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本編【第二章】
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「え」
思わず声が出てしまったが、想像もしなかった言葉に驚きすぎて続く言葉が出てこない。
ずっと私に焦がれていたってどういうこと?私とフォーゼム様に接点などなかったはず…。私がぐるぐると思いを巡らせていると、彼は真剣なまなざしで私の方を向いて話し出した。
彼によると、私を初めて知ったのは王宮の庭園でカレンが友人を仲間はずれにする話を私にしていた時らしい。今まで忘れていたが、確かにそんなこともあった。止めたにもかかわらず結局カレンはティルデ子爵家のヘンネ様を仲間はずれにするだけでは飽き足らず紅茶をかけようとしたのだ。
思い出すのも嫌なその場面を、フォーゼム様に見られていたと思うと恥ずかしくていたたまれない。しかしフォーゼム様はさらりと流すとそのまま続けた。
「次に出会ったのはそれから数年後の年始の仮面舞踏会だ。」
仮面舞踏会と聞いて私は思わず顔をしかめてしまう。顔を隠すのだからいつもよりましかと言われれば全くそんなことはなかった。地味なドレスに飾りのないグラスをしているにもかかわらず、どこからか男性が寄ってきてはやたらとしつこく誘われることが多かった。おそらく悪名高い私だと気付かず、おとなしい女性だと思って声をかけてきているのだろうけれど、いずれにしても迷惑な話だ。
「一人でふらついていた私を近くの空き部屋にいざなって、水を用意してくれたのだが覚えているだろうか」
そういわれて私は驚いた。
「まさか、あの時の!」
「ああ、不躾にもあなたの名前を聞いた酔っ払いだ」
「まあ…」
あまりのことに絶句していると、苦笑いとともに彼はつづけた。
「助けてくれた時点で、あなたではないかと思っていたんだ」
地味な仮面のせいで、という言葉に脱力しそうになる。しかもその仮面が悪目立ちしていたというのだから救いようがない。目立たないようにしていたつもりなのに…と今さながらいたたまれない。
しかし、彼はそんな私の様子を気にする素振りもなく真剣な声で告げてくれた。
「本当にあなたに焦がれていたんだ」
再度告げられたその言葉に、思わず顔を上げると痛いほどの強さで私を見つめてくるフォーゼム様の視線と目があった。
心が震える。疎まれ蔑まれるばかりだった私をこれほどまでに思ってくださる方に出会えるとは…私は瞳が潤むのを抑えきれなかった。
思わず声が出てしまったが、想像もしなかった言葉に驚きすぎて続く言葉が出てこない。
ずっと私に焦がれていたってどういうこと?私とフォーゼム様に接点などなかったはず…。私がぐるぐると思いを巡らせていると、彼は真剣なまなざしで私の方を向いて話し出した。
彼によると、私を初めて知ったのは王宮の庭園でカレンが友人を仲間はずれにする話を私にしていた時らしい。今まで忘れていたが、確かにそんなこともあった。止めたにもかかわらず結局カレンはティルデ子爵家のヘンネ様を仲間はずれにするだけでは飽き足らず紅茶をかけようとしたのだ。
思い出すのも嫌なその場面を、フォーゼム様に見られていたと思うと恥ずかしくていたたまれない。しかしフォーゼム様はさらりと流すとそのまま続けた。
「次に出会ったのはそれから数年後の年始の仮面舞踏会だ。」
仮面舞踏会と聞いて私は思わず顔をしかめてしまう。顔を隠すのだからいつもよりましかと言われれば全くそんなことはなかった。地味なドレスに飾りのないグラスをしているにもかかわらず、どこからか男性が寄ってきてはやたらとしつこく誘われることが多かった。おそらく悪名高い私だと気付かず、おとなしい女性だと思って声をかけてきているのだろうけれど、いずれにしても迷惑な話だ。
「一人でふらついていた私を近くの空き部屋にいざなって、水を用意してくれたのだが覚えているだろうか」
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「まあ…」
あまりのことに絶句していると、苦笑いとともに彼はつづけた。
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地味な仮面のせいで、という言葉に脱力しそうになる。しかもその仮面が悪目立ちしていたというのだから救いようがない。目立たないようにしていたつもりなのに…と今さながらいたたまれない。
しかし、彼はそんな私の様子を気にする素振りもなく真剣な声で告げてくれた。
「本当にあなたに焦がれていたんだ」
再度告げられたその言葉に、思わず顔を上げると痛いほどの強さで私を見つめてくるフォーゼム様の視線と目があった。
心が震える。疎まれ蔑まれるばかりだった私をこれほどまでに思ってくださる方に出会えるとは…私は瞳が潤むのを抑えきれなかった。
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