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本編【第二章】
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まさか、フォーゼム様の馬車に乗って帰路に就くなど想像もしなかった私は混乱していた。いや、馬車に乗るどころの話ではない。今日は全く思いもしなかったことばかりだ。何から驚いていいものやら分からない。そしてふと疑問に思った。彼はなぜ私を信じてくれたのだろう。
自分でいうのも悲しいが、私はどうしても人を不快にしたり、誤解を与えたりする容姿のように思える。両親もカレンも私の容姿を嫌っているし、周囲の人間にも男性にはふしだらな女として、女性には男をたぶらかす女として見られている。
いくら弟の性格とカレンの本性を知っていたとしても、それがすぐに私への信頼につながるとは思えない。ましてや初対面にもかかわらずプロポーズまでされたのだ。不思議に思わないわけがない。
どのように尋ねたものか様子を窺っていると、彼は私がなにか聞きたそうにしているのに気付いたようで、甘いほほえみとともに口火を切ってくれた。
「先ほどは大勢の前で、突然プロポーズしてしまい申し訳なかった。あなたを驚かせてしまったことも」
私は話し出すきっかけを与えてもらったことに感謝しながら、聞きたかったことを尋ねた。
「初対面の私にプロポーズしてくださったのはどうしてでしょうか」
心臓が飛び出そうだ。不安と緊張で押しつぶれされそうになる。
どうか、同情からじゃありませんように…祈るような気持ちで彼が話し出すのを待つが、いつまでたっても返事が返ってこない。ちらっと顔を見ると彼は困ったように言葉を探しているようだった。
途端に私は自分の愚かさに笑ってしまいそうになる。
彼は聖女や天使と言われている妹から、大勢の前で一方的に糾弾されている私を見かねて助けてくれただけなのだろう。私が噂通りの人間でないとは分かっていたようだけれど、だからと言ってどうして私に結婚するほどの好意を抱いているなどと勘違いしたのだろう。
私が言うべき言葉は、助けてくれたお礼と、プロポーズは本気でないことを承知しているということだったのに…うっかり本気にしてしまったせいで彼を困らせてしまった。
私から言わないと助けてくれた彼にさらに負担をかけることになる。
「あの、私をかばうためだけにあのようにプロポーズしてくだっさたのであれば、もう十分でございます…婚約は破棄していただいてもかまいません。今日はとても素敵な夢を見させていただけたのですから。」
涙が出そうになるのをなんとかこらえながら一息に言い切る。彼はきっとほっとした様子で頷くのだろう。そう思った瞬間、彼が言った。
「ずっとあなたに焦がれていたんだ」
自分でいうのも悲しいが、私はどうしても人を不快にしたり、誤解を与えたりする容姿のように思える。両親もカレンも私の容姿を嫌っているし、周囲の人間にも男性にはふしだらな女として、女性には男をたぶらかす女として見られている。
いくら弟の性格とカレンの本性を知っていたとしても、それがすぐに私への信頼につながるとは思えない。ましてや初対面にもかかわらずプロポーズまでされたのだ。不思議に思わないわけがない。
どのように尋ねたものか様子を窺っていると、彼は私がなにか聞きたそうにしているのに気付いたようで、甘いほほえみとともに口火を切ってくれた。
「先ほどは大勢の前で、突然プロポーズしてしまい申し訳なかった。あなたを驚かせてしまったことも」
私は話し出すきっかけを与えてもらったことに感謝しながら、聞きたかったことを尋ねた。
「初対面の私にプロポーズしてくださったのはどうしてでしょうか」
心臓が飛び出そうだ。不安と緊張で押しつぶれされそうになる。
どうか、同情からじゃありませんように…祈るような気持ちで彼が話し出すのを待つが、いつまでたっても返事が返ってこない。ちらっと顔を見ると彼は困ったように言葉を探しているようだった。
途端に私は自分の愚かさに笑ってしまいそうになる。
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私が言うべき言葉は、助けてくれたお礼と、プロポーズは本気でないことを承知しているということだったのに…うっかり本気にしてしまったせいで彼を困らせてしまった。
私から言わないと助けてくれた彼にさらに負担をかけることになる。
「あの、私をかばうためだけにあのようにプロポーズしてくだっさたのであれば、もう十分でございます…婚約は破棄していただいてもかまいません。今日はとても素敵な夢を見させていただけたのですから。」
涙が出そうになるのをなんとかこらえながら一息に言い切る。彼はきっとほっとした様子で頷くのだろう。そう思った瞬間、彼が言った。
「ずっとあなたに焦がれていたんだ」
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