49 / 91
本編【第二章】
2-22
しおりを挟む
私がカレンの様子をよほど複雑な表情で見ていたからなのだろう。そっと私の背中に手を当ててフォーゼム様が呟いた。
「カレン嬢もあなたにずっと心のうちを知って欲しかったんだろう。だが、だからと言って、いまの言葉であなたが気に病む必要はない。」
「はい。ですが…」
もう少し私がカレンに寄り添っていれば、お互いを助けあえ、信頼しあえる姉妹になれたかもしれないのに、と言う気持ちを抱いてしまうのも本当だ。
「そんな顔するな。心の中であなたを好いていたとしてもそれを伝えずにあなたを貶めることばかりしていたのだろう?あなたが妹君を愛せなくても…興味を持てなくても仕方ない」
「私は冷たいのかもしれません。」
「傷つけられた方が悪いのか?」
「え?」
「あなたが気に病むと言うのはそう言うことだ。だが、あなたも分かってるだろう。傷つける方が悪いのだと。だからあまり気にするな。」
「はい…」
それでも、まだしょんぼりと俯いていた私はいきなりふわりと抱き上げられて驚いた。
「フォ、フォーゼム様?」
「今のあなたをそのまま歩かせたら壁にぶつかりかねないからな。悪いが部屋までこのままだ。」
後ろからアンの揶揄うような視線をひしひしと感じる。
カレン様もご覧になれればよかったですのに、と恐ろしい独り言も聞こえてきて私は震えた。婚約破棄目前の妹に見せるのは流石に人でなしとしか思えない。
自室に戻り、アンに手伝ってもらいながら荷物を詰める。その間フォーゼム様は椅子に腰掛けながらゆったりとお茶を飲んでいた。思案するようなその表情に一抹の不安を覚える。
「フォーゼム様、やはり今日からお世話になるのはご迷惑ではないでしょうか」
恐る恐る尋ねるときょとんとした顔でこちらを見つめたあと破顔した。
「それは問題ない。私が考えごとをしていたから不安にさせてしまったか」
甘い微笑みとともに優しい言葉をかけられて頬が朱に染まるのが分かる。
「いえ、あの…」
「大丈夫だ。心配するな」
そして、思い出したように続けた。
「アン殿も今日からカリーナとともに我が屋敷に来てくれるか。この屋敷でカリーナに仕える立場はカリーナと同じくらいあなたも大変だったはずだ。それにカリーナもあなたがいれば多少はリラックスして過ごせるだろう。」
気遣いに満ちたフォーゼム様の言葉に一瞬驚いたような表情をしたアンは、しかしゆるゆると首を振った。
「お気遣いありがとうございます。フォーゼム様。ですが私はしばらくこの屋敷に残らせて頂きたいと思います」
「カレン嬢もあなたにずっと心のうちを知って欲しかったんだろう。だが、だからと言って、いまの言葉であなたが気に病む必要はない。」
「はい。ですが…」
もう少し私がカレンに寄り添っていれば、お互いを助けあえ、信頼しあえる姉妹になれたかもしれないのに、と言う気持ちを抱いてしまうのも本当だ。
「そんな顔するな。心の中であなたを好いていたとしてもそれを伝えずにあなたを貶めることばかりしていたのだろう?あなたが妹君を愛せなくても…興味を持てなくても仕方ない」
「私は冷たいのかもしれません。」
「傷つけられた方が悪いのか?」
「え?」
「あなたが気に病むと言うのはそう言うことだ。だが、あなたも分かってるだろう。傷つける方が悪いのだと。だからあまり気にするな。」
「はい…」
それでも、まだしょんぼりと俯いていた私はいきなりふわりと抱き上げられて驚いた。
「フォ、フォーゼム様?」
「今のあなたをそのまま歩かせたら壁にぶつかりかねないからな。悪いが部屋までこのままだ。」
後ろからアンの揶揄うような視線をひしひしと感じる。
カレン様もご覧になれればよかったですのに、と恐ろしい独り言も聞こえてきて私は震えた。婚約破棄目前の妹に見せるのは流石に人でなしとしか思えない。
自室に戻り、アンに手伝ってもらいながら荷物を詰める。その間フォーゼム様は椅子に腰掛けながらゆったりとお茶を飲んでいた。思案するようなその表情に一抹の不安を覚える。
「フォーゼム様、やはり今日からお世話になるのはご迷惑ではないでしょうか」
恐る恐る尋ねるときょとんとした顔でこちらを見つめたあと破顔した。
「それは問題ない。私が考えごとをしていたから不安にさせてしまったか」
甘い微笑みとともに優しい言葉をかけられて頬が朱に染まるのが分かる。
「いえ、あの…」
「大丈夫だ。心配するな」
そして、思い出したように続けた。
「アン殿も今日からカリーナとともに我が屋敷に来てくれるか。この屋敷でカリーナに仕える立場はカリーナと同じくらいあなたも大変だったはずだ。それにカリーナもあなたがいれば多少はリラックスして過ごせるだろう。」
気遣いに満ちたフォーゼム様の言葉に一瞬驚いたような表情をしたアンは、しかしゆるゆると首を振った。
「お気遣いありがとうございます。フォーゼム様。ですが私はしばらくこの屋敷に残らせて頂きたいと思います」
30
あなたにおすすめの小説
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!
みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。
彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。
ループから始まった二周目。
彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。
「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」
「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」
淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。
未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。
これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。
「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」
(※カクヨムにも掲載中です。)
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね
との
恋愛
レトビア公爵家に養子に出されることになった貧乏伯爵家のセアラ。
「セアラを人身御供にするって事? おじ様、とうとう頭がおかしくなったの?」
「超現実主義者のお父様には関係ないのよ」
悲壮感いっぱいで辿り着いた公爵家の酷さに手も足も出なくて悩んでいたセアラに声をかけてきた人はもっと壮大な悩みを抱えていました。
(それって、一個人の問題どころか⋯⋯)
「これからは淑女らしく」ってお兄様と約束してたセアラは無事役割を全うできるの!?
「お兄様、わたくし計画変更しますわ。兎に角長生きできるよう経験を活かして闘いあるのみです!」
呪いなんて言いつつ全然怖くない貧乏セアラの健闘?成り上がり?
頑張ります。
「問題は⋯⋯お兄様は意外なところでポンコツになるからそこが一番の心配ですの」
ーーーーーー
タイトルちょっぴり変更しました(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
さらに⋯⋯長編に変更しました。ストックが溜まりすぎたので、少しスピードアップして公開する予定です。
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
体調不良で公開ストップしておりましたが、完結まで予約致しました。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ
ご一読いただければ嬉しいです。
R15は念の為・・
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる