカレンが仲睦まじいのが悔しいのだろう。カリーナについては、兄がもっとも嫌うタイプの女性だから話を聞くことすら嫌なのかもしれない。
捨て台詞と共に部屋を追い出され、私は満足していた。この感情が屈折したものであることは百も承知だが、最後まで兄上が大人しく聞いてくれていたならここまで気持ちは満たされなかったはずだ。
王宮舞踏会当日、兄上は珍しくそわそわしているようだった。いつも興味なさそうな兄にしては珍しい。カレンの様子でも気になるのか?私はわざとらしく兄上に声をかけていった。
「先に舞踏会へ向かいます。カレンを屋敷に迎えに行かなければなりませんので」
兄上はちらっと私を見ると、興味なさげに頷いた。
「ああ。カレン嬢によろしく伝えてくれ」
その澄ました様が気に食わない。もっと悔しそうにすればいいものを。
ダルラ伯爵家で出迎えてくれたカレン嬢は美しかった。ピンクのドレスを纏った彼女は春の妖精のようだ。今日一日、数多の男達の視線を浴びるであろう彼女の隣を独占できるのが自分だと思うと誇らしい気持ちになる。
彼女と共に舞踏会場に入ると案の定、多くの男達の視線は彼女に釘付けだった。カレンの愛らしさや清純さに惹かれない男などいるはずがない。兄上も先に着いていたようで、ちらっと視線があったが近づいて来ない。おおよそ悔しくて近寄れないのだろう。いい気味だ。
しばらく見知った者と話していると会場がざわつき始めた。
何があったのだろう。不思議に思い、入り口を見るととても美しい女性が凛とした様子で広間に入ってくるのが見えた。女性一人の入場は恥とされる中で、彼女は顔をあげて堂々と入ってきた姿に気圧される。まるで女王かさもなくば女神のようだ。圧倒的な美。カレンよりも美しい。目が離せない。
驚いたことに彼女はこちらに近づいてきた。このような女性、知り合いにいただろうか。いや、もしいれば忘れるはずがない。まさか、今の一瞬で私に一目惚れしたのか。それならカレンを兄上に譲っても惜しくない。
目の前にやってきた彼女に惚けて言葉が出ない。
「あなたは…」
「カリーナでございます。フォーゼム様より先日の非礼のお詫びとしてドレスをいただきましたので、一言ご挨拶させていただきたいのですが、どちらにいらっしゃるかご存知でしょうか」
信じられなかった。いつものあの似合わない地味な格好はなんだったんだ。これほどまでに高貴な美しさをよくも隠し通せたものだ。
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いつもは鈴を転がすように愛らしいと思っていたカレンの声も、今はキンキンとうるさく聞こえる。
「どうかしましたか、カレン嬢」
その声は兄上だった。
思わず兄上の顔を見ると、カレンに問いかけたはずなのに、視線の先にはカリーナがいた。
優しく蕩けるような、しかし激しく恋焦がれるような瞳でカリーナを見つめているのを見て、私はようやく自分の誤りに気づいた。
兄はずっとカリーナに焦がれていたのだ。
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